お嬢様『の』ゲームセンター

 ケイカ・ゲームズが運営する『トライアド・アミューズメント』帝都学習館学園前店。

 この店はフランチャイズ経営という形にしているが、私の口座から運営資金を出している私のゲームセンターである。

 駅前の旧型スーパー店舗を居抜きして作られたこのお店は、ゲーセン・カラオケ・ネットカフェがミックスされた学生の遊び場であり、今日はみんなで遊びに来たのである。


「いらっしゃいませ。

 ようこそ。『トライアド・アミューズメント』帝都学習館学園前店へ」


「私もゲームセンターには行くけど、入り口でメイドが頭を下げるゲームセンターってのは初めてだわ」


 明日香ちゃんの感想に私は苦笑する。

 ゲームセンターってのは不良の遊び場ってイメージが一時期ついて、PTAとかがうるさかったというのもある。

 で、そういうので迷惑をかけたくないのでこちらで全部作ってというのがこのゲームセンターというかアミューズメント施設の理由だったりする。


「まったくよね。

 ちなみにあれ、武装メイド」


「うわぁ……そこまでする?」


 明日香ちゃんの呆れ声に私も頷くしかない。

 面白い所には悪い輩もよってくる訳で、そういう連中対策として訓練も兼ねてこちら側の武装メイドを置いていたりする。

 その為、ここの運営費は私の口座から出ているが、その名目は『警備費』だったり。


「ここのゲーセンは基本ケーカで遊べるようにしているんだけど、あれ、履歴が分かるのよ。

 で、監視カメラつきでしょ?

 不良がカツアゲして使ったカードで容赦なく追い詰めるって訳」


「えげつなー」


 このあたりは警察だと介入できないが、『私のゲーセンで悪さしてんじゃねえ!』と探偵に調べさせて警備会社経由で詰めさせる。

 普通の不良ならここでおしまいだが、カラーギャングとかヤのつく自由業のひも付きだと警察とつるんで容赦なく消しにかかっていた。


「え?

 彼らに情けをかける必要あるんですか?

 叩けばほこりが出るのに?」


とは、この件の陣頭指揮をしているエヴァのお言葉。

 この『作戦』はジオフロント以降さらに強化されている。

 やっぱり何かあったのだろうと察するが、それを聞いても『何もありませんでした』と返って来るのが分かっているので聞くつもりもない。


 一階フロアはクレーンゲーム等が並んでいた。

 ワイワイ言いながら栗森志津香さんと高橋鑑子さんがぬいぐるみをとろうと奔走している。

 しばらくは自由に遊んで、それからみんなでカラオケと言うのが今日の予定である。


「……?……??……???」


 あ。また蛍ちゃんがメダルゲームに負けて首をひねっている。

 なお、この店で遊べるようになっているケーカのポイントだが、定期的な町内美化運動に参加する事でもらえるようになっている。


「あ!

 こちらのネットカフェ、ゲーム機を借りれるんですか!?」


「ええ。このネットカフェの利用は身分証付きケーカで利用できるんですよ。

 セーブデータ保管サービスも別料金ですがあるんですよ」


 待宵早苗さんがネットカフェの利用規約を見ながら嬉しそうな声をあげて華月詩織さんが説明する。

 家が厳格な所だと、ゲーム禁止ってのがよくある訳で、そういう人たちは学校内の話題に取り残されるからこういう所でゲームをやったりするのだ。

 私たちもまだまだお子様な訳で、ゲームを遊びたいお年頃である。


「……だから、占いの結果としては……」


 オープンスペースで、神奈水樹が誰かに占いの結果を語っている。

 こういう所での営業はNGなのだが、そこは神奈という訳でしっかり私に申請して来たから私もOKした訳で。

 ああやって占い師していると占い師している風に見えるから不思議だ。


「で、今日もお嬢様はこちらに行くのですか?」


 カードゲーム用スペースやミニ四駆レース場なんかもあるフロアを通り抜けつつ、橘由香の声に片手を振りながら私は目的地にやってくる。

 これぞ、私の店だからこその、私の趣味であるレトロゲームコーナーである。

 当然、年齢層は高く、誰かが置いて行ったノートはプロが書いたんじゃねという落書きでいっぱいである。


「お嬢様。

 このゲームかなり古いようなのですが……」


「そうよ。探すの苦労したんだから……キャー!!!」


 全方位シューティングで、しかも編隊とか大型機が地味に邪魔。

 縦シューティングや横シューティングでない全方位なのが、とりあえず数回のコンティニューと共に最終面に。


「……2001年?

 UFO???」


「まぁ、80年代のゲームだしねぇ……キャー!!」


 まぁ、この面をクリアすると一面にループしたので、ここでクリアとして次の台に。

 今日のゲームのメインである。


「忍者が敵を倒すゲームですか?」

「これ音楽がいいのよねー……きゃー!!!」


 なお、ガチで長いこのゲーム、気づけばみんな集まっていた。


「三角飛びです!三角飛び!!」

「骸骨気持ち悪い……」

「恐竜かわいいですわね」

「何故刀が水中でしか使えないのか……」

(ぐっ!)

「たしかに耳に残りますわね。この音楽」

「はやくよじ登って!こうもりが来てる!!」


 なお、ラスボスは弱かった。

 その後のカラオケも盛り上がった。




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お嬢様がやっていたゲーム


『タイムパイロット』 1983年 コナミ

『忍者くん 阿修羅ノ章』1987年 UPL

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