デザイナーメモ 中等部のクラス分けとそれに伴う日常
カルテットメンバーはひとまとめ
2-A
グラーシャ・マルシェヴァ
劉鈴音
2-B
橘由香
待宵早苗
遠淵結菜
ユーリヤ・モロトヴァ
2-C
華月詩織
栗森志津香
野月美咲
秋辺莉子
2-D
桂華院瑠奈
帝亜栄一
泉川裕次郎
後藤光也
開法院蛍
イリーナ・ベロソヴァ
2-E
朝霧薫
春日乃明日香
高橋鑑子
久春内七海
2-F
神奈水樹
留高美羽
「授業出たくない……」
「替わりなさいよ。私が出るから」
昼休み。ぐったりと桂華院家専用トイレの休憩室で愚痴るイリーナ・ベロソヴァにオコ顔の久春内七海が突っ込む。
さすがに側近団に囲まれたらという訳で、クラス分けについては最低限の要望としてお嬢様つきを一人つけてくれという事にしたが、見事に裏目に出てさぼり癖のあるイリーナが当たるという笑えない事態に。
その隣ではグラーシャ・マルシェヴァが劉鈴音に勉強を教えてもらっていた。
授業が大好きとはいえ基礎ができていないので授業についてゆくのがやっとで、赤点を取ったら仕事にならないと勉強を頑張っている汚れ仕事兼濡れ仕事要員である。
「大丈夫じゃないですか?
開法院さんがいらっしゃるし」
「それを当てにするのはちょっと……」
昼食のお弁当を口にする野月美咲に橘由香が突っ込む。
彼女たちとて学食は利用できるのだが、持ち込みの弁当を食べているのは、何かあった時にすばやく動くためである。
今頃桂華院瑠奈の昼食には、栗森志津香と華月詩織の他に留高美羽と秋辺莉子がついているはずである。
「それよりも、七海のクラスやばくない?」
「やばくても何とかするの」
ユーリヤ・モロトヴァの指摘に久春内七海がげんなりして返事をする。
春日乃明日香と朝霧薫が一緒になったのだ。
政治家系の娘として抜群の嗅覚を持つ春日乃明日香と華族系で侯爵令嬢の朝霧薫は同じ桂華院瑠奈の友達ではあるが、同時にクイーンビーでもある訳で、早くもクラスはそれとなく鞘当てが発生していた。
この争いにさらりと我関せずと中立を宣言した高橋鑑子もいい性格ではあるのだが、お嬢様の友人なので下手にお願いする事もできず、この側近団だけでなくクラスの中間管理職みたいに久春内七海の苦労はつきない。
なお、別クラスの待宵早苗経由で朝霧薫に接触しようと頑張っているが、春日乃明日香への接触はお嬢様に頼む訳にも行かず、開法院蛍に頼んだ所で……となる訳で、後輩で妹扱いの天音澪に頼んだら、そのあたりの感覚がよく分かっていない一般人の彼女は全部姉たち、つまり桂華院瑠奈や春日乃明日香の前でばらしてしまい、なんとか春日乃明日香と朝霧薫の手打ちがなったが後始末に奔走する事に。
「悪い事ばかりじゃないですよ。
あの神奈水樹を押さえられる人を見つけたんですから」
遠淵結菜の心のこもった声に一同同じように頷く。
対神奈水樹必殺兵器こと高等部一年の愛夜ソフィアは、神奈水樹を叱れる数少ない大人であり、それを知った側近団が『絶対にこの人は手放してはいけない』と猛プッシュをしているなんて事を当の愛夜ソフィアは知る訳もない。
ユーリヤ・モロトヴァとグラーシャ・マルシェヴァとイリーナ・ベロソヴァの年齢詐称組を送り込んでコミュニケーションをとっているのだが、いつの間にか彼女相手に愚痴を吐いているのはある意味必然ともいえよう。
「お、みんないるわね?」
完全部外者なのだが、勝手知ったるとばかりに堂々と入ってくる神奈水樹にみんながげんなりした顔になる。
久春内七海がげんなりした顔で応対する。
「いらっしゃい。
聞きたくないけどご用件は?」
「放課後ベッドを貸してほしいのよ」
これである。
お嬢様も寝るベッドで何をするかと叩きだしたい所ではあるが、彼女の色仕掛けが桂華院家にとってプラスになる事もあるのでお嬢様決裁で文句が言えない久春内七海は今日のお嬢様の授業を確認する。
「今日のお嬢様の予定は?」
「お昼の授業はなしで、この後こちらの音楽室でオペラの先生のレッスンを受けてから九段下に帰る予定です」
久春内七海の確認に橘由香が答える。
神奈水樹は午後の授業があるので、彼女の言う放課後は16時以降で、その時にはお嬢様はいない。
「ちゃんと掃除はしてよね」
「もちろん。
こう見えても仕込まれていますから」
「何を威張っているのよ。コラ!」
あきらめ顔の久春内七海に神奈水樹が胸を張った瞬間、野月美咲にメールで呼ばれたらしい愛夜ソフィアのげんこつが神奈水樹の頭に落ちる。
結構強かったらしく神奈水樹が蹲るが、同情する人間はこの場には誰も居なかった。
「いったーい!
だって、まだネットカフェ貸してくれないじゃない!!」
「あのねぇ、貴方まだラブホテル禁止令解除されていないんだからね!!」
「だから、ここでやっているんじゃないですかぁ!!!」
「あなたがここでするたびにお小言が私の所に来るの!!」
きゃーきゃーと痴話喧嘩が続く中、二人以外の人間は慣れたもので無視する事にした。
そうしてお昼休みは過ぎてゆく……
(つんつん)
「あ、開法院さまですね。
これ、いつもの稲荷寿司です」
(ぺこり)
痴話喧嘩の中、いつものように不意に現れた開法院蛍に橘由香が稲荷寿司を渡したが、学食で桂華院瑠奈とまだ食事をしているはずの彼女に耳と尻尾が生えているのを神奈水樹は見なかった事にした。
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