いくつかの記事抜粋 虚塔の宴 編 その3

『桂華金融ホールディングスが上場した事で不良債権処理は新たな局面に入った。

 上場後の人事にてアンジェラ・サリバン桂華証券取締役が桂華金融ホールディングス取締役になった事で、次期桂華金融ホールディングスCEOのお披露目も終わり、次は同じ人事で会長職に就いた一条進CEOが何時彼女にCEOを渡すかになっている。

 既に帝国経済団体連合会副会長職に推挙する動きがあり、財界活動を考えるとそう遠くない時期に代表権のない会長職に退いて財界活動に注力するとの声が聞こえている。

 桂華金融ホールディングス上場で金融機関の不良債権処理は一区切りを迎え、次は地銀の不良債権処理と再建、さらに世界と伍していくメガバンクへの進化へと……』



『政府が推進しているメガバンク構想が暗礁に乗り上げている。

 メガバンクとは巨大金融機関の事だが、ここでは銀行・保険・証券の一体運営を行う金融機関と定義したい。

 不良債権処理と金融ビッグバンによって都銀13行大手20行の護送船団方式が崩壊し、帝都岩崎銀行と二木淀屋橋銀行、穂波銀行に五和尾三銀行と桂華金融ホールディングスの五大銀行体制へと移行する事になった。

 だが、五和尾三銀行が帝都岩崎銀行に実質的救済合併されて岩崎金融ホールディングスとなる事が発表され、穂波銀行がシステムトラブルから帝亜グループに助けを求めてその庇護下に入ったあたりから金融庁の思惑からずれ始める。

 元々『民間でできる事は民間で』をスローガンにしている恋住政権は郵政民営化を一丁目一番地に掲げているが、政府系金融機関は樺太銀行や農林中金、不良債権処理の為に作られた桂華金融ホールディングスなどがあるものの、樺太銀行マネーロンダリング事件で樺太銀行と桂華金融ホールディングスをつける構想が頓挫。

 樺太と縁が深かった岩崎金融ホールディングスは救済合併した五和尾三銀行で手一杯、システムトラブルで内部の統制がとれていない事が露呈した穂波銀行は論外、残った二木淀屋橋銀行は樺太銀行内部の不良債権処理とコンプライアンス体制が確立されていないと難色を示している。

 「この国で生き残れるメガバンクは四つ」という識者の言葉を信じるならば、恋住政権の郵政民営化によって超巨大メガバンクとなる郵貯を入れるとその椅子は残り三つ。

 激しい椅子取りゲームは証券や保険を巻き込んで……』



『新宿ジオフロントの完成に伴って、都内の再開発が加速している。

 これは不良債権処理がある程度進んだことと、『都市再生特別措置法』の成立によって都内の再開発がしやすくなった事、新宿ジオフロントの工事で新技術の導入が進んだことがあげられる。

 まずは新宿ジオフロントの第二期工事でできる新宿新幹線だが、それに合わせて新幹線駅が地下にできる池袋にもジオフロント建設を発表。

 また、新幹線工事に合わせて帝西鉄道が土砂搬出トンネルを作り、完成後は帝西鉄道新宿線が新宿に乗り入れる事を発表。

 さらにこの土砂搬出トンネル工事に合わせて地下鉄東西線と帝西鉄道新宿線の乗り入れを発表。

 帝西鉄道新宿線の利便性を強化する。

 同じくジオフロント建設を発表したのは秋葉原で、こちらも新常磐鉄道がらみだ。

 ターミナル駅となる秋葉原駅は既に地下二面四線に待避線つきの巨大ターミナル駅に設計を変更。総武快速線東京駅地下ホーム乗り入れ工事も本格的に始まり、大規模な地下開発が避けられない情勢となったのでジオフロントとして再開発を進める事になったという経緯がある。

 これらの地下工事に伴う残土は羽田空港拡張工事及び中央防波堤埋立地に使う事が決定しており、大規模な地下空間を利用した周辺地域の再開発が加速。

 さらに帝亜グループがお台場に帝亜タワーを建設する事を発表した事で湾岸開発にも火が着き……』



『北海道・山形県・栃木県及び桂華商会による第三セクター『ネッ馬』が設立され、関係者が集まって記念式典を行った。

 元々は北海道や山形県や栃木県の地方競馬を救済した桂華グループがインターネットを利用した馬券販売を行う事を関係機関に陳情していたのだが、政府の構造改革特区法を利用する事で諸問題を一気に解決できると判断。

 政府も華族改革や公営ギャンブルの救済のモデルケースとしてこれを認める方向だ。

 地方競馬は馬券販売が低迷。インターネット販売に他の地方競馬も注目しており、既にいくつかの地方競馬が参加を検討しているという。

 この『ネッ馬』は桂華金融ホールディングスが発行している身分証つきケーカを持っている事が条件で、パソコンや携帯内から注文するとケーカに紐付けられた口座から自動的に入出金が行われる。

 また、富嶽テレビ深夜枠を利用した競馬中継『ネッ馬』の放送とそれに合わせたレース整備を発表……』

 


『富嶽テレビは桂華グループと五年契約で深夜放送のCM枠を一括購入する事で合意した。

 購入時間は深夜一時から三時までで金額はおよそ一千億円。

 本来テレビの時間枠は広告代理店に売却して、その後広告代理店がスポンサーを探すというものだが、富嶽放送のTOBで富嶽テレビの経営に関われるようになった桂華グループからの手打ちのサインとみられ、戦々恐々としていた関係者はまずは安堵の息を漏らしている。

 近年のテレビの影響力の増大に伴い広告収入も増えていたが、同時に制作費用も急騰しており、問題となっていた。

 ただ、広告代理店飛ばしともとれるこの行為は広告代理店側は良く思っておらず、更に「深夜枠の番組をゴールデンに移すつもりはない」という発言に関係者から懸念の声も出ている。

 桂華グループは桂華商会内に制作会社を設立し、制作会社内部の経営の統廃合にも関与する方針で……』



『富嶽テレビのスポーツ局長の発言が注目を集めている。

 「東京でレースを開きたい」という彼の発想が実現するかもしれないからだ。

 富嶽テレビのある湾岸は現在再開発が加速しているのだが、同時に政府によるお台場カジノ構想が推進している中で、彼の発言はモナコを意識したものだと言われている。

 地中海の小国モナコ公国はカジノだけでなくF-1レースでも有名だが、政府のカジノ構想を成功させるイベントとしてカーレースの存在は欠かせないと主張して関係者に吹いて回っている。

 F-1の開催は色々な問題から難しそうだが、GTレースぐらいならという意見もあり、湾岸開発に絡む構造改革特区法を利用すればできるかもしれないと……』




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富嶽テレビの深夜枠でやりたい事

『カルトQ』『アインシュタイン』『音楽の正体』『ハンマープライス』『カノッサの屈辱』あたり。

わが青春のフジ深夜枠である。


湾岸レース

やりたいのは『湾岸ミッドナイト』なんだが、東京でカーレースという構想は現実に何度か浮かんでは消えている。



お馬の話

 某国営放送の『土方のスマホ』の騎馬娘を笑ってあのあたりの資料を試しに調べて気づく。

 樺太でも競馬やっていたのかと。

 社会主義国化で廃止に追い込まれたのだろうが、本土に復帰したので樺太でも競馬をやってもいいんだよなぁ。

 このあたりの誘致を搦めてお馬の話を作るか。

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