いくつかの記事抜粋 帝都学習館学園七不思議 序 編

『東京地裁は東京都に本社を置き2002年に会社更生法を申請した帝国重化学産業の再建計画を承認した。

 桂華商会ホールディングスの子会社である桂華資源開発による買収で千四百億円におよぶ負債を一括償却したのちに、経営再建を目指す。

 帝国重化学産業は市況の低迷で主力の合金鉄の収益が悪化。

 系列親会社である八富製鉄の支援の下経営再建を目指していたが、事業多角化の失敗に伴う有利子負債の削減に目途がたたない上に、メインバンクの穂波銀行が不良債権処理を加速させた結果、2002年に会社更生法申請に追い込まれる事になった。

 桂華資源開発はかつてムーンライトファンドと呼ばれた桂華グループの中枢で、今回の支援は源流の一つである極東グループの創業地にあたる酒田市のコンビナートも関係していると言われており……』


『北海道札幌市に本社を置く桂華グループ傘下の桂華太平洋フェリーは、同じく北海道札幌市に本社を置く北海道フェリーを買収すると発表した。

 買収価格は七百億円で、北海道に根付く地方財閥だった北海道フェリーグループは桂華グループ下にて再建を目指す事になる。

 北海道フェリーは北海道と樺太を結ぶドル箱航路のシェアナンバー1企業であるだけでなく、青函航路にも絶大な影響力を持っていた地方財閥の看板企業だった。

 だが、バブルに伴う過剰投資が足を引っ張り、苫小牧のホテル事業や山形県米沢市のスキー場開発の低迷、新設した新潟-福岡航路の低迷が経営を圧迫していた。

 一方の桂華太平洋フェリーは北海道開拓銀行の買収から始まった桂華グループの一企業で、苫小牧から大洗及び東京に高速船を運航させている。

 北海道フェリーも旧北海道開拓銀行がメインバンクであったため、拡大し続けている桂華グループの物流部門強化の必要から北海道フェリーの航路及び高速船に注目していた。北海道フェリーの支援については多くの企業が買収に乗り出していた中、創業者一族を退任させた上で負債全てを抱え込むという条件での破格の買収劇で、『北海道が桂華の第二の故郷』という言葉に偽りがないと……』


『北海道の不良債権処理が加速している。

 トマムのリゾート開発に伴う経営再建を支援するだけでなく、北海道札幌市に本社を置いて民事再生法を申請した翠館ホテルの支援を発表。

 トマムのリゾート開発はムーンライトリゾートが主導し、事業会社の破綻に伴う二百二十億円の債務を購入しており、翠館ホテルも同じ形で三百四十億円の債務を購入して、こちらは桂華ホテルが主導する。

 現在の北海道経済は本州と樺太の中継地という需要で支えられている。小樽-札幌-苫小牧のラインで景気が回復しつつあり、青函トンネルがらみで道南が、稚内から旭川が樺太からの移民による人口増で薄日がさしつつある。

 ムーンライトリゾートは国内外でゲーテッドコミュニティを運営しており、道内ではムーンライトリゾート夕張がある。

 この支援は夕張市との連携も視野に入れたものとの情報もある一方で、ゲーテッドコミュニティの内部からは詳しい情報は漏れ伝わってこない。関係者によるとムーンライトリゾート夕張では多くの軍関係者の存在が……』



某北海道地方局のラジオ番組にて


『で、お嬢様から急に電話がかかってきて、「なんかあなたたちの看板が危ないらしいから、とりあえず買っておいたわよ」なんて言うんですよ。

 もちろん訳分からないからミスターやヒゲや先生に確認をとったのですが、当然分からない。

 で、経済部から会社を買ったと教えられてびっくりですよ!

 関係がないんでなんて言えないでしょう!!

 ちなみに、その価格四百二十億円らしくて……私たち顔を見合わせて「どうするこれ」って誰も言わないんですけど、さすが先生ですね。カメラを回していたんですよ。

 で、それをヒゲがためらうことなく一話作って「製作費四百二十億円!」ってつけてお嬢様大爆笑してくれたからよかったものの、普通の人なら返せない金額ですよこれ。

 で、そんな大恩あるお嬢様にあのヒゲ「お礼に劇のチケット送るから見に来て」と騙し企画で深夜バスに乗せて東京から北海道に来させようというおそろしい企画をしかけて……ありゃ人生のブレーキが絶対に壊れていますよ。ええ。

 お嬢様つきの秘書の人が変わったからできたようなものの、以前の金髪秘書さんだったら絶対に途中で喧嘩になったでしょうね。

 で、先生がそれもカメラに回してヒゲが一話作ると……

 テレビ馬鹿なんですよ。あの二人は』




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感想からのネタ拾い

財務はお嬢様をそろそろ叱っていいと思う


お嬢様の無駄遣い 総額三千八十億円。


帝国重化学産業

 事業多角化失敗と主力の販売不振があるが、やっぱりというかみずほの混乱が背景にあると察してチベットスナギツネのような目になる私。


北海道フェリー

 こっちもつまる所拓銀破綻が引き金になっているんだよなぁ。

 不良債権回収で貸しはがしが横行していたのだが、樺太航路があるので実は黒字倒産の可能性が凄く高かったりする。

 同族企業の運営なのを理由にお家争いからの混乱と破綻という形にした。


トマムリゾート

 実は作者がこのリゾートを知ったのは田中芳樹先生の『夢幻都市』(講談社文庫)だったりする。

 この作者、『銀河英雄伝説』から田中芳樹先生を知った口だけど、幻想系の作品も実は大好きだったりする。

 『夏の魔術』とか。

 このあたりはもちろん、七不思議のネタに……


ラジオ番組

 水曜天幕團の公演を見に、東京から札幌への深夜バスの旅をやったお嬢様が居るらしい。

 後半見事にやられて、「八戸から船にしようよ……」とか「このためにフェリー会社持っているのよ!」とか実にお嬢様らしい駄目会話のオンパレードが。

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