女の子>>女子
「だからさぁ。
さっさと三人とやっちゃいなさいよ」
すさまじいぶっちゃけストレートをかましてくれるのはみんなの神奈水樹である。
そこにしびれる憧れない。
「あんたねぇ。
私たちまだ中一。お・わ・か・り・?」
「私たち頭は子供、体は大人。
大体水着写真集飛ぶように売った体で何をいまさら」
橘由香と華月詩織さんが露骨なオコ顔でこっちを見ているが神奈水樹は気にしない。
なお、この会話は乙女の神聖なる場所である女子更衣室にて行われている。
体育授業の後の着替えの場面で、私のたわわな肢体を見ての一言だ。
「神奈さん!あなたって人は……」
「私はやっちゃえと言っているだけで、子供を作れとまでは言っていないわよ。
ちなみに童貞と処女の組み合わせ、きついわよ。
失敗して離婚の原因になる事もあるんだから」
橘由香のオコは家の論理から正論をぶつける神奈水樹に制圧される。
その家の娘である華月詩織さんは顔を赤らめたまま言葉を出そうとしない。
「大体桂華院さんなんて絶対に子供作らないといけない身分なんだから。
予習も復習もなしで本番に挑んでうまく行くと思うの?」
さすが占い師。
口が滑らかだから、既に女子更衣室の皆が彼女の話中に。
ここでむやみに煽らないのが神奈水樹らしい。
「とはいえ避妊はちゃんとする事!
ピルとかだったらちゃんと病院紹介してあげるから」
青年女子の悩みの一つにこの避妊薬入手があげられる。
特にピルとかの入手手段が限られているのだ。
「ちなみに、うちはお師様の代から先代桂華院さんに紹介してもらった所からもらっているわよ」
何やっていたんだよ。うちの爺様……って、神奈一門はハニトラの家でもあったな。
製薬会社やってて医師とも関係が近い桂華院家と神奈のくっつきのなれそめを見た気がした。
「神奈さんはそんなにしているのですか?」
恥ずかしそうに華月詩織さんが聞くが、この人控えめに見えて思ったより突っ込む。
主従関係できっちりラインを引いている橘由香の方が、そういう時はフォローに回るというのを私は最近知った。
「私は自分からモーションかけてないわよ。
向こうから言ってくるからホイホイ乗っているだけ」
こうやって会話を聞くと神奈水樹も実に闇が深い。
というか、多分この面子で恋愛ができないのが神奈水樹なのだろうし。
「じゃあ、帝亜さまや泉川さまや後藤さまが言ってきたら、乗るのですか」
どくん。
「乗るわよ。華月さん。当り前じゃない。
けど、この三人はまだ言ってきていないわよ。
だから桂華院さんに言っているの。
私が乗る前に先にやっちゃえって」
今の私はどんな顔をしているのだろう?
ロッカーの鏡に映った私は、困惑というか安堵というかなんとも言えない顔だった。
首を軽く振って、私も会話に加わる。
「それで、私が誘ったら処女と童貞じゃないの?」
ぽんと手を叩く神奈水樹。
その後の言葉に私たち絶句。
「じゃあ、この際だから先に処女捨てて三人にモーションかけたら?」
「いやだから、相手が居ないじゃない!相手が!!」
「だから適当に捨てちゃって。
なんなら私と一緒に適当に年上にナンパされる?
私、悪い男にはひっかからない自信はあるわよ」
遊びなれているのかひっかからないまでさんざんひっかかったのか知らないが、神奈水樹の断言に私は口を閉じた。
閉口した私を見て、神奈水樹が一言。
「あ。もしかして、百合?」
「ぶっ叩くわよ!!!」
「まじめな話、私が子供作ったらお家争いとかになるじゃない。
面倒だからパス」
「え?」
「はい!?」
「はぁ?」
私の宣言に橘由香と華月詩織さんと神奈水樹の三人とも驚いたような呆れたような顔をする。
何言ってんだこいつみたいな顔をしたので、ちゃんと説明する事にした。
制服を着て気づいたが、神奈水樹は流行に合わせてスカート短くしてやんの。
「せっかくうちには義弟ができたんだから、私が子供を作ってお家争いとか嫌じゃない」
「……」
「……」
「……」
おい。ちゃんと説明したのに『駄目だこいつ早く何とかしないと』なんて顔で見るんじゃない。
橘由香と華月詩織さんと神奈水樹の三人は互いに肘でつつきあった末に、橘由香が意を決して口を開く。
「お嬢様。
失礼ですが、お嬢様がお子をなさない方がお家争いが勃発いたします」
「へ?まじ?」
「まじでございます」
橘由香の断言に首をひねる私。
そのまま補足をしたのは華月詩織さんである。
「桂華院さん。
家は血を広げ、繋いでゆくものです。
お家争いは当然の危惧でしょうが、それなくして家が繁栄しないのもまた事実なのです」
「そういうものなの?」
「そういうものなのです」
華月詩織さんの説明に納得しつつある私。
で、決定的な一言は神奈水樹が言った。
「桂華院さん。
桂華院さんは結婚したら苗字が変わりますよね?
必然的に新家を立てる事になるのでは?」
あ!?
そうか。
仲麻呂お兄様の所に、道麻呂くんができたから桂華院公爵家は彼が継ぐことになるのだ。
ゲーム内での桂華院公爵家継承者という設定がもう変わっているのをやっとこの時自覚したのだった。
「だからさ。
あの三人相手に甘酸っぱい色恋でも爛れた恋愛でも好きにしちゃいなさいよ。
今のままだと、あの三人餌をお預けされたみたいで、見ててかわいそうなのよ」
むぅ……
言葉に詰まる私のフォローなのだろうか、橘由香が余計な一言を。
「もしかしてなのですが、あのお三方にも今のような事おっしゃいました?」
「私は言ってないわよ。
けど、姉弟子さまあたりがモーションかけるんじゃない?
それがいやならって話な訳」
他にもいるのか神奈一門……というか、信頼できる高級娼婦一門だよな。神奈一門は。
筆おろしの依頼は常にやってくるのか。
納得はしたが、理解はしたくない私は黙って着替え終わって女子更衣室を出る。
もちろん、神奈水樹や橘由香や華月詩織さんが後ろからついてくる。
花の命は短くて。
そんな姦しい会話をしていた窓ガラスに映る私たちは、姦しさなんてまったくない乙女としてその姿が映っていた。
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感想にネタを当てられたけど私は元気です。
参考資料
https://www.jase.faje.or.jp/jigyo/youth.html
データを見ると、メディアに煽られた恋愛至上主義が2005年あたりに頂点を迎えるのだが、草食系あたりのワードからかそれが下火に、というか恋愛のコストに男子側が耐えられなくなったとみるべきか。
しかし、中学女子で3%から4%か……
頭は子供体は大人
もちろんネタ元は『名探偵コナン』。
どーでもいい話だが、リアル『セーラームーン』(開始時中2)世代だと中学生設定が頭に残っているから、薄い本系で彼女たちを見ると『なんと体の発育した中学生』となる。
特に『真面目屋』さんの所の彼女たちはもぉ……
年上が誘って
この時期大人に憧れるという感情はたしかにあったなぁ。
うちは田舎だったからおねしょた……げふんげふん…そんな風習がまだ残っていた名残を覚えている。
なお、このあたりの風習が残っていたのが梨園こと歌舞伎界。
『遊びは芸の肥やし』という言葉が物語っている。
この辺の逸話で、なろう系真っ青の設定を持つリアルパイセンを見つけたのでご紹介しよう。
宝塚出身で梨園の妻となり政界に入り参議院議長まで上り詰めた扇千影氏というお方が。
史実では来年こと2004年から参議院議長につく。
生々しい猥談
現実女子の方がきついというか、聞いていてこっちが黙る。
後半のアンジャッシュ
瑠奈「陳宮の弾だし。私」
みんな「まーたマスターが何かほざいてる……」
花の命は短くて
小説家林芙美子の言葉。
正しくは『花の命は短くて苦しきことのみ多かりき』。
後ろの言葉を知るとその言葉の意味ががらりと変わる。
こういう人たちが戦後女性の地位向上のフロントランナーとして歴史に現れてゆく。
ピルとかの話も実は女性の性解放の運動とかがあって、それを知っていると今の……おぅ(顔を覆いながら)
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