男の子女の子>>男子女子
中学生にもなってくると、本格的に成長というものが男女の体に出てくるもので。
その結果、それ相応に互いが意識したりなんてのもあったりする訳だ。
「おい。瑠奈。
ちょっといいか?」
「あ。桂華院さん。
少し話があるんだ」
「桂華院。
この間の……」
あれ?
この三人の距離感が全然変わらないぞ?
という訳で、アヴァンティーでのお茶会時に聞いてみた。
「何言ってんだ?瑠奈?
お前相手に遠慮してどうする?」
おーけーわかった。
戦争だな。戦争がしたいんだな。栄一君よ。
「待った!
桂華院さん押さえて!!
距離感については理由があるんだよ。
他の子たちと違って、僕たちはある意味もう大人になっているじゃないか」
裕次郎くんの言葉にぽんと手を叩く私。
というか、このお茶会は別名TIGバックアップシステムの経営会議でもあるのだ。
お茶とお菓子の間に鎮座しているのは、某銀行の勘定系システム開発を筆頭にしたTIGバックアップシステムの業績データであり、桂華金融ホールディングスの勘定系システム開発も始まるから、さらなる飛躍が約束され……たので人手不足に悲鳴をあげていたり。
話がそれた。
「桂華院よ。
俺たちも一介の男子であり、お前の体に興奮しないといえば嘘になる」
さすがに真顔でそういう事を言われると少し恥ずかしくなるのだが。光也君よ。
けど光也君はちゃんと落ちまで忘れていなかった。
「で、そんなお前がここで大人顔負けの指示を出している所や、TVでゲーム画面に奇声を上げていたりと恋愛の前に色々考えたくなるものを見せられている訳だが、それでどう対処したらいいと思う?」
「くっ……」
返答に詰まる私。
言われてみると見事なまでのブーメランである。
「そこは男の甲斐性で」
私の言葉に一斉に視線をそらす三人。
何か言えよ。おい。
「真面目な話としてだ。桂華院よ。
俺たちは多分モテる」
客観的事実として光也くんが言い切る。
そうだろうなぁ。
今、この場に集まっているTIGバックアップシステムの株を売ってしまうだけで億単位の金が三人の懐に入ってくる訳だ。
不良債権処理が峠を超えたからと言って未だ景気は良くはない現在のこの国において、この三人は既にお買い得なのだ。
「たしかにね。
相変わらず、僕の所にお見合い写真はやってくるし」
裕次郎君の言葉には苦笑の重さがあった。
元総理の閨閥を望む連中はそれぞれたくさんいる訳で、そのお相手が中学生なのに億万長者の一人ときたもんだ。
家も女子も頑張ってお見合い写真を撮るのも道理だろう。
「ん?
その話だと栄一くんの所はどーなの?
今をときめく帝亜グループなんでしょう?」
「ああ。俺、瑠奈に結婚を申し込んでるって親父と爺さんに言っているから」
「へ?」
固まる私に栄一君はいけしゃーしゃーと言い放つ。
こいつ、多分私の事同性か何かと勘違いしていないか?
「帝亜グループと桂華グループの結婚だ。
こっちにもメリットがあるし、そっちにもメリットがある。
何も問題はないだろう?」
いや。いろいろあるのだが。
頭が実にもやもやするが、光也くんがさらに爆弾を投下してくれる。
「じゃあ、二木グループのご令嬢とのお見合いは断ったのか?」
はい?
二木グループのご令嬢と栄一君がお見合い???
何だろう?このもやもや感?
「ああ。
ただのお嬢様に興味はないよ。
何しろ俺たちは瑠奈を見ているからな」
「……ごめん。
ちょっとお手洗い行っていろいろ冷やしてくる」
そういってお手洗いで顔を洗う。
しっかりしろ。桂華院瑠奈。
この世界がゲームのようでゲームでないのならば、こういう話はあって当然じゃないか。
水で濡れた頬を私は軽くたたく。
「おまたせ」
「大丈夫か?瑠奈?」
「まぁ多分。
で、二木グループのご令嬢とのお見合いって?」
私の質問にあっけらかんと栄一君が答える。
そういう姿勢は嫌いではないが、話題が話題なゆえになんかもやもやする。
「うちは元々二木財閥の外様だっただろう?
それが不良債権処理を機に独立する羽目になったのはいいが、不良債権処理が終わった事でグループの再結集をという訳だ」
「それ、永田町でも少し話題になっているね。
二木と淀屋橋という江戸期からの大手財閥同士の結婚だったから、中の主導権争いが凄い事になっているって」
裕次郎君が補足説明をすれば光也君がさらに突っ込む。
「泉川。という事は、二木の狙いは穂波銀行か?」
「だろうね。
栄一君の所はあくまでモノづくりで財をなしている家で、金融系については専門外だ。
穂波銀行の信用回復はまだまだ先だし、出資を回収できるリターンを用意したら手放すと踏んでいるんじゃない」
「で、そういうのもあって、二木側がお見合いを用意して俺が断ったと」
「なるほど。
受けてよかったんじゃないの?」
「馬鹿だなぁ。瑠奈は。
この日本の中で、瑠奈以上のリターンをたたき出せる女が居るか?」
どくん。
冗談ぽく言われた栄一君の断言に少しどきまぎしながら、私はいつものように軽口を叩いた。
「ばーか」
そのまま冗談が飛び交い、TIGバックアップシステムの話に戻り、また他愛ない話に戻ったりするこの日常は私は嫌いではなかった。
大人になるという事は、誰かを選ぶという事だ。
それでも、もう少しだけこの時間を……
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こういう話を増やして、恋愛方向に舵を切ってゆくのが初期案だったりする。
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