いくつかの記事抜粋

『樺太道の人口についてその統計が大幅に違っている問題で、樺太復興庁は国直轄で人口調査のやり直しを行うことを決定した。

 現在の樺太道の人口調査は前身である北日本民主主義人民共和国のデータを参考にしていたが、あまりに数が違うために対応を協議していた。

 樺太道の人口はおよそ二千万人と言われているが、ロシアとの領土問題で係争中の北樺太自治区の人口も組み込まれている上に、北日本政府時の大陸からの難民の受け入れやロシア金融危機時にロシアからの逃亡民が入り込んでその実態は未だよく分かってはいない。

 北日本政府が日本に併合された後の国内移動データを確認すると、少なくとも本土に二百万人の移動が確認されており、最低でも現在の日本の総人口は一億四千万から一億四千二百万に増えるのではと政府関係者は戸惑いを隠せない。

 樺太道の民族構成は日本人が五割、スラブ系が三割、中華系が二割と言われており、現在各地で問題となっている二級国民問題の正確な状況把握のために必要だと恋住総理の決断によって解決に向けて一歩前進したと……』



『樺太道の産業構成は重工業と天然ガスの輸出、漁業がその中心となっている。

 とはいえ、この重工業は設備の老朽化と東側規格という事で、経済産業省が音頭を取って各財閥に協力を要請している。

 樺太道の重工業は国営企業だったものを第三セクター化して樺太重工として再出発し、第三世界に東側の兵器を売ったりメンテナンスをする事で収益を上げていた。

 バブル崩壊後の景気悪化局面にも関わらず、東側規格で一番品質が良い事から順調に売上を伸ばしていたが施設の老朽化の更新を機会に西側規格への変換を目指す。

 不良債権処理が道半ばとはいえ、これ以上の構造改革の遅れは恋住政権下では看過できないとして……』



『経済財政諮問会議にて米国で流行しているゲーテッド・コミュニティが話題に出て関係者を騒がせている。

 日本では要塞都市等と訳されているこの都市の特徴は、周囲を壁で囲み内外の出入り口を制限した安全な都市内で富裕層が暮らすというコンセプトにあるが、二級国民問題による治安悪化に頭を悩ませている政府が口にしたことで、別の形でその実現の可能性が出てきた。

 武永経済財政担当大臣が話を振ると、一条民間委員がメガフロート上に作られた洋上都市を提案し、そこを特区として用意して樺太道からの出稼ぎ労働者を受け入れたらという話に発展。

 人権団体からは『これは出島ではないか!』と抗議の声が上がっており……』



『第二次2.26事件から34年が経過し、犠牲者を追悼する式典が枢密院にて行われた。

 昭和維新の完遂と日本の真の独立、華族や財閥をはじめとした特権階級の打倒を主張した文豪の主張に帝都警が呼応。

 一個大隊にて都内中枢部を占拠した上に華族や財閥関係者を殺害し、自衛隊の治安出動を招いたこの事件を、華族や財閥関係者は未だ忘れていない。

 彼らは華族の家範を利用した武装携帯の許可を政府に長く求めていたが、現在PMC産業が急成長している中でゲーテッド・コミュニティの話と絡んでそれが可能になるかもしれないと期待している。

 現在経済財政諮問会議において議論が進められている二級国民問題に関して、出島を作り彼らの出入りをコントロールするという案が浮上している事が大きな要因である。出島内部の治安維持のためには通常以上の武装が必要であると考えられ、それを県警が全て賄うのは負担が大き過ぎるとしてPMCに委託してはどうかという案が出ているのだ。

 政府内部では、東京湾の木更津沖、大阪湾の夢洲沖、伊勢湾の知多沖、福岡県の博多湾等を候補に検討しており、県警下で警備任務の委託という形でPMCが入るという話が水面下で進んでいるという噂が聞こえている。

 恋住内閣は治安問題を喫緊の政治課題にあげており、探偵業法の制定と警備業法の改正と捜査特別報奨金制度の導入を目指しており、これらの法律が成立すれば『華族という大名に武士が付く』と野党などは反対している。

 華族の一人は『一度目は偶然としよう。二度目は必然だろう。だとしたら三度目が起こる時に我々を守る盾が欲しいだけだ』と話して……』



『経済財政諮問会議で武永経済財政担当大臣と一条民間委員が激しく対立する場面があり、関係者がひやひやする一幕があった。

 無駄な公共事業の削減を武永大臣が提案し、一条民間委員がこれに反発したからだ。

 折しも武永大臣が桂華グループの新幹線事業に関して『もっと他に金を回すべき』とTV番組で発言したことから口論は自然と整備新幹線事業の話題となり、『桂華鉄道は最悪自己資金で新宿新幹線を作る』と一条委員が言い切った所で議長である恋住総理が仲介に入りひとまず両者は和解した形になった。

 先の総裁選で恋住総理は最大派閥の端爪派を徹底的に干している事から、端爪派の地盤の一つであるゼネコン業への不良債権処理に積極的でハードランディング路線を取りたい背景がある。

 一方で、四国新幹線や新宿新幹線を自前で建設している桂華鉄道は今やゼネコン業界にとっての慈雨に等しく、ハードランディング路線でゼネコンが潰れることは現在進めている新幹線事業の遅延を意味する。

 この件が露呈した事で、桂華グループが背後に付いている泉川副総理に端爪派が接触しており、引退した渕上元総理が泉川副総理と赤坂の料亭で会食した事が……』



『兵部省は今年決定する予定だったAH-X(次期攻撃ヘリコプター導入計画)の延期を決定した。

 予算削減のアオリを受けた事と、東側兵器置き換え計画を優先させることにした為と兵部省広報官は話している。

 雇用問題などもあって陸上自衛隊内では旧北日本軍の師団編成が維持されているが、その装備更新を西側兵器に統一させる事を政府が決定した為だ。

 北日本政府の旧東側規格の兵器最大の輸出先は共産中国だったが、北日本政府の併合によってそのルートは途絶。

 現在はロシア金融危機に伴うロシアの兵器産業の混乱につけ込んで第三世界に販路を広げているが、これも樺太重工の設備更新に伴って縮小する予定である。

 一方で、かつての北日本軍にはMi-24Jが70機、Mi-28Jが30機配備されており、その生産ラインも樺太重工内に残っている事から置き換え計画とは別にAH-Xの延期と同時に整備延命を樺太重工に発注し……』




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樺太の人口

 社会主義国の統計が正しい訳がない (笑)

 北日本の併合前に目鼻の聞く連中が我先にと逃げ込んだ結果、多分2500万は居ると思われる。

 

構造改革

 この世界では北日本政府の置き土産である、日本以上に非効率な官僚と賄賂・コネ社会・無駄にあふれる武器と麻薬を相手にすることに。

 不良債権処理の最終章はこの北日本問題がどうしても出てくる。


出島

 『壁で囲って中に楽園を作ろーぜ!』ではなく、『やべーやつら壁の中に押し込んじまえ』という発想。

 日本の政治方向でこれらの異物を取り込むか排除するかで政治問題化がこの頃から激しくなってゆく。

 実は、この政治問題化のネタは『θ 11番ホームの妖精』(籘真千歳著 電撃文庫2008年)のオマージュだったりする。

 そういえば『攻殻機動隊』でも出島があったな。


第二次2.26事件

 掲示板の感想を見てせっかくだからとノリノリで書いたけど、戦前の財閥襲撃洒落になってねーな。

 やのつく自由業どころか右翼や秘密結社まで絡むから追っかけるのが大変なので、伝家の宝刀「これは乙女ゲーム♪」とほざいて途中でほうり投げることにした。

 別作品の『修羅の国』あたりを見れば分かるけど、資料の追っかけとそこからの考察を経ての執筆だと毎日更新はきついのだ。

 あくまでこれは『軽く』『短く』『速く』を前提に作られている物語であるという事でご容赦を。


探偵業法の制定と警備業法の改正と捜査特別報奨金制度の導入

 つまり『シティーハンター』や『カウボーイビバップ』や『探偵物語』や『シャドウラン』ができるよ。やったね♪

 もちろんこの秋の例のイベントで別方向にひん曲がるのだが。これ……


AH-X

 これも掲示板ネタだが、せっかく東側武器が使えるのだからとハインドを出すぜという私はちゃんと『パイナップルアーミー』が本棚に収まっている。

 ついでにMi-28も出せるなと気づいたのでこれもこっちに。

 わざわざ日本製造タイプのJをつけるのが架空戦記ぽくって私的にお気に入り。

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