第6話 神様からの伝言
入院生活は一月が経過し、俺の身体は今、若いせいか回復が早かった。
七歳の子供なら回復は早いだろう。某有名な探偵漫画の身体がちっさくなった奴も、七歳ぐらいの身体だったなとか思い出していた。
そもそも俺はこれからどうなるのだろうか。そんなことを思い、眠っているときだった。
「おい」
「は?」
「俺だよ。
「江間川ねぇ。はいはい」
俺は声のするほうを見た。今度は看護師の格好をした江間川がいた。看護師の格好が似合わなさ過ぎて、俺はふいた。
「っか。似合っていないしキモい」
「おい。そこは笑うとこじゃないだろう。お前がこれからどうなるのか心配してるから見てきてやったのに。あーあ。もう知らん。俺は帰る」
「あ。待て待て。で、俺はどうなるの?」
俺は慌てて江間川を引き止める。
江間川はにやりと笑うと、俺を見た。その表情は新しいおもちゃを見つけてはしゃいでいるように見えた。やっぱり江間川は気に入らない。
「おっほん。まあ、君はしばらくこの
「はぁあ。いい加減にしろよ!お前のせいで俺はこんなことになったんだろうが」
「えええ。つか、そんな可愛い顔でそれを言っても俺としては嬉しいだけなんだよね。可愛いねぇ」
江間川のニタニタした表情が気持ち悪かった。俺は引っ張っていた江間川の服を離す。
江間川は笑っている。何となく自分の身の危険を感じた。
「そうそう。君の外見は多くの人が好ましいと思う外見だ。そして、性的な対象にも成りうる。それもペドフィリアとかロリコン。君がそれの対象になったって自覚を持とう」
「ロリコン野郎!」
「失敬な。俺は君に警戒心を持たすためにね」
「あーわかったよ。俺が悪かったよ。つか、これからどうなるんだよ。俺」
「まあ、落ち着いて。君はこれから養護施設に行く。で。その先で養子を求めている夫妻と出会うんだ」
「は?それって決まっているかの?」
「ああ。決まっているさ。というかそういうことになっている。本来なら未来の話は教えちゃいけないんだがね。ただ、今回は特例。まあ、お前さんがこの白石喜和子になったのは俺の所為と、神様側の手違いがあってさぁ」
「な、はぁああああ?」
この美少女に転生したのは江間川だけのせいじゃなく、神様自身も関与していたのか。俺は怒りが湧いてきた。これが神様の悪戯ということなのだろうか。
「本当、ごめんねぇ。あ、神様から伝言預かってマース」
「おい、軽すぎだろう」
「あー大丈夫。正真正銘の神様からの伝言だからね。ちょおっと待ってね」
江間川は自分のカバンの中から手紙を出す。その手紙は金色の紙で光っていた。
神様からのものだからか。俺はなんだかこれまでの流れが単なる夢のかとも思えてきた。江間川は伝言を開く途中で俺を見る。
「何だよ」
「君さ。この期に及んでまだ夢だと思っているの?」
「は?」
江間川は俺の心が読めるのだろうか。そういえば江間川はタイミングよく何かの言葉を掛けてくる。
江間川が閻魔大王ならばそれくらいの能力は朝飯前なのかもしれない。余計なことを思えば心を
「『余計なことを思えば心を詠まれてしまう』」
「気持ち悪い」
「うん。君の心は全部、筒抜けだよ。観念しろ。俺を気に入っていないのも解っている。でもね、俺は君が結構スキ」
「最悪だ。気持ち悪っ」
「どうも。じゃあ、神様の伝言だけど。『拝啓、
「長い!」
「しょうがないじゃん。神様はそういうものだからさ」
「そういうものって。女みたいな文章だよな」
「君、それは性差別ですよ。まあ、この世界を支配している神様は
「『入れ替えて転生させました。白石様はまだ目を覚ましていないです。そこで、私からの条件です。貴殿自身が改心し反省したら、元の身体に戻します。けれど、君が反省もしないのなら、白石様と供に貴殿は死にます。実は貴殿を目覚めさせことにかなりの反発などがありました。けれど、神として貴殿には改心して頂きたくこうしました。どうかご理解ください。本来なら、未来のことを教えるのはタブーなのですが、状況がイレギュラーなのでお伝えします。白石喜和子様は養護施設に入所してすぐに
「良くねぇよ。改心ってなんだよ?」
「改心ね、えっとね」
江間川は自身のスマートフォンを取り出し意味を調べ始める。
「意味を教えてほしいんじゃない!」
「え?まあ。ご存知の通りの意味だよ。君は女性を傷つけてきた。それを反省するべき」
「反省ってなんだよ。女がこっちにきて勝手に遊んでいただろう?違うか?」
「えーそれ自分で言う?これだからモテ男はいやだねぇ」
江間川はわざとらしく俺を非難する。癪に触る男だ。けれど、返す言葉が見たらないおれは黙るしかなかった。
「俺が癪に障っても君の犯したことは消えないよ」
「うるさい」
「君のやったこと、消えないから」
江間川がその一言を言い終わると、目の前の人物は看護師に変わった。
看護師はなぜ、自分がここにいるのか解らない様子だった。
「喜和子ちゃん、どうしたの?」
「いや、何でもないです」
「深夜だから眠れなかったのか。いよいよ退院だね」
「そうですね」
「不安?」
「いや、不安といえば不安」
「そうだよね。喜和子ちゃんは七歳なのにしっかりしているもんね」
俺の自身が「本当は28歳だからだ」と突っ込みを入れたくなったが、そんなことはしなかった。
神様からの伝言 了
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