あなたの味方

早朝から名も知らぬ小鳥が

健気に囀っている。

その中、読書に耽る。

朝からミステリーとは少々

重めのパンチだが、

甘ったるい恋愛ものよりかは些かマシだろう。

今から恋愛ものを読んでいると

流石に本調子が出ないような気がしていた。

胃もたれしてしまう。


数十秒に1回のペースで

ぺら、と固定の音を鳴らす。

それはページ内の文字数にもよるのだが

ほぼ一定にやってきた。


美月「…。」


ふと、喉に渇きを覚えて

1度本に栞を挟む。

それからサイドテーブルにそっと置き、

自室の部屋を開けて

台所まで足音が鳴らないように

善処しながら進む。

朝早いからか真っ暗な通路も多く、

その度に心の奥底がきりりと

恐怖に染まってしまう。

だが、自分の家だと言い聞かせ

進む他ないのだ。


小さい頃は暗い中この道を通るのが嫌すぎて

事前に水筒などにお茶を入れて

朝を過ごしたもの。

未だ記憶に残っている。

朝というのに暗いものだから困ったものだ。

朝と夜の境界線が苦手だったのかもしれない。


弟の部屋や親の部屋の隣を過ぎ、

台所に辿り着く頃には

徐々に水平線から太陽が顔を出して

私たちを照らし出し始めた。

5時を過ぎると明るくなるあたり

本格的に夏が近づいているらしい。

蛇口を捻り、自然の冷たさの水を

そのまま喉へ流し込む。

多少は潤うものの

物足りなさが霞む。

けれど、飲み続けたって

決して完全に潤おうことはないだろうと思い

コップを簡単に洗い

逆さまに立てかけた。


それから何気なくキッチンにある

簡易椅子に腰をかける。

ぼんやり天井を眺めていると、

小さな羽虫が1匹目の前を舞った。

蚊ではなさそうだったので

粒好きにもなれずそのまま飛ばしてやる。

すると、気が済んだのか

開いていた窓からするりと

抜け出てしまった。

虫はきっと誰よりも身軽だろう。


美月「……はぁ…。」


思わずため息が漏れた。

思いを馳せるのは

いつだってこれからの生き方について。

そして、原因についてだった。

思えば今に焦点を当てることが

少なかったようにも感じる。


今、か。

分かっているのは

私は血を見ると口にしたくなるということ。

ただ殺傷欲ではないということ。

暫く接種しなければ

お腹が空くような感覚が続き

極限状態になって力が入らなくなる。

そして、血の匂いに対して

異常なほどに敏感になっていること。


これだけ見ればまるで。

…まるで、吸血鬼のようだ。

だが、私は大蒜に怯えることもなければ

晴れの日に外に出れないなんてこともない。

日差しが強いのは元より苦手だけれど。

今日だってそれ以前にだって

清々しい日を浴びて朝を迎えた。

吸血鬼は日にあたると

体が燃えるなんて逸話も

あった気がするが、

そんなことはまるで起きていない。

その上、流水が苦手になったり

十字架に畏怖することだってないのだ。

お風呂は好きで1時間は入ってしまう程だし、

十字架なんて画像を検索して見ても

なんとも思わなかった。

あぁ、十字架か。

その程度。


美月「………似ているだけであって…根本は違うのかしら。」


確かに、血を接種しなければ

正気を失いそうにはなってしまう。

だが、血だけで生きていけることはなかった。

私には普通に人間としての

食事が必須であり、

これを欠かすとしっかりお腹が空く。


感覚としては胃が2つあるようなものだった。

普段の食事用と、それとは別用と。

双方にメーターがあり、

それが減ってくると

本能的に食べ物を求めるのだ。


これまで原因はあの夜に出会った

女性にあるとばかり思っていたが、

もしかしたら他にあるのかもしれない。

だからといって思い当たることは

ないのだけれど。

全ての行動を覚えているわけではない。

だからこそ、今こうなっているのだ。


このまま向き合わずに生きていても

よくなるとは思えない。

今は凌ぎつつ私の今の症状は

一体何と言うのか調べなければ。


美月「………。」


そっと席を立ち、

もう1度水をコップに注いで口をつける。


…。

…うん。


…やはり、満ちていかない。

この喉の渇きはどうやら

普通の方とは違うメーターらしい。


美月「……ほんっと…何でこんなことになってるのよ。」


苛立ちを隠せないままに

再度コップを洗浄し逆さまへ。

そして、またあの暗い道を通って

自室へと戻るのだ。





***





24日である今日。

何事もなく学校はあるため、

準備をして家を出る。

やはり日差しに当たっているからと言って

うっとくるものはあるものの

それ以外何ともない。

うっとくるとは言っても

日差しの強さゆえに気温が

高いためにくるものだった。


日中の授業は長々としていたが

帰りのホームルームまで乗り切り、

次は部活動の時間となっていた。

今のところは体調は

ややご機嫌斜めだが、

動けないほどではない。


鞄を背負い、いざ体育館へと

向かおうとした瞬間だった。


美月「…。」


陽奈「あ、あの……。」


刹那、横から声がする。

振り向けば陽奈が鞄も背負うことなく

机に置きっぱなしにしたまま、

私の元まで来てくれていた。

陽奈はやはり人と対面して

何かをすると言うことが苦手らしく、

肩をとんとんとされた後に

声をかけられた。

陽奈自身、柔らかな声では

この喧騒の中私に届かないと

判断したのかもしれない。


美月「陽奈じゃない。どうかしたの?」


陽奈「あの……体、もう良くなった…の…?」


美月「えぇ。快調よ。」


陽奈「あ…そっか。よかった…。」


美月「心配かけてごめんなさい。」


陽奈「う、ううん…!この前…本当に辛そうだったから気になってて…。」


美月「もう大丈夫よ。この前、ずっと付き添ってくれたわよね。」


陽奈「え、でも…最後までじゃないよ…?」


美月「それでも助かったわ。ありがとう。」


陽奈「…!…うん…!」


陽奈との会話はそれのみで、

数言話すと「じゃあ…」といい

居心地悪そうに戻っていった。

陽奈の性格のことだから

きっと勇気を振り絞って

声をかけてくれたのだろう。

それを分かってあげられないのが

私の難点だった。

人の気持ちがわかるようにと

本を読み始めたにも関わらず、

国語は出来るのにも関わらず、

相手の立ち位置の近くに

足を運ぶことが出来ない。

結局、という言葉がお似合いだ。


陽奈からの言葉を噛み締めて、

否、噛み締めるふりをして

体育館まで足を伸ばした。

着くと、既に数人は

コートの設置をしていた。

同級生はと言うと、

更衣室にてだらだらと準備している人もおり、

ぎゃははと品のない笑い声も聞こえてくる。

女子校だと言うこともあるのか、

躊躇なく足を広げ大声で話している。

私はその人らに目を向けることなく

自分のやることを済ませ

さっさと準備へと参加した。


準備をしていたのは先輩が多かったが、

同級生も何人かいた。

進んでやると言うよりは

仕方ないからやるという人が多いだろう。

先輩も先輩で習慣になってしまったから

コートを張っているという

感覚をそれとなく持った。


波流「美月ちゃん!」


美月「わっ…びっくりした…。」


波流「あはは、ごめんごめん。」


美月「あんまりびっくりさせないでくださいよ。」


波流「えー、そんな怒んないでよー。」


美月「怒ってませんよ。」


波流「怒ってたもん。」


美月「怒ってません。」


先輩がコートを立てる後ろで、

1ヶ所張っていないコートがあったので

その方へ近づいていく。

地に置かれたネットを拾いあげ、

絡まりかけているそれを解き

端を見つけ出す。

それからポールの方へと進み、

先輩とお互いに背中を晒しながら

話をまた振られる。


波流「何で日を跨ぐと呼びタメが消えるの。」


美月「部活の場だからです。」


波流「部活でも呼びタメがいい。」


美月「嫌です。下校時刻ならまだしも他生徒や先生の目がある中で、そのような非常識な行動は取りたくありません。」


波流「非常識ではないよ?」


美月「世間体として、です。」


波流「もー、お固いなぁ。」


美月「そんなものです。」


波流「えっ、そうなの?」


美月「はい。」


波流「後輩の子たちみんなにそう言って回るつもりだったよ…。」


美月「先輩は優しさに漬け込まれて舐められそうですけどね。」


波流「さらっと酷いこと言ってない?」


美月「遊留先輩だから言ったんです。」


波流「あれ、今まさに漬け込まれて舐められてない?」


美月「いえ、そんなことありませんよ。」


波流「あはは、美月ちゃんのそのトーンだと冗談なのか見分けつかないや!」


美月「それこそ酷いと思います。」


波流「えへへ。してやったり。」


ネットを張り終わりふと振り返れば

先輩はピースをしていた。

どうにも、本当に嬉しそうに笑うものだから

こちらまで小さくだが微笑んでしまう。

困ったものだ。

いつから仲良くなったのかなんて

探ってしまってはキリがない。

いつの間にか近くなっていたのだ。

まだ距離はあるものの、

昔よりは確実に近くなっている。

そう実感している。


先輩はすいすいと

自分の荷物がある場所へと走り、

暑いからだろう、お茶を飲んでいた。

そして、楽しそうに

先輩の同級生と話をする姿が見える。

思い返せば、左手には既に

絆創膏が貼られていなかった気がした。

その度に、休日の出来事だって

先週の出来事だって、

私が女性に切られた話だって

全て全て全て物語ではないかと思ってしまう。

ただの妄想、ただのフィクション。

虚構なのではないか、と。


先輩は陽奈とは異なり、

体調について心配するような旨は

全く伝えてこなかった。

快調だと見て分かったからだろうか。

心配無用と思ったのだろうか。

そもそも、興味がなかったのだろうか。

先輩のことはまだまだわからないが、

それでも悪い気はしなかった。

今日は晴れ。

体育館の床は相当滑るだろうな。





***





「気をつけ、礼。」


「ありがとうございました。」


部員全員が顧問の先生に対して

一礼をしながら声に出す。

そして部員達はぱーっと

ネットの片付けへと取り掛かる。


普段ならば先に片付けをして

その後に号令をするのだが、

今日ばかりは先生にミーティングだか

何かしらの用事があるようで、

先に号令という運びになったのだ。

先生は忙しそうに足早に

体育館を後にした。

怠ける同級生もいるかと思ったが、

早く帰りたいからか

話しながらではあるものの、

皆それなりにせっせと片付けている。

それと同時に、部長による

急かす声かけがあったのも

理由の1つだろう。


この時期は3学年皆いる訳で、

手が空く人だって数人いた。

そういう人は片付けをしている

先輩と変わるのだ。

そういう制度がいつから

出来たのか分からないが、

未だにあまり納得が出来ない部分もある。

確かに、上下関係を学ぶのはいいことだ。

けれど、先輩達含めネットや

シャトルを使ったではないか。

…と、考えてしまうのは毒だろうな。


私も私とてシャトルを集め、

そのままシャトルの詰まった箱を

両手に抱えて持ち運ぶ。

倉庫までくると、

もう同級生の姿しか見えない。

よくよく見てみれば、

映るのは部活の開始前に

大声で話し笑っていたあのグループではないか。

4人程がネットを片し終えても尚

何かしらが面倒なのか

突っ立って話をしていた。

関わらない方が吉だと

偏見に偏見を重ねて、

シャトルをさっさと置き

戻ろうとした時だった。


「3年の先輩早く引退しないかなー。」


「それな。駒使い怠い。」


「さっさと3年になりたいわー。」


「そしたらうちらが早よやめろって思われてんでしょ?つら。」


「えーやばそれ。」


「てかさ、今の部長めんどくない?」


「分かる。」


「ほんと怠い怠い。」


「あれは顧問に気に入られたいだけ。」


「権力の犬?」


「ぎゃっはは、え、マジでそれじゃん。」


他数人の同級生が入ってきて、

いつ先輩が倉庫の前を通るか分からない中

平然と話を続けている。

怖いものがないんだろうなと思いながら、

シャトルを片付ける為に

倉庫の奥の方へと足を運ぶ。


「次期部長誰だも思う?」


「えー…ってかうちは山岡先輩がいいー。」


「絶対ないっしょ。」


「あの人ふわふわしてるもんね。」


「緩そうじゃね?」


「絶対緩いわー。」


「でも先生と板挟みになって終わりっしょ。」


「メンタル病んで終わりそう。」


「それだわ。」


「でも実際なりそうなの清川じゃね?」


「もう先輩もつけないのはやば。」


「清川先輩か遊留先輩っぽくね?」


シャトルを置いた時だった。

不意に、何度も口にした先輩の

名前が上がったことにぎょっとして

振り返ってしまった。

後ろには数人片付けの為に

同級生が居たが、

各々ネットなりポールなり得点板なり

片付け終えたらさっさとここを後にした。

この場にいたくないように見える。

そして気づけば新しく

倉庫に入ってくるような人は居らず、

だらだらと話している4人と

私しか居ない状態になっていた。


「えー、遊留はないっしょ。」


「まじ?ありそうって思ったんだけど。」


「だってあんなへらへらしてるやつ先生は選ばなくね。」


「あはは、ガチ診断始めてんじゃん。」


「清川はいい犬になるだろうけど遊留はへらへらしてるし表面上って感じだから先生にも不評っしょ。」


「清川先輩もだけどバドミントン本気でやろうって感じなくねー?」


「それうちら。」


「あっはっはっは。」


「でもマジでなくない?」


「それ分かるわ。今の部長も顧問に言われてやってるだけっしょ。」


「それか伝統とか言ってしょうもないもん引き継いでるか。」


「伝統とかほんと怠いわ。」


「遊留だと伝統引き継ぎそうじゃね?簡単に流されそう。」


「あー芯なさそうだよなー。」


「そーそー。だから」


美月「ちょっと。」


気づけば、だった。

気がついた時には4人に対して

ひと言投げかけていた。

どうしてこんなことをしようと思ったのか。

そんなの、答えはひとつだけ。


「は?誰?」


美月「雛美月よ、同級生の。」


「あー…そう。んで何?」


美月「先輩達だって頑張っているし、そこまでいう必要はないじゃない。」


「え、怠。」


「これは次期部長だわ。」


「あーーっは。」


美月「…。」


「はいはいすみませんでしたー。あー萎えたわ、帰ろうぜ。」


「それなー。」


4人は私の横を淡々と通り過ぎた。

蹴られることもなく

肩で小突かれることもなく、

ただ退出するだけ。

そこまで嫌味ったらしいことを

しなかったあたり、

高校生らしいとも思ってしまう。

煩い笑い声、耳障りな高笑い。

それが嫌に耳に残ってしまった。


美月「……波流とは大違い。」


どうしてあんなことをしようと思ったのか。

そんなの、答えはひとつだけ。

それが私の中で曲げられない正義だったから。

正しいと思ったことをする。

それが曲げられなかったから。


それから後を追うように

更衣室に入ってみれば、

相変わらず大声で話す4人組。

他に、2人等少人数で

話しながら着替えるグループが

いくつか存在していた。

私も仲のいい子と少しばかり話し

その場をそそくさと抜け出す。

視線を感じるような気もしたが、

4人組は私が指摘して以降

先輩らの愚痴を言う訳でもなく、

今日のドラマがどうとか

課題が出ただのなんだの

そう言った類の話をしていたようで。


更衣室を退出し校門へと向かっていると

ふと、見覚えのある影が

立ち止まっていることに気がついた。


美月「…?」


「どうしたの?」


美月「ごめん、先に帰っててもらえるかしら?」


「え?あぁ、遊留先輩?」


美月「そうなの。」


「もー、全然いいよ。」


美月「今度また一緒に帰りましょ。」


「うん!じゃーねー。」


美月「えぇ。」


手を振ってくれたので振り返す。

その背中はみるみるうちに遠くなり、

ふと影と交錯して通り過ぎた。

私はと言うと、その影の前で

立ち止まったのだ。


美月「何してるのよ。」


波流「あ、お疲れ様!」


美月「お疲れ様。」


波流「何をしてるって…美月ちゃんを待ってたのだよ。」


美月「そうだと思った。」


波流「えへへ。以心伝心?」


美月「私はたった今見かけただけよ?」


波流「あー、なーんだ。」


先輩は変わらず笑顔。

だが、声がそれに追いついていないような

何となくな違和感を感じたのだ。

普段、ピアノをしていたり

音楽に触れている時間が長いこともあり、

気付かぬうちに音に敏感に

なっていたのかもしれない。


まだ更衣室に4人組がいたことだし

早くここから離れたくて

会話もそこそこに校門から出た。

夕焼けは大層明るくて

いつか私たちを飲み込んでしまうのだと

勘違いをし続けている。

ころんころん。

あぁ、また小石を蹴ってしまった。


波流「あのね。」


美月「何かしら。」


波流「私は別にどう言われてても構わないんだけど、あんま対立するようなことするとハブられちゃうよ?」


美月「はい?一体なんの…」


急に何を話し始めたかと思い

隣にいる先輩の顔を覗くと、

「分かるよね」と言わんばかりの

顔をしているではないか。

悲哀に満ちているようにも取れる、

その視線の先には

どう考えても私が映っている。

私と夕陽が一緒くたになって

先輩の…波流の瞳の中で揺れている。


対立するようなことするとハブられる。

それはきっとさっきのこと。

…さっき、あの4人組に

歯向かうようなことをしたから。

……。

…それを、何故波流が知っているのか。


美月「…聞いてたの?」


波流「偶々聞こえてきちゃって。」


美月「本当に偶々なの?」


波流「あー…美月ちゃん遅いなーって思って倉庫に行ったらばったり。」


美月「…私が早く戻ってたらよかったわね。」


波流「ん、そう?私は美月ちゃんがガツンと言ってくれて嬉しかったし、私の同い年のみんなも嬉しかったと思うよ。」


美月「…私はただ許せなかっただけよ。」


波流「優しいんだね。」


美月「そんなものじゃないわ。」


波流「そう?」


美月「えぇ。ただ自分の中にある正義を、正しさを曲げることが出来ないだけ。」


波流「それって1番かっこいいじゃん!」


美月「思ってもみない発想だわ。」


波流「えー。でもでも!私は美月ちゃんが味方してくれたって感じれてめっちゃ嬉しかった!」


私は誰かが喜ぶ為にやったわけではない。

何回そう口にしたって

嬉しかったとしか帰ってこない。

ありがとうとか、感謝してるだとか。

そんな言葉ばかり。


小学生の頃も正しさを振り翳した。

その時は失敗してしまい

それなりに避難は受けた。

だが、今回は逆だ。

何だかヒーローにでもなったような

気がしてしまって、

その度にこの感覚に慣れてはいけないと

脳内で何度も何度も諭す。

それでも慣れてしまって、

いつか感謝される嬉しさも

ありがたみも忘れてしまうのだ。


波流「あ、でも最初に言った通り、あんまりそれは違うって言うと輪に入りづらくなっちゃうからね。」


美月「心配しすぎよ。」


そう軽く遇らっても、

波流はにこにこと笑顔で隣を歩いた。

私よりも少しばかり

身長の高い波流の左手には

やはり絆創膏は貼られていなかった。

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