第13話 白の探し物②

 最初に犠牲になったのは、つい先程少女に足場にされた者だ。掴んでいた瓦礫で目を潰された。容赦なく潰された痛みと、血と闇で染まる視界に耐えきれず、潰された目を押さえて蹲る。


 その次は目を潰された仲間を見て腰を抜かした軍服の少年だった。恐怖のあまり声にならない悲鳴をあげていた半開きの口に石を投げ込まれた。投げ込まれた石は喉の奥に当たるほど強く投げ込まれたが、胃まで落ちることはなく喉を塞いだ。少年は呼吸の出来ない恐怖を抑えつけなんとか石を吐き出したのだ。


「……っ、怯むな、抑えろ!」


 誰かが叫んだ。その声があっけに取られていた軍服の集団を我に帰らせる。だが、武器を得た少女は逃げ回るだけではなくなった。むしろ先手を取って軍服の者達に攻撃を叩き込んでいく。


 ある者は瓦礫をナイフ代わりに首元を斬られ、ある者は最初の犠牲者と同じように目を潰され、ある者は瓦礫で足の小指を粉砕され、痛みにしゃがみ込む途中でさらに気管の当たりを力の限り突かれ、そしてまた別の者瓦礫で顎をぶん殴られた。


 少女は急所と言えるような場所ばかりを狙っていた。本人に急所という概念は無かったが、そこを攻撃することで相手の戦意を削ぐことや動きを鈍らせることがらできると知っていたのだ。


 なぜなら、少女は今までの環境でこれを学ばなければ生き残ることができなかったからだ。


 どこを殴られると動けなくなるか。どこを斬られると血が沢山出るか。どこ最優先で守らなければいけないか。日々与えられる痛みの中から、それこそ死にそうになりながらも学んでいった。だから少女は、どこを攻撃されたくないか自らの経験として嫌というほど、誰よりも知っていた。


 ほぼ一撃、多くても二撃三撃で軍服集団のほぼ半数を沈めた。それでも少女は逃げる様子はなかった。


(何が目的だ。追手を恐れていたのならもう十分なはずだ。何のためにまだ闘っている)


 ふと、少女の向かう先を見る。その先には逃げる意思も能力も無いと放っておいた黒髪の少女がいた。


「狙いは黒髪の救助か!」


 暴れ回る少女から離れた場所、つまり少女よりも花凛に近い位置にいた男は狙いを少女から花凛に変えた。  


 それに気付いた少女は、瓦礫を使い急所を攻撃して片っ端から軍服を着た者達の戦意喪失をさせていたが、集団を無視して花凛の方へ走り出した。


(やはり当たりだ。白髪は黒髪を見捨てられない!)


 距離の差で男の方が速く花凛の元へ辿り着いた。男は、気を失っている花凛を顔を抑えて持ち上げ、首筋に刀を当てた。


「言ったはずだ。抵抗を選ぶのならばそれなりの対応をさせてもらうと。大人しく捕まらないなら、こいつの首を斬る。」

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