第3話

次の日の朝。

今日は何か用事などは無いので、いつもよりも少し遅い時間に起きることにした。


「お、お兄さん……起きてください」


声が聞こえたと思ったら、ゆさゆさと俺の体が揺れる。

なんだろうと思い目を開けると、俺の上に亜夢が乗っていた。


「ふふっ、起きましたか?」

「えーと……なんで俺の上に?」

「こうした方が喜ぶと思ったんですけど……ダメでしたか?」

「喜ぶ喜ばないよりも……なんで下着姿なのかな?」


下着姿と言っても一応、薄い部屋着のようなものは着ているが……服としての役目を果たしていなかった。

下の方はパンツのみで、少し子供っぽいような下着……いやいや、そんなこと考えなくていいだろ。


「パンツ……ですか?」

「へっ?」

「パンツばっかり見るから、好きなのかなって……」


いやいや、変態じゃないんですけど。

慌てて目をそらし亜夢の顔を見ると、少し嬉しそうな顔をしているのはなぜだろうか。


「あの、パンツだけじゃなくて……こっちも見てくださいよ」


亜夢が指さしたのは、自分の胸だった。


「いや、あの……」

「……ちっちゃいのは嫌ですか?」


たしかに亜夢の胸は小さい。だけど、その身長ならそれが普通なんじゃないのか?


「……分かりました。じゃあ、お兄さんの好みを教えてください」

「き、急にどうした?」

「だって、ちっちゃいのは好きじゃないんですよね?」

「俺何も言ってないんだけど……」

「言わなくても分かります。男性って基本的にそうですから。話を戻して、お兄さんの好みはなんですか?」

「つまりタイプってこと?」

「そうです」


タイプねぇ……実際のところ、そんなことあんまり考えたことないんだけどな。


「ごめん。タイプとかそういうの、あんまり考えたことないんだよね」

「ということは、今のままでいいってことですか?」


今のままでいいってどういうこと?


「えーと、よくわからないけど、そういうことだと思うよ」


俺がそう言うと、亜夢は少しほっとしたような表情になった。


「私はまだ変わらなくて大丈夫……か」


何か一人で言っているが、それよりもこの状況を何とかしたいんだけど。


「あのさ、そろそろ降りてくれない?」

「どうしてですか?」

「どうしてって……着替えたりしないといけないから」

「……」


亜夢は無言で俺の顔を見る。

徐々に亜夢の表情が柔らかくなっていった。


「……どうしたの?」

「ああ、ごめんなさい。つい……」


亜夢はそう言って俺の上から降りてくれた。


「それじゃあ、リビングの方にいるので、後で来てください」


笑顔でそう言って俺の部屋から出て行った。


「ふぅ……ん?」


カーテンを開けようと思い体を起こすと、ベッドの隅の方に何かあるのが目に入った。


「……なるほど」


ベッドの隅には、少し大人っぽいパンツが落ちていた。




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能力がないただの雑魚。だけど、能力持ちの少女を拾った ティーノ @vixli23

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