第35話 ヘルヘイムの女王

 簡単な儀礼で終わる予定が思ったよりも大変なことに巻き込まれました。

 本来の予定では泉に浸かるのも形式的な物に過ぎず、わたしが光の力を宿して、癒しの魔法を使えるようになったのもイレギュラーなことだったみたい。


 森はお兄様がやりすぎたせいでかなり、荒れてしまったけれど、いずれ時が解決してくれることでしょう。

 それよりもあの『運命の泉』が一種のデートスポットのようになっているのが、頭痛の種でしてよ。


 どうやら、わたしとレオの旅の中でのアレコレに尾鰭が付いて、広がったらしく、たまに生温かい視線を投げかけられるのですわ。

 それであの泉に願いを込めて、金貨を投じると恋人がいない者は恋が叶い、恋人は永遠の愛を得られるの……って、何ですの、それ!

 あの泉に封じられていた風変わりな神はもういないのだから、何の御利益もなさそうなのですけど。


 そして、わたしは無事にこの地、ニブルヘイムの女王という地位に就くことになりました。

 就任式は中々に荘厳で厳粛な雰囲気の中、行われて勇者と勇者候補だった者も招いて行いましたわ。

 わたしもかなり緊張していたのですけど、レオの緊張度合いが見ていて微笑ましくて、気にならなくなりましたの。

 右足と右手を一緒に出して、歩いたり……もしかして、わざとわたしの緊張を解そうとしてくれたのかしら?


 これで正式に広大なニブルヘイムの地を統べる冥府の女王ヘルになったので以後、この地の名を今後、ヘルヘイムに改めるみたいですわ。

 自分の名が冠せられているみたいで何だか、むずがゆいのですけど!


 就任の祝いの宴にお祖父様がふらっと現れて、『神々の運命ラグナロクは遠のいた気がするのう』と上機嫌でしたのよ。

 何でもわたしがかなり、その要因となる因子を取り除いてしまったようなのですけど……。

 わたしが何かをしたのかしら?

 特に何かをしたという記憶がありませんけども!


 To Be Continued

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