第32話 愚かな兄
わたしが声を掛けた先にはレオの
恐るべき威力ですわ。
そして、レオがわたしとの約束を守って、ずっと前を向いて戦っていたことが分かります。
だから、今度はわたしがあなたを守ってみせるわ。
目を回したままのレオは木と仲良く、寝んねをしてますの。
きっと疲れていたのでしょう。
え? 大きなたんこぶが出来ている?
誰の仕業なのかしら?
酷いことをする方がいらっしゃいますのね。
「よくぞ、見破った」
ようやく、姿を現しましたわ。
あまりに時間がかかるので少々、現実逃避してましたけど。
「逆に聞きたいのですけど、あれで隠れていたつもりでして?」
多少、血が繋がっている
もはや生物としても成立していないちぐはぐな見た目。
レオが撃った
左腕は吹き飛んだのか、なくなっていました。
狼に似た気味の悪い頭部も左側頭部が損壊して、欠けていますわ。
それでも普通に動いて、会話をしているあたり、異常な能力を持っていることは認めましょう。
狼型の頭部を良く観察するとスコルであった名残り……。
つまり、そういう力の持ち主であるということ。
悍ましいですわ。
「お前のその光の力も! この地も! 全て、私のものとしよう。光栄に思うがいい。穢れた血を引きし、我が妹よ。だが、その前に……」
そこで言葉を止めたナリはわたしを上から下まで舐め回すように見てから、下卑た笑みを浮かべました。
「その美しい体をじっくりと堪能してから、喰らうのも悪くあるまい」
悍ましい。
同じ空気を吸うのも吐き気がするほどの悍ましさですわ。
どういう頭の中身をしているのかしら?
それとも、レオに吹き飛ばされて、まともに考えられなくなりましたの?
「わたしが黙ったままでやられると思ってますの?」
「抵抗するのか? その方が興に乗って面白い。何も出来ないまま、
「ばぁか」
つい小声で言ってしまいましたわ。
本当にどうしようもなく、愚かなんですもの。
自分の実力が分からない。
相手の実力も見極められない。
だから、レオに勝てなかったのにわたしに勝とうなんて、夢を見過ぎですわ。
でも、わたしが相手をする必要ないわ。
だって、もう……あなたの命運は尽きていましてよ?
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