第15話 弾丸財宝
明滅する照明。乾いた空気。広い通路。
瞬きをするように光る照明に時折照らされる地下通路の緑の床には道案内するように血痕が筆で描いた線のように伸びている。
臭いがする筈もないのに、鉄臭い気がしてならない。
大人が十人程度横に並んでも平気そうな程に広い通路は弾薬の搬入等をする為だろう。
足早に進んで見れば目の前には半開きの観音扉が私達を出迎えた。
大きく、扉には狭いのぞき窓もある。
扉の側にはパスワード入力をする為のパッドが壁に埋め込まれているが、見ただけで使い物にならなくなっているのが分かった。
パッドの下にある接続端子にぶら下がったままになっているオートハッキング用の端末
ポケットコンピュータに似た外見のそれは本来は非常時の緊急解錠用端末だった物だ。
今ではこうして何処かで入手しこういった文明崩壊前の施設に侵入するために使われている。
どんなに強固にロックしても、その業者が使っていたマスターキーが他人の手に渡ってしまえばこうしていとも簡単に侵入を許してしまう。
人工知能やデジタルに頼りすぎた結果といえるが、その御蔭で今私達は楽に文明崩壊前の軍事施設に入ることができるのだからハイテクに感謝しなければ。
「それ、持っていくの? 血塗れじゃん」
「キーボードに隙間がある訳じゃないし中には血が入ってないから使えるわ」
「せめて拭こうよ……」
ぶらりと垂れ下がったCtSを引っこ抜くとウエストバッグの空きにねじ込もうとしていたが、理緒に取り上げられてしまった。
短パンのポケットからハンカチを取り出すとCtSについた血を拭き取る。
パラパラと赤黒い粉となって血の塊が取り払われると理緒は改めて私に返してくれた。
「この先に、弾薬庫が……」
「そうね」
「地下に埋まってるから外観がわからない分ちょっと迫力に欠けるね」
「そんな事も入ったら言ってられなくなるわ。気を引き締めていくわよ」
理緒に注意を促しながら半開きの扉から頭だけを出して中を覗いてみた。
どうやらまだ弾薬庫の中というわけではないらしく、視界に広がったのは駐車場だった。
車両ごと運ぶ特大の大型エレベーターらしきものも見える。どうやら私達が通ってきた道以外にも出入り口があったようだが、地上が瓦礫と植物まみれになっている以上、エレベーターの上が何処とかは考えても仕方無さそうだ。
警備ロボットが巡回しているという様子もない。
そして相変わらず血の痕が床を這っている。
念には念を入れてチップスモークグレネードを放る。特殊な薄い煙を発生させ、その煙が含む塵によって赤外線センサーなどの非可視の物を可視化する。
ピンポン玉程度の大きさのそれを放って数秒、音もなくもくもくと上がる煙は薄く、煙の向こうもはっきり見える。つまりセンサーの類も無いということだ。
駐車場は地上の校舎のようにコンクリ打ちっぱなしのような飾り気のない壁と柱があるだけだ。
緑色の床に車両を誘導するための白線が引かれており、両端には軍用車両が見える。
その車には見覚えがあった。横浜で見た輸送車だ。恐らく此処に似た施設が他にもあって、この隠された弾薬庫から地上の基地に搬送する時に使われていたのだろう。
二人で駐車場を歩きながらコロナから貰っておいたデータをタブレットで確認する。
事務所に戻ってきたその日の夜に、仕事の内容を聞いたコロナから提供されたデータは文明崩壊前の軍の警備システムに関する資料だった。
「それは?」
冷たい空気に包まれ緊張しながら理緒はぼそりと小声で聞きながらタブレット画面を覗き込む。
表示されている画面には事務所にいるセバンのような人型アンドロイドのデータだ。
軍用に作られていて、セバンのような少年型でもなく成人男性をモデルにしているようで、その上日本の漫画文化に寄せたような可愛い顔づくりなんてのもしておらず、顔のある部分には大きな単眼カメラが備わっているのみ。
まるでサイクロプスだ。
「軍が使ってた兵器の情報よ。流石に兵隊はいないだろうけど、アイゴの仲間を殺したり足をふっ飛ばした警備システムは生きてる。情報があれば対処しやすいでしょ」
「そんなものいつの間に……コロナ?」
「サルベージした電子ペーパーの中に残っていた軍の装備に関するデータを引っこ抜いたんですって。料理のレシピとかのデータもあるって言ってたわ」
「えっ」
流石に食いついた理緒に私は微笑まずにいられなかった。
「帰ったら見せてもらいなさいよ」
「うん」
強く頷いてみせる理緒は軍用アンドロイドの欄を見て不思議そうに首を捻った。
「このページ、というかどのアンドロイドもそうだけど、なんで二足歩行自走砲なんて名前なの? 自走砲ってあれでしょ、あの、車でしょ」
「さあ……確か文明崩壊以前は人型アンドロイドの軍事利用は倫理観が問題視されてたとかそういうので、これはアンドロイドじゃなくて自走砲ですって言い張ってたとかそういうのじゃないかしら」
私の苦しい言い訳みたいな妄想に理緒はくすりと笑う。なにそれと言いながらくつくつと笑い声を我慢する理緒は場所が場所じゃなければ愛らしく和んでいた事だろう。
理緒は、うーんとふと考える素振りを見せて言う。
「案外、兵器として登録する際にロボットだとかそういう新しい枠作ると色々面倒だからって車両扱いにしちゃったとかだったりして。銃や砲を担げて自走できるからこれは自走砲! みたいな……」
「ありそうだからなんか嫌ね……」
「ね。ふふふ……」
今は亡き時代の日常に思いを馳せながら、私達の足は弾薬庫入り口に辿り着いた。
また大きな左右に開くタイプの鉄扉だが……。
「見事に壊されてるね……」
「向こう側に鉄扉が歪んで砕けてる。ダイナマイトでも使ったのかしら」
三世紀も放置されてた地下施設で爆発物を使って鉄扉を破壊する。老朽化した施設がそのまま崩落して閉じ込められたりするとか警戒しなかったのかしら。
そして理緒も気付いていたようだが敢えてスルーしているのか、破壊された扉の向こうで倒れている人影には何も言わない。
いや、寧ろ想像していて冷静に人影の周りを警戒しているのだろうか。
兎も角、入ってみなければ始まらない。
遂に私達は弾丸財宝の弾薬庫に足を踏み入れた。
******
弾薬庫の中は嫌に小綺麗だ。そして静かすぎる。
緑色の床はワックスが剥がれてまるで日焼けをした人の肌のように白い膜があちこちで捲れ上がっている。
十六畳程のエントランスの中央には石造りの受付があり、その奥の壁には横長で巨大な旭日が彫られた青銅の板が飾られている。
左右に廊下があり、施設の奥へ続いているみたいだが施設の案内板はあるだろうか……。
壁も天井も灰色で、ここもコンクリートが露出しており塗装もなく寒々しい印象を与える。
既に人はいないのだから人の気配があったらそれはそれで問題だが。
清掃用のロボットでも動いているのだろうか。
……等と現実逃避をしている場合ではない。弾薬庫に入って直ぐにエントランスのど真ん中で死んでいる男が一人。
ゆっくりと側に寄って死体を確認する。ボロボロのコートを纏った薄汚い男の死体が頭を出入り口の方へ向けてうつ伏せに倒れている。
逃げている最中に殺されたのだろう。
「背中に五つも銃で撃たれた痕があるわね……。弾はあまりブレてない、傷口同士が近いわ」
「ロボットの射撃精度が凄い優秀なのかな?」
「逃げている男の背中にそう同じところを撃ち抜けるとも思えないし、フルオートかもしれないわね」
「なるほど……」
顔を上げる。理緒は私が死体を調べている間に周囲を警戒してくれているようだ。
天井を見上げる。何かの配管が通路に沿って伸びている。電気やガスの類だろうが、それとは別に気になる物がその配管の側を走っていた。
「あれは、カーテンレール?」
天井のそれはオフィス等で見かけられるカーテンレールみたいな出っ張りだった。
窓のカーテンを張るためのものというよりは、動かせるパーテーションや病棟にある特定の患者を隔離するための抗菌カーテンを動かすようなやつだ。
弾薬庫の中でわざわざ通路を左右に仕切るような事があるのか、専門家じゃないので分からないが他の軍事施設では見ないものだと思い、それを観察していると何処からか物音が聞こえた。
何かが滑るような、物が空気を切るような音に似ている。
理緒はまだ気付いていないらしく、受付の台の裏からホロスティックを取り出していた。
棒状のパソコンみたいなもので、起動すると立体映像とモーションセンサーで空中にディスプレイとキーボードを出現させる物だ。
以前コロナも持っていたことがあったが文明崩壊前から既にあった物らしい。
それを理緒は手に取り、カウンターに備え付けられた充電器から外そうとしている所だった。
「理緒、何か来……」
私が声をかけようとした瞬間、ソレは現れた。
出入り口からカウンターを見て右側の通路からやってきたそれは円盤のような機械だった。
鈍い光を放つ黒いボディの円盤はさっき見ていたカーテンレールのようなものを伝って廊下の天井を滑りながらこっちへ向かってきたのだ。
その様子は円盤型の小さなモノレールとでも言うべきか。静かで、動く時に僅かな風を切る音だけ発しながらエントランスに入ってきた。
黒い円盤状のソレがエントランスに入ってくる頃には流石に理緒も気づき、手にしていたホロスティックをポケットに押し込むと肩に掛けたクロスボウを構えた。
次の瞬間だった――。
『侵入者あり。IDが検出されませんでした。侵入者あり。IDが検出されませんでした』
流暢な機械音声が何処からともなく部屋中に響き渡ると、次の瞬間に天井を滑ってやってきた分厚い円盤状の物体の床を向いている面の一部がスライドし、内蔵されていた物が姿を表す。
それを見た瞬間、反射的に私の体は動いていた。
内蔵されていたのは銃だ。
死体にできていた銃創から口径は小さいと思っていたがこれが警備システムということか……!
「理緒! 伏せて!」
「言われなくても……!」
私の声に理緒は直ぐに受付カウンターの影に姿を隠す。警備員がいる事を前提とした作りから、受付カウンターの方には弾道が通らない死角になっている筈だ。
しかし私はエントランスのド真ん中。
咄嗟に飛び退きながら銃を抜きつつ銃を抜く。
私が飛び退き出した瞬間に天井に張り付いた機関銃が理緒を見失うと真っ直ぐ私の方へ銃口を向ける。
ドドドドドッ――!
低い銃声が連続する。やはり高速連射する類の銃だ。
隠された軍事施設にある警備システムなだけあって警告も威嚇もない、いきなりの銃撃だ。
銃弾が甲高い音を立てながら床にぶつかっていく。
飛び去った後を弾丸がかすめ、つま先すれすれで弾が抜けていく。
フルオートというよりも五点バーストという感じか。
小さな図体で高速連射する機関銃となれば装弾数は少ない筈だ。
際限なく撃ちまくる仕様だったら直ぐに給弾しに引っ込まなければならなくなるから無駄弾を減らす為なのもあるだろう。
銃声が鳴り止むと続いて薬莢が床に散らばりカラリと音を立てる。
連射速度は相当なものだ。
「ステアー! 大丈夫!?」
「ええ、大丈夫!」
鉄扉を盾にしてなんとかあの円盤の穴を見つけられないかコロナから貰ったデータベースを確認する。
すると直ぐにアレの正体が分かった。
「ル式九粍自律型自走機関銃……これね」
画像つきのデータだったために直ぐに分かったそれは私の予想通り、装弾数が少ない人工知能を搭載した機関銃らしい。
本来は地面を滑走しながら歩兵の火力支援を行うレーザー兵器の予定だったが、長時間電力の補充無しで動く事とレーザーを撃つ電力と小型化を両立できなかった為に実弾兵器を内蔵した施設内警備ロボットになったらしい。
天井をカーテンレールを伝って移動しているのは閉所で床を滑られると味方からも邪魔扱いされるのと、あのレールから電力が供給されているかららしい。
つまりこのル式なんとかとかいうやつの弱点は、少ない装弾数と電気が通ってるレールということだ。
ソレだけ分かっていれば……。
「ステアー! もう一個来たよ! 反対の方からも! こっからじゃ撃てないしどうしよう!」
カウンターに隠れたまま理緒が泣きそうな声を上げている。
パニックには陥ってないようだが早くなんとかしなければまずい。
私がやれる事は……これしかない!
端末をポケットにねじ込んでTMPを二丁持って呼吸を整えた。
もたもたしていたら理緒の身が危ない。ならば、行くしかない!
扉の影から飛び出して、真正面、エントランスの天井に張り付く二つのル式を見上げ、即座に銃を構えた。
空気を割く銃声、サプレッサー付きでも静寂の中ではよく響く。
小さな図体しているという事は、その中はみっちり精密機器が詰まっているということだ。
そして私を敵と認識する反応速度は……遅い。
「……もう出れるわ」
理緒がカウンターから顔を出すとその視線は天井へ向けられる。
火花を散らせた黒い円盤はまるで潰れた空き缶みたいだった。
天井に敷かれたレールに死んでもしがみついたままのそれを見た後、理緒は意外だといいたげに私を見た。
「ありがとう。でもあんな機械までぶっ壊せるんだねソレ」
私が手にしたTMPを見て理緒は言う。
「今回は前払いの羽振りが良かったからね。昨日の内に
「なるほどそういう……」
理緒が納得したその時ふとエントランスの右手側通路から再び何かの音が近づいてくるのに気付いた。
冷静に理緒の唇にそっと指を当て、声を抑えさせる。
音はさっきと違う、何か足音のような。
「理緒、さっきカウンターで見つけた物、まだ持ってる?」
囁くように、小さく理緒に問う。
理緒はそれに黙って頷いた。
「そっちから奥へ行くわよ。足音を立てないようにね」
エントランスの左手側の通路を指差し、理緒を前にして私は後ろの足音を警戒しながら通路を進むことにした。
もたもたしてもいられない。できる限り足早に、しかし静かに歩みを進めた。
後ろからの足音が遠くなり追跡されている様子がなくなった辺りで前を行く理緒の側に寄る。
「さっきのホロスティック見せて」
「あ、うん。これは……地図みたいだね」
予想通り、エントランスのカウンターに仕舞っていた物だけあってそうだとは思っていた。
可能性としてはここを出入りする人間の名簿か、弾薬庫内部の案内図、搬入出の記録、そんな所だろう。
そして一番嬉しいものが出てくれた。
地図にはご丁寧に弾薬を保管しているであろう倉庫の場所と、弾の製造工場、警備室の場所まで表示されている。
特別入り組んだ構造でもなく、私達が歩いている通路をそのまま行けば警備室と倉庫には行けるようだ。
「このまま警備室にまず向かうわ。そして警戒状態を解除するか機能を停止させる」
「警備室まで行くのは良いとして、警備システムを止める方法はあるの?」
「ここは独自の発電装置とメンテナンス機能で文明崩壊前の姿を保っているのよ。部屋まで行ければ後は手動操作でなんとかなる筈」
「ステアーって機械にも強かったんだね」
意外と言いたげな声色の理緒。
だが実際の所、画面に出ている指示通りにタイピングしたりファイルを開いたりできる程度で、プログラミングだとかクラッキングの類は専門外。
パスワード入力が要求されたらアナログに残されたヒントを探すか、CtSや他のオートハッキングアプリ入りの端末使うしか手立てはない。
ハッキングアプリ入りの物なら事前に持ってきていたが、特別そういった物に対策がしてありそうな場所で通用するとは限らない。
CtSのみたいな文明崩壊前からある正式に使える鍵が手に入ったのは運が良かった。
「ね、ねえ。あれ……」
通路を曲がって直ぐ、地図には無かった防火扉が立ち塞がっていた。
しかし防火扉自体は開かずとも扉に付けられた人一人通れるような小さな扉がある。それには鍵はついていない。
「私が先に行くわ。理緒、後ろからなにか来るかもしれないからクロスボウ構えておいて」
「うん。後ろは任せて」
開けて即攻撃、なんてされたら理緒が危ない。ここは私がいかないと。
理緒を後ろに下げ、一人扉をくぐる。
くぐった先にあったのはまた長い通路だった。
目の前の通路はまた真っ直ぐ伸びており、五〇メートル先の突き当りから左右にまた通路が伸びている。
突き当りの壁には幾つもの案内板が右に左に何の部屋があるのか示している。
そして、目を引くのはその直線通路のド真ん中。
「派手に散らかしたわね……」
そこにあったのは人間の輪切りだ。横に三等分にされた死体が三つ転がって、どれがどの人間のものか分からないぐらいに乱雑に転がっている。
長く放置されていたのか腐臭が漂い、飛び散った血痕は池のように広がっているが乾いている。
綺麗に切断された断面から見るに凄まじく切れ味の良い何かで切断されたようだ。
「ステアー、入っていい?」
扉越しに理緒の声。
しかし答えはノーだ。
なぜなら、理緒が声をかけてきたと同時に目の前に物騒なものが現れたからだ。
一瞬のまばゆい光と共に現れたのは通路を塞ぐように現れた横に伸びるレーザーフェンス。
丁字路の手前で出現したそれはこの距離からでも熱さを感じる。
「……もう少し待ってて」
左右の壁から伸びる等間隔に並んだレーザーフェンスは演出なんかで使われるただの光線ではないのは明らかだ。
前に転がる肉塊がそれを証明してくれている。
人間を容易く溶断してしまう熱を持ったレーザーフェンスが現れた途端、通路の壁が音を立てて動き出す。
私の真横の壁まで伸びた壁の亀裂が割れるとレーザーフェンスが動き出す。こっちに突っ込んでくる……!
そして今まで鍵がかかってなかった筈の防火扉の小さい方の扉がガチリと嫌な音が鳴る。ロックされたようだ。
このままでは防火扉前まで突っ込んでくるレーザーで四つ目の人間の輪切りにされてしまう。
「ステアー! なんか来るよ! 足音がこっち来てる!」
後ろからもなにか来ているようだ。レーザーの作動に合わせてこっちに向かう仕組みだったのだろうか。
前にレーザーフェンス、後ろには謎の足音。
迷っている時間はない……!
「そっちは任せるわ。こっちもマズいみたい」
「えっ……! 大丈夫なの!?」
「理緒は自分の心配をしなさい!」
「……分かった!」
突っ込んでくるレーザーを見てなんとか掻い潜れないかと身構える。
しかし突っ込んできたレーザーフェンスを見ていたらその後ろにまたレーザーフェンスが出現する。
こっちに七〇キロ近い速度で突っ込んでくるレーザーの後ろから出てくる二重三重のレーザー。
考えている隙も無く近づいてきたそれを咄嗟にジャンプしつつ、体を水平にしてレーザーとレーザーの間を抜けてる。
背中と顔面に感じる一瞬の熱に脂汗が出る。
空中で床と水平になりながらの一回転。
一瞬でもタイミングが外れていたら足か頭かが持っていかれていただろうと思うとゾッとする。
しかし、足元から嫌な音がした。物が焼ける音のような、布が引き千切られるような嫌な音。
だがそれに気を取られている訳にもいかない。
最初のレーザーを避けきったその時、防火扉の向こうからガツンという鈍い音が聞こえた。
理緒がクロスボウで何かを撃ったようだ。
やはり何か人型の、セバンのようなアンドロイドがここには配備されていたのだろう。
だが心配している余裕は無い。
接近する第二波。
手で床をつき、逆立ちの体勢になって全身をバネにし、一気に足からフェンスの間に自分から飛び込んでいく。
今度は背後で剛毛なヒゲを剃るような音が一瞬聞こえると途端に体が軽くなる。
フェンスと散らばった死体を同時に飛び越える。
ステーキのようにカットされてデミグラスソースのようにぶち撒けられたソレらからはありもしない威圧感があった。
まるで地獄へお前も来いと引きずられるような感覚にいつもより重力を感じたが、結局それは自分自身が勝手に思い込んでいるだけの事。
自分の足を引っ張るのは、いつだって自分だ。
思い込みは空想の中だけのものではない。気持ちは現実に体を鈍らせる。
両足で着地すると体勢を立て直す暇もなく第三波。
「くっ……!」
手を前に突き出して、顔面から突っ込んでいく。
冗談じゃない。全くもって冗談じゃない。
なぜこんな所で私は曲芸まがいな事をしなければならない!
頭から突っ込んでギリギリの隙間を抜けて受け身を取りながら前転。
「ふぅ、切り抜けたかしら……」
ゆっくりと立ち上がって背後を見る。
「あ……」
地面には相変わらずの死体と、見慣れた布切れと、散乱する白金色の髪。
レーザーに持っていかれたらしい。
生まれてこの方一度も切ったことのない髪が、こんな所でこんな形で切ることになるとは思ってもいなかった。
感傷に浸りかけたその時だった。
ガスンッ――。
理緒のクロスボウの音。正確にはクロスボウの
一気に現実に引き戻された私は落ちているコートの切れ端だけを走りながら拾い上げ、ポケットへ捩じ込んで理緒の元へと扉を開けた。
「理緒、大丈夫?」
そこには扉を背にクロスボウを構える理緒と、その先で頭と胴体を矢で射られたアンドロイドがいた。
アンドロイドは銃を正面に向けたままで倒れていて銃は真っ直ぐ天井へ向けられている。
機能は停止しているように見えた。
「なんとか……ってどうしたのその髪!?」
私の顔を見るなり戦闘での緊張も何処へやら、この前の公園でブリガンド連中を殺った後の放心状態を見て心配をしていたが、杞憂だったらしい。
あれは特殊な状況だった。普通の状況ならば冷静に対処できるということか。
逞しくなったな、理緒。
「下手な理髪師がいてね。変な所からバッサリよ。オマケにコートの裾もカットされちゃったわ」
「折角綺麗だった長髪が……。怪我はしてない?」
「こっちのセリフよ。大丈夫なの?」
私の質問に理緒は口角を片方だけ上げながら親指を立ててみせた。
「頭を撃ち込んでも動こうとしたから胴体を狙ったらバッチリ。人間みたいに防弾チョッキなんて着ちゃってさ。
動かぬマネキンとなったアンドロイドを見る。
事務所にいる最新鋭のアンドロイド、セバンと比べてみると全く違う。
人に寄せたのはシルエットだけ。まるで乗り物の衝撃試験に使われるダミー人形みたいな見た目のボディに軍服とチョッキを着せただけ。
ご丁寧に人間と同じように防弾チョッキに人名の代わりに〝八〇年式自律型二足歩行自走砲〟と書かれた名札がつけられている。
こんなのでも、人は人の姿をしていれば人として扱ってしまうのだろう。
警備アンドロイドが手にした銃から弾だけを引き抜き、上がったままの腕をそっと下ろしてやる。
「貰えるものは貰ったわ。先に行きましょ」
「うん。……いよいよだね、ステアー」
「ええ、警備システムを止めるわ」
何が向かってこようが、私達を止められる敵はいない。
私は無意識に、人を頼ることを拒んでいたらしい。
私はやっと、誰かを認めることが、頼ることが出来るようになったらしい。
思い返せばこの仕事の間、いやソレ以前から、私はあらゆる人間を、心の底から信じれたことはなかった。
そうだ、依頼人だけじゃない。
蛭雲童も、バヨネットも、理緒もみんな、私の心の中のどこかで本当の仲間として認めること、頼ることを出来なかったみたい。
でも、やっと私は人に任す事を自分からできるようになったようだ。
理緒のおかげだ。
「……ありがとうね。理緒」
「え? なにが?」
「なんでもないわ。行きましょう。さっさと終わらせるわよ。この仕事を」
******
呆気なかった。
思ってみれば当然だ。警備システムの中枢である警備室は本来人間がいて監視と制御をする場所だ。
そんなところでロボットを交えてドンパチなんてしないだろう。
システムにしか従わないアンドロイドに武装をさせて、人の入るべき場所に配備などしない。
軍人の仕事を機械が奪えはしない。
だから警備室は無人で、邪魔するものは何もなかった。
CtSをコンソールに入れて、後は放っておくだけ。
手土産の弾薬箱を倉庫から引っこ抜いて、戻るだけだ。
「いよいよだね」
理緒の言葉にそうねと頷き、私達は弾薬庫に繋がる観音扉の左右の取っ手をそれぞれが掴み、同時に開いた。
目の前には一面の弾薬箱の並ぶ巨大倉庫……ではなかった。
横幅は通路より広い程度のやたら奥行きだけある細長い部屋に出た。
正面、奥の方にある壁にはまた大きな観音扉があり、その上には〝昇降機〟の文字がぼんやり光る。
右手側の長い壁は一面ガラスのようだがシャッターが下ろされていた。
暗い部屋にぼんやりと通路の明かりが差し込み、埃の臭いで鼻がむず痒い。
「電気つくかな……」
そう言って部屋に入り壁際に手を這わせる理緒。
照明は直ぐに点き、暗かった部屋の中が白くぼんやりとした光で満たされる。
目に入ったのはガラスの壁側に設置された操作パネル、モニターと言った機材だった。
理緒が真っ先に駆け寄り、私も後に続いた。
筐体にはめ込まれたキーボードとモニターを見ながら首を傾げている理緒の後ろ姿を見て、思わず頭を撫でる。
「うわっ、なに?」
「なにか見つけた?」
私の問いに理緒はうーんと唸る。
「なんかキーボードの他にもやたらボタンだのレバーだのあるし、文字は掠れてて読めないしで、ステアーは分かる?」
「軍事施設の探索は何度かしてるわ。場所によって規格を変えるとかはあまりないはず……」
と言いつつも軍事施設と単に言っても作られた年代で使われている機材が違うというのは普通にある。
だが警備システムをダウンさせる時に使った端末は見慣れた物だった。だからきっと大丈夫という自信はあった。
電源を入れる。
静かに立ち上がる制御システム、ブルーライトがカットされた液晶モニターがぼんやり私と理緒の顔を照らした。
警備システムを扱った時の物と同じものだった。これなら私でも操作できそうだった。
どうやら防火シャッターが目の前のガラスの奥に降ろされているようだった。
何らかの原因で倉庫内の火薬が爆発したりした際に外部に被害が出にくくするための物だろう。
私はモニターに表示されるマニュアルに従って防火シャッターと昇降機へ続く扉のロックを解除した。
重々しい音を立てながら上がっていく防火シャッターと、その隙間から差し込むまばゆい光。
私達は息を呑んでガラスの向こうを見つめた。
「こ、これが弾丸財宝の眠る場所……」
「……!」
管理室らしきこの部屋のぼんやりとした照明とは違い、照明自体を見れば目に焼き付きができそうな程の眩しさを放つガラスの向こうの光景は圧倒的と言わざるを得なかった。
眼下に広がる何百という金属質の白い棚。それが今いる場所よりも三階ほど地下にある床に敷き詰められ、頭上はここより二階近く高い場所にある天井、その近くまで伸びている。
棚を全部抜けば戦闘機でも格納できそうな位の広さであり、UFOキャッチャーのアームを大きくしたような物が天井のそこかしこにぶら下がっていた。
数え切れない数の棚の中には以前見た事ある物が敷き詰められているのが見えた。
「これ、全部……弾薬……?」
唖然としながら呟く理緒。
それはアイゴが持っていた長期保存用の弾薬箱だ。
威圧感のあるツヤ消し処理の施された黒い箱。それが米粒ぐらいに見える位奥の方にまで棚いっぱいに詰め込まれている。
液晶モニターにある搬出の文字をクリックしてみるとモニターにびっしりと棚に割り振られたイロハ順と番号が表示された。
そこにはその棚に何が入っており、保存状況がどうなっているのか等も表示されていて、倉庫内の殆どが正常な状態で保管されているようだ。
「……運び出すわよ。クレーンを動かさなくても、下の段の物は取れるはず」
「わかった! 行こう行こう!」
最下層にある棚の一部を搬出可能状態にさせて棚から出せるように操作すると私達は昇降機を使って倉庫の中へ入って行く。
昇降機という案内があった扉の方から倉庫の中へ入ってみれば、人が上り下りする為の長い階段とフォークリフトごと乗れるような大型の昇降機があった。
「地下にこんな物が隠されていたなんて……」
広大な倉庫の中は冷たく、息が白んだ。
そっと声に出した言葉も静寂に包まれた広い空間で反響して大きく聞こえた。
昇降機が動く音、私達の足音、その全てが空間の中に響いては余韻を残して消えていく。
「お仕事完了だね!」
嬉しさが弾けるような明るい声色で理緒が私の前をスキップしながら進む。
「まだよ。ちゃんと持って帰って、完了報告をするまでが仕事。良いわね?」
「はーい!」
そうだ。一応上では私達をクロカゼや亜光の部下が待っている。
ビャクライがまた決着をつけに、仕事を失敗させるために現れる可能性は高い。
これで終わりじゃない。
理緒が意気揚々と弾薬箱を二つ手にするのを見て一つを受け取る。
ふと高い天井を見上げ、左右に敷き詰められた弾薬箱を見る。
仕事の最後に良いものが見れた。そう思っていると理緒は突然私の袖を引っ張った。
「どうしたの?」
「あれ……」
理緒が指差した先には扉があった。
大きなスライド式の二枚扉の上には大きく製造工場の文字。
「本当に保管だけじゃなく、ここで製造もしていたのね」
扉の横には壁に埋め込まれたモニターと固定されたキーボードが見えた。
近寄って覗き込むと、そこには工場の現在の状態について表示されていた。
待機状態で稼働可能の文字。しかし素材不足の文字も見受けられた。
それはそうだ。三世紀の間ずっと工場を動かし続けられる素材も全部ここに揃っているわけはない。
しかし保存状態がよく、何時でも稼働可能な工場というだけで十分価値がある。
それこそここを手に入れてしまえば自分で金を生み出すことが出来る。しかも純正品だ。
出回っているハンドメイドの弾薬なんか比にならない弾薬がここでなら大量に作れるという事実に思わず手がゾクリと震えた。
「要求される質の良い素材が今の時代手に入るか分からないし、とりあえずここは放置ね。どの道今はどうしようもないし。……行きましょ」
「うん、わかった。でもこんなのが本当にあるなんてね」
「もしかしたら、色んな所にここみたいな場所が隠されているかもしれないわね」
そう言うと理緒は一際目を輝かせた。
手にした弾薬庫の重さなど感じないような軽やかなターンを決めながら微笑んだ。
「そうだったら良いなー! いつか自力で見つけて、そこに住んでみたりとか! 憧れちゃうなー」
「……シェルター型ヴィレッジでの暮らしに戻りたい?」
もしやと思って理緒に聞いてみたが理緒は笑顔を崩すこと無く答えた。
「別にー? ほら、なんかこう秘密基地って感じでかっこいいじゃん!」
「……そっか」
どうやら私の不安は気の所為、心配しすぎだったようだ。
******
一度通ったエントランス。
理緒と肩を並べて歩く足取りは行きよりも軽かった。
「凄かったね倉庫。上じゃなくて下に広がるだだっ広い空間なんて初めて見たよ」
「私もよ」
「それにそれに! あんな数の弾薬箱も! 依頼人は持てるだけ持ってて良いって言ってたけどあんだけあったら僕達が車の荷台に積めるだけ積んでも文句言われなさそうだよね!」
「あれは、数万箱じゃきかないわね。あれだけで渋谷ヴィレッジの警備隊全員が正規品の弾だけ使ってもひと月は戦い続けられそうね」
「そんなに戦いっぱなしになるような状況ごめんだけどねー。絶対手伝わされるし」
「フフッ、そうね」
顔を合わせてお互いに笑みを向け合う。
この仕事が終わったら、しばらく事務所を閉じて理緒達と過ごしても良いかもしれない。
そんな事を思いながら弾薬庫を出て地下駐車場に出る。
地下駐車場は冷たい空気を漂わせている。
弾薬庫内もそうだったがより冷たい空気が漂っていた。
それは実際に温度が下がっている以外にも原因があった。
その原因が駐車場のド真ん中で待っていた。
「仕事中に談笑とは余裕ですなぁストレンジ・サバイバーのお二人さん?」
「百地!? なんでこんな所にいる!!」
理緒が百地と呼ぶ少年、クロカゼだ。
ビャクライを裏切ってまで私達に弾薬庫攻略を任せておいてなぜ今更こんな所にいる?
理緒の疑問と全く同じ事を思ったがそれ以上に、私はクロカゼの放つドス黒い殺気の方が気になっていた。
「その手にあるのは弾薬庫の……仕事はちゃんと済ませたようだな? ご苦労ご苦労」
「全部終わった後で何のこのこ来やがったんだ」
「理緒やめなさい。仕事は果たしたわ。これから亜光の所に報告しに行くけれど貴方はどうする?」
噛みつきそうになっている理緒を制止して前に出るとクロカゼはニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
ブリガンドが獲物を前に見せるような、ゲスな笑みだ。
「オレ気が変わってさぁ、やっぱお前らここで殺すわ」
ヘラヘラした口調で突然大苦無を構えだす。
それに合わせこちらも片手が塞がっているもののTMPを一挺抜く。
「どういうつもり?」
私が睨みつけながら問うも、クロカゼは人をナメたような視線を向けて表情を嘲笑で歪ませる。
だが首から下、苦無を構える姿は本気そのもの。
腰を低くし、片手で大苦無を逆手に持ち、空いた手を後ろの腰に回してこっちに見えないようにしている。
何をしてくるか分からない。一触即発だ。
「仕事が済んだ傭兵にもう用は無い。お前達は弾薬庫の警備システムにぶっ殺されましたって報告してやっから安心してここで
「本気で言ってるの?」
「本気も本気、大真面目だよこっちはね……クククッ」
なんて子なんだろう。いずれ痛い目を見るだろうと思っていたが、その痛い目を私が直接見せる羽目になるとは思わなかった。
ここで受けて立ってもいい。けれど私は一つだけ確認しなくてはならない。
「それは、亜光の指示だったりするのかしら?」
その質問にクロカゼは声を出して笑ってみせた。
私は亜光を疑っているという事を見透かしたのだろう。
クロカゼは少しばかり悩む素振りを見せたがゆっくり口を開く。
「そんな指示なんて無いね。ただまあ、お前らが弾薬庫に向かったタイミングで連絡はしたからここに向かってるかもね。あの人心配性だから、自分から足を運ばないと気が済まないんだよ。肝が小せえよなぁ……ハハハッ!」
「そう、なら私から亜光に報告しておくわ――」
聞きたいことは聞いた。ならばもう言うことは無い。
TMPを構えた。
「――貴方は私達に負担をかけまいと加勢に来たけど、不幸にも弾薬庫で倒れたってね」
銃口を向けてもピクリとも動くこと無く、臆する様子を見せないクロカゼ。
口が達者なだけあって度胸もあるようだ。
流石は教会の元暗殺者というべきか……。
いつ殺り合ってもおかしくない状況。
いつでも来い……クロカゼ!
「待った」
声は背後からだった。
「理緒……?」
「あぁん?」
理緒が弾薬箱を床に置くとゆっくりと私の前に出る。
その手にはクロスボウはない。
私の前に立ち、背を向ける理緒は手にしていたナイフを構えた。
「ステアー、
「はぁ? ふざけてんのか? 二人共ここで終わりって言ってんだろ」
クロカゼの言葉に理緒は含み笑いをしながら言い放った言葉は意外なものだった。
「お前、僕と決着つけたいだけなんだろ。僕を殺したいだけなんだろ。ステアーは関係ない。ここで決着をつけようぜ、百地」
「その名で呼ぶなって言ってんだろうが……!」
声を震わせて怒るクロカゼ。余程過去の事を払拭したいと見える。
理緒は挑発をしている。ハッキリ言って、二人がかりの方が退けるのは簡単だ。
一体何を考えている……?
「それとも、
「なんだと……。どこまでオレを、オレをコケにするつもりだ……! 理緒ぉ!!」
クロカゼがとうとう地を蹴り飛びかかる。
私の目の前には理緒がいる。退けてからクロカゼを撃つか? そんな事を考えている暇もない。
理緒の肩に手を伸ばす。
しかし理緒は前に出て、私の手は空を掴んだ。
前に出た理緒はクロカゼの苦無をナイフで受け止め、再び二人は距離を取る。
「クククッ……。女はついでだと思ったがやっぱやめだ。そっちがその気なら乗ってやるよ……おい女! 弾薬箱持ってさっさと消え失せろ! 不意打ちなんて考えるなよ。そっちはオレの領分、仕掛けようとしたら分かるんだからな」
「ステアー、行ってよ。僕はここで僕のするべき事をする」
クロカゼを牽制しながら言う理緒の声は今までになく強気で、頼もしさすら感じられた。
私が知らない間に、理緒はずっと――。
こんな状況なのに、どうして笑みが溢れるのだろう。
銃を仕舞って、理緒の持っていた弾薬箱を持つ。
両手が弾薬箱で塞がった訳だが、クロカゼはそんな私を狙う素振りはない。
その目は完全に理緒に的を絞っている。まるで私なんか見えていないかのようだ。
「いいの? 理緒」
「信じてよ」
力強い一言。それを聞いて私は理緒の背中に頷いた。
もう心配しない。する必要もない。
「……任せたわ。上で待ってる」
「うん。直ぐに行く」
両手に弾薬箱を持って、私は理緒とクロカゼを背に地上へ向かう。
私の姿が消えるまではお互い睨み合ったままだが、このまま行けば二人はどっちかが死ぬまで戦うだろう。
だがそれで良い。理緒は必ず勝って上がってくる。
両手にしっかりとした重みを感じながら、一足先に弾薬庫を後にした。
今までにない晴れ晴れとした気持ちで――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます