第102話 魔王との決戦

ついに魔王との決戦の日が来た。


「エルネス、お前に『リフレクションリング』をあげとくよ、これは魔法が得意な【グラビティ】で我々の動きを押さえ込もうとしても、それを魔王に返してしまう『アーティファクト』だ。それと【転移】で逃げられないために、まずあいつを見つけたら俺の亜空間の世界に引き摺り込んで転移が効かないようにして、二人で魔王を倒す、間違っても一人でやつけようと思うなよ、必ずと止めはエルネスにやって貰うからな!」


「わかったのじゃ、ジンパパ。パパの言う通りにすれば必ず勝てるのじゃな!」


「ああ、俺の方がアイツより魔力は数段上だし、魔法の種類も数段多く持っているから大丈夫だ。俺を信じてお父様との約束を果たそうじゃないか!」


ジンは3魔女達に、『リフレクションリング』、『魔力増幅指輪』を常に発動させてまた【シールド】も発動させて戦うように指示をしておいた。


「それじゃ、朝食を終えたら『空飛ぶ車』2台でノースアイランドに飛ぶぞ」ジンは皆を鼓舞するように雄叫びをあげた。


「おぉ〜!」と30名のエルネスティーネの信頼できる魔族騎士団が雄叫びをあげて呼応した。

ジンは『具現の水晶』を取り出し、魔力を流し込んでもう1台の『空飛ぶ車』を作りだし、ドールが運転をする。


ゲルハルトと30名の魔族騎士団が乗り込み、ブラックアイランドのレーピアの居城から浮揚した。


続いてジンとヒューイ、エルネスティーネ、3人の魔女イリーナ、イザベラ、イリアが乗り込みドールたちが乗っている『空飛ぶ車』を追い越して先に進む。


目指すはブラックアイランドの50キロ北方にいるノースアイランドの魔王エルケハルトのいる魔王城だ。

『空飛ぶ車』は数分で魔王城迄2キロの地点迄来て、着陸し地上を走り始め城を囲む結界を魔導砲で破壊して、遂に開戦の火蓋が切って落とされた。


ドールとゲルハルト、30人の魔族騎士団と3人の魔女たちは先ず相手の兵士達を『魔力増幅指輪』を最大解放して、イリーナは【火炎地獄(インフェルノ)】をイザベラは【エアカッター10連発】をイリアは【土石流地獄】を放って一気に数十人の敵対魔族を殲滅する。


続いて、ドールとヒューイが城を守り固めていた数十人を『雷剣』と『神龍剣』で首を切り落とし、相手に魔法を発動させる時間も与えず蹂躙していく。

ゲルハルトは城の城門の前で剣を構えている順位5位のエゲブレヒトと対峙した。


「久しぶりですな、ゲルハルト殿。エルケハルト様に従うことに決めたにしては随分派手なお出ましじゃないですか」


「今日エルネスティーネ様がお父上の無念を晴らせる素晴らしい日を迎えたのだ。

お前の仲間のゲアハルトもクヌートルも我が友人ジン殿によって殲滅された。お主もエルケハルトとともに私が成敗してくれよう」


「わはははは、何をほざくかといえばエルケハルト様があんな小娘と人族にやられるわけがなかろう、お前を倒して儂が1位の座についてやる」


「お主に私が倒せるかな?」


「あんな餓鬼の小娘のお守りを続けていた奴に俺が負けるわけがなかろう」

エゲブレヒトは殺人光線を手から放ったがゲルハルトが剣でそれを弾き飛ばし、いっきに間合いを詰めて斬りかかる。


エゲブレヒトが幻影を本体を含めて10体作り出して、ゲルハルトに襲いかかるがヒューイの息の一息で一瞬にして幻影が霧散してしまう。


「ヒューイ殿かたじけないでござる」


幻影が消えた瞬間本体に詰めていたゲルハルトの剣がエゲブレヒトの片腕を斬り落とした。


直ぐに再生を試みる、エゲブレヒト。

しかしそれを許さないスピードで、片腕、両足、そして胴を瞬時に切り裂いて行くゲルハルト。


そして遂に首を斬り落とし、落とした頭にさらに上段より剣を一閃して、頭蓋骨からかち割り、エゲブレヒトの脳漿が飛び散って仕留めた。


残りの敵魔族の兵隊を見ると、ドールやゲルハルトの部下の魔族騎士団が既に殆どを倒して、残る敵兵は数人となって最後はイリーナの【火炎地獄】の魔法によって灰になるところだった。


一方ジンとエルネスティーネは城の中に城門を飛び越えて入り込み、数人いる魔族兵をジンが『魔拳銃』で瞬殺していき、魔王エルケハルトがいると思われるところにたどり着いた。


「エルネス、俺が先に扉を開ける、『リフレクションリング』を発動しておけ」と言ってジンがゆっくりと扉を開ける。


20メートル先の玉座に座る魔王エルケハルトがダークビームを放ったが、ジンが『煌剣』で切り裂いて消した。


「エルネス、奴を『亜空間』に飛ばして俺たちも入るぞ」

ジンは魔王が【転移】できないようにジンが作り出した『亜空間』の中に閉じ込め、ジンとエルネスもその中に入った。


「エルネスティーネ、そんなに父の元に行きたいのか?痛みもなく儂の【グラビティ】で潰してくれる」と得意の魔法を放つが、彼女の首にある『リフレクションリング』が魔法のグラビティをそのまま魔王に跳ね返した。


「ななんと、儂の魔法を跳ね返しおったな?きさま『アーティファクト』の魔道具を手に入れたな?弱い人族の手を借りなければ儂と立ち会えぬとは笑ってしまうわ」


「おい、魔王のおっさんよ!俺は人間だがお前さんが仕掛けて来た10数体の魔族は悉く俺が倒した、昨夜も2体居なくなっただろ?後はお前が居なくなれば平和になるのでエルネスに倒されろや」


「ぐわぁははは!何を言うかと思ったら人間風情が部下を倒せたからといっていい気にならぬことじゃな、儂を倒すことは不可能じゃぞ!やって見るがよい」


「儂のシールドは誰にも破れぬ、儂からはお前達二人をじっくりとなぶりごろしにしてやる」


「そうか?それじゃその強固なシールドとやらを無くしてやるよ」

ジンは『煌剣』を構え、馬庭念流秘太刀『兜割』の構えから一気に煌剣を振り下ろすと魔王の強力なシールドが左右に別れ霧散した。


「きき貴様は何をした!絶対に破壊などされない強力なシールドを・・・」


「エルネス、シールドは無くなったぞ。思う存分攻撃しろ!ただし魔法は跳ね返すが物理攻撃だけ注意しろよ!」


「わかったのじゃ、【グラビティ】」と魔王に対して彼女も得意の魔法を放ち、魔王が跪いた瞬間を逃さず斬りかかる。


魔王も動きを封じられながらも、わずかに転移でその斬撃を防ぐ。

エルネスもそれを察知して居たかのように転移したところに更に強力な【ファイアランス】を放った。


魔王が【ディスペル】で霧散させるのを読んでエルネスは剣を一閃させて片腕を切り取った。


「グウォ!」


「小娘の分際で儂の体に傷をつけたな!許さん、許さんゆるさんぞー!」


「父上をだまし討ちした卑怯者が何を言うか!許さないのは妾の方じゃ、死んで父に詫びろ、【グラビティ】、【グラビティ】、グラビティ・・・・」とエルネスは彼女の得意魔法を続けざまに多重掛けして魔王を潰しにかかった。


魔王も必死でシールドを掛けてそれを防ぐが、ジンがその都度【特定ディスペル】を掛けて、魔王のシールドだけをディスペルする魔法を援護射撃で放ち、魔王が動けなくなりつつあるところをエルネスティーネの強力な斬撃が魔王の首を襲った。


魔王は必死に剣でそれを防ごうとするが重力魔法の多重掛けでエルネスの剣によって魔王の剣が弾き飛ばされ首から胴が離れて首は多重掛けグラビティ〜によってグシャっと潰れ脳漿が亜空間に飛んだ。


「エルネス、良くやった!お前が父上様の仇を討ったぞ」


「父上!やりましたのじゃ!ジンパパの助けを受けながら父上の仇を打ちましたのじゃ」


ジンとエルネスティーネは巨大な魔王の魔力が霧散して消えた王宮から出て来てヒューイ達がいた城門に現れ、


「我が父の仇”魔族の裏切り者エルケハルトを倒したのじゃ。これからは人族、獣人族達と手を携えて豊かな平和な魔族国を作るのじゃ」


ゲルハルト以下魔族騎士団がエルネスに跪いて泣いている。


「爺や、長い間苦労を掛けたのじゃ。妾のような者を良く支えてくれたのじゃ。これからも皆とともによろしくでごじゃる」と労いの言葉をかけた。


「魔王様、もったいなきお言葉、私ゲルハルト及び30名の騎士団は魔王様エルネスティーネ様に終生忠誠を誓います。先代の大魔王ヨーゼフ様もお喜びのことと存じます」


「それじゃ、エルネス、この禍々しい魔王城は消し去って空に浮いているお城を地上におろしてレーピアの地に城を構えるかゲルハルト殿と相談だな」


ジンは『空飛ぶ車』2台で全員がレーピアの空に浮かぶ城に戻って来た。


「ジンパパ、本当にありがとうございますじゃ、パパが横から助けてくれなんだらあやつを倒せなかった。全てパパのおかげですじゃ」


「お前の父上に頼まれたしな、お父上に報告してこい」


「はいですじゃ」


エルネスは今まで開かなかった父の書斎の扉をジンが開けてくれて、再び父の書斎の扉を開けた。


父の懐かしい匂いが立ち込めている。


父と母が描かれたスリーショットの画像を手に取り、「父上、母様ついに邪悪なエルケハルトを倒しました、これからは魔族だけでなくこの世界に生きる者達と手を携えて平和で豊かな国をつくりますじゃ」


画像写真を机に戻しふと中庭を見ると、父と母のお墓が並んでいるのを発見した。

エルネスティーネは小走りに中庭に出て父、母のお墓に手を合わせていた。

涙が落ちると母の墓から何と芽が出て、それが伸びていき、一輪の綺麗な薄桃色の花が咲き、エルネスに語りかけるようにいい香り、どこかでエルネスが嗅いだ香りを届けてくれた。


ひとしきり泣いたエルネスは父、母の墓前に挨拶をして皆が待つ食堂へと向かうのだった。


一方ジンはイリーナ達に労いのケーキと紅茶を出してヒューイと5人、客間で寛いで昼食の準備が整うまで待って居た。


「ジン様、昼食の用意が出来ました」と魔族の侍女が呼びに来た。


大きな食堂には30名の騎士団、そしてゲルハルトそれにエルネスティーネが顔を揃えて待って居た。


「ジンパパは妾の隣じゃ、反対側の隣がヒューイお姉さまじゃ」


イリーナ達3魔女はゲルハルトの対面に座る格好で座った。


「きょうは新たな魔族国家の誕生とともに、人族、獣人族、魔族が今後ともに手を携えてこの世界を反映に導くよう魔王様エルネスティーネ様とともに、かんぱーい」とゲルハルトが乾杯の音頭を取り皆で乾杯して食事を始めた。


「エルネス、魔族国家の王都はどこに置くのだ?」とジンが聞くと


「この海辺の町のレーピアの地に決めた。明日、地上に城を下ろし、錨の鎖も格納して街を整備しようと思うのじゃ」


「細かいことは爺やが全土にお触れを出して整備していくことになる。新たな法律も制定しないとならぬから・・・、妾に変わらぬ忠誠を誓ってくれた30名の騎士団から大臣や近衛騎士団長を選んで、30名は手厚く扱う所存であるのじゃ」


「それじゃ、この城と俺達がいるセモアの家に『転移柱』を設置して何か有れば直ぐに転移出来るようにして置くか」


「パパはそんなこともできるのでござるじゃか?」


「エルネス、今度ゲルハルトにもう少し言葉を教えてもらえ?何だか少しだがおかしいぞ!」


「うん?妾は感じぬが、おかしいでござるじゃか?」


「とりあえず、我々はレンブラント王国に戻り王様に魔族との関係改善の話をして

全国のギルドにも話を流さないといかんな」


「食事が終わったら我々は国に戻り王様に話をして置くから一度エルネスが我が国に来て王様と打ち合わせしてくれないか?」


「わかったのじゃ」


ジンはエルネスティーネに『遠距離通話器』を渡し、


「連絡はこれで取り合おう、あとは『転移柱』で我が家にくればいいからな」


昼食を終えてジンファミリーは一旦セモアに帰ることになった。

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