第101話 ジンと前魔王との邂逅
ジン達一行は魔王と直接対決すべく魔王の居城に乗り込むつもりで先ずは<タブレット>の【GOD】に検索してみると、何と魔王が二人いて、先代の大魔王ヨーゼフは人族、獣人族と共存共栄しようと努力していた魔王で、残念にも部下のエルケハルトの奸計にあい命を落としてしまった。
ヨーゼフの一人娘エルネスティーネは父の仇を打とうと爺やこと、ゲルハルトと共に真の魔王城にこもり、その機会を窺っていたのだ!
ジン達とゲルハルトは協力して今の魔王、エルケハルトを倒すべく、ゲルハルトから情報を教えてもらいながら夕食を共にしていた。
お茶を飲みながらジンが、
「ちょっとトイレに行ってくる」と席を外し、【サーチ】を掛けてエルネスティーネの場所を探った。
彼女は或る部屋の前で蹲って動かないで泣いて居た。
ジンは皆にトイレと言って、実はエルネスティーネが皆との食事も拒絶して『人族の助けなど無しでエルケハルトを倒してみせる』と言ってジンたちの前から姿を消してから気になって居たのだ。
ジンは基本女性に甘い!
というか、人間だけでなく、獣人族、魔族を問わず女性にはとても優しい男性なのだ。
エルネスティーネは未だ子供だ。
その子供が父の仇である巨大な力を持つ現代の魔王を打てるわけがない!
ジンは彼女がいる扉の所は直ぐわかった。
巨大な魔力が流れ出て居る部屋の前の扉にうずくまり、しゃくりあげて居る。
目を赤くして、ずっと泣き続けて居たのだろう・・・。
ジンが優しく「腹が空かないのか?一緒に飯を食おうや!」と声をかけた。
「嫌じゃ!妾は人族などの助けがなくても爺と父上の仇をとるのじゃ」
「そうか、でも少しだけ俺たちにも手助けさせてくれないか?エルケハルトの部下達に随分仲間の冒険者が殺されているんだ!」
「それは人族が弱いからだ!妾の知ったことか」
「そうか?なら君の偉大なお父様は弱かったのか?違うだろう?」
「君の後ろの部屋からは強烈な魔力が流れ出て居るが何故か優しさがある気がするが、もしかしてヨーゼフ殿の書斎だった部屋かな?」
「何故お前にわかるのだ?」
「だって、とても優しげな魔力だもの」とジン。
エルネスティーネの頬が少し緩んだ・・・、
「父上が大切にして居た物がある部屋だが、鍵が掛かって開かぬのじゃ、爺達と色々城にある全ての鍵を使ったが開かぬ。魔法で扉を破壊しようとしても壊れないのじゃ」
「どれ、俺が開けてやろう」
「人間のお前が開けれる訳がなかろう」
ジンは【次元ストレージ】から『万能鍵』を取り出して、鍵穴に差し込み”カチャ”と音がして開かずの扉が開いた。
「えええええ・・、開いたぞ!お主凄いではないか」
「エルネス、入ってみよう」
「うん!」
中に入ると、大きな机に今でいう写真の様な精巧な絵が置かれて居る。
優しそうに微笑みをたたえたエルネスに似たとても美しい女性が、おそらくエルネスの1歳位の時の画像だろう、赤ん坊を抱いている。
その肩を抱いて寄り添って居る男性が前魔王のヨーゼフ殿だろう。
威厳があるがとても優しさをたたえた、画像からだけでも人柄が察せられる。
「いい親父だっただろう!」とジン。
「父上は最高だったぞ、母上は妾は覚えて居ないのじゃ」と彼女がそのスリーショットの画像を手に持った時に画像が光輝きだした。
「エルネス、離れろ!」とジンが叫ぶ。
まばゆい光が一つの形を形成しだし、大魔王ヨーゼフの姿に変わった!
「父上、父上・・・!」
「儂のエルネスティーネ、会いたかったぞ!」
「私もです父上」抱きしめようとするが光で描かれたフォトグラフの様にエルネスには抱きつけない。
「エルネスティーネ、私には限られた時間しかない。大事なことを伝える」
「そこの御仁、名はなんと申されるか?」
「私はジン、人族の者です、ヨーゼフ殿ですね?」
「私は魔族も心を開けばわかり合えると思い、エルケハルトにもそう接してきたが、彼は全く聞き入れてくれなんだ、会談と申して罠にはめられこの身はこの様な形でしか娘にも会えぬようになってしもうた。ジン殿お主ならエルケハルトの野望を阻止できる。儂以上の魔力と神と同等のそのお力を是非この世界のために、娘と共にエルケハルトを倒してくだされ」
「元よりそのつもりでおります、ご安心ください」
「エルネスティーネ、お前の母は人族の聖女様だったお方だぞ。儂と恋をしてお前が生まれた。これからは人族、獣人族と手を携えてジン殿と共にこの世界をよくしていくのじゃ、わかったな」
「父上、私の母が聖女?優しかった母が人族の聖女なの?」
「そうだ、人族も獣人族も魔族もいい奴もいるし、悪い輩もいる。それが世の中だ。だがお前は儂と聖女マリアンヌの娘だ!誰にでも優しく魔族として立派にまとめられると信じておる、頼んだぞ!そろそろ時間になった様だ、ジン殿、娘をくれぐれもお頼み申します」
「しかと任されよ!必ずや魔族と共に平和な世界にしてみせますぞ」
「さらばじゃ、娘よ・・・」光は徐々に霧の様になって消えて行った。
「エルネスティーネ、行くぞ!父上の言葉を聞いただろう?二人でエルケハルトを倒してこの世界を住みよい平和な世界にするために俺たち二人でやらなければならない」
「はい!ジン、一つお願いがある。妾のパパになってくれ」
「なんだぁ!!!そんな話はエルケハルトを倒した後だ。まずはお前は腹ごしらえだ」
「はい、パパ」
エルネスティーネは憑き物が取れた様な清々しさでジンの後ろ姿を追った。
「ジン、何して居たの?長いトイレねぇー」とイザベラ。
「ジン君、話はついたの」とイリーナ。
「ああ、先代の魔王、ヨーゼフ殿に託された」
「ジン殿はあの開かずの扉を開けれたのですか?」とゲルハルドが驚いて聞いてきた。
横で夕食をぱくつきながら「そうじゃぞ、妾も開けられぬあの扉をジンパパが簡単に開けて父上に合わせてくれた。爺は母上が聖女様だと知って居たのか?」
「はい、ヨーゼフ様とマリアンヌ様は恋に落ち、結婚してエルネスティーネ様が御生れになり、貴女が1歳半頃にマリアンヌ様は流行病で亡くなられてしまったのです」
「画像を見る限り素敵な母上だったぞ!」
「エルネスに似て居たな」とジン。
「ジン君、結婚もしないうちにヒューイちゃんにエルネスティーネちゃんと二人の娘ができてしまったわね」とイリーナさんが笑いながら言う。
「さて、明日いよいよエルケハルトのいる、ブラックアイランドの城に向かうぞ」
「そうね、きょうはこのお城でゆっくり休ませてもらってから、行きましょう?」とイリーナ。
「その前に俺はエルケハルトの兵隊を少し減らして見るよ、将軍クラスも消せれば戦いが楽だからね」
そう言うと、ジンは<タブレット>を取り出し【GOD】に『ブラックアイランドのエルケハルト魔王の兵士達の居所を表示』と打ち込みenterキーをポチった。
<タブレット>の液晶画面には城の周りと内部が表示され、赤い点が塊となって現れている。
ジンは表示に触れながら【イレージング】と呟き、魔力を流し込んだ。
赤い塊がゴソっと消えていく。
城の外周の赤い点を全て消し去り、内部の赤い表示が個々の点になるまで消して行く。
「少し消しすぎたかな?」とジン。
「私達魔女にも少しは仕事させてよね」とイザベラ。
「まだ武将3人がこの大きな点で光っている奴らだと思うぞ」
と言って一人を消しにかかった。
しばらく赤い表示が揺れながら輪郭がぼやけ始め最後には消えて無くなった。
<タブレット>の液晶画面に『魔族高位2位のクルトの死亡を確認しました』と表示された。
「あれ?先にクルトとか言う奴を消してしまったよ、やけに時間が掛かるとおもったら将軍の中で一番強い奴だったか」
「やはりこの距離からではかなり時間が掛かるが、3人のうち一人は消したから残りは二人だな!」
「もう一人ぐらい消して、ヒューイとイリーナさん達で魔王の部下を殲滅できれば戦いはらくだろ?」
ジンは<タブレット>の【GOD】に『高位3位のヨーナスの居場所を記せ』と書いてenterキーをクリックした。
城の中でも魔王のいる部屋の入り口に大きく点滅する赤点が表示された。
ジンはその点を指で触り魔力を流し込み【イレージング】と呟くと先ほどと同様に赤い点滅は点滅が止まり、赤い周りが次第にグラデュエーションになり薄くなって行き最後は完全に消えた。
『魔族順位3位のヨーナスの死亡を確認しました』とテロップが表示された。
「これで武将3名のうち2名は既に処理できたな、残るは5位はゲルハルト殿が倒すと言っていたから、ヒューイとドールは雑魚の兵隊をイリーナさん達と殲滅してくれるかな?」
「なんだぁーパパが消してしまったから、武将と戦う機会がないじゃない」とヒューイがふくれている。
「そう言うなよ、戦いに油断は禁物だぞ!兵隊達だって一応魔族だ。魔力は人間の10倍は有ると思って戦ってくれよな。それとイリーナさん達3魔女は必ず『リフレクションリング』と【シールド】をして戦うことをお願いしますよ」
「了解よ、あとは魔王エルケハルトをジン君とエルネスティーネちゃんが頑張って倒すだけよ、ジン君こそ頼むわよ」
「ところでこちらの魔族さんの兵隊30名はどうやって運ぶの?」とイザベラ。
「それは簡単だよ、『具現の水晶』に『空飛ぶ車』になってもらってゲルハルド殿と兵隊30名を乗せて我々の後についてきてもらうよ」
「運転は?」とイザベラ。
「ドールにやって貰うよ、ドール頼むね」
「心得ました、ご主人さま」
「よし、それじゃ、みんなで寝よう!6人が同じ部屋で寝るのは初めてで新鮮だなって、エルネス、何でお前がここにいる?」
「私も、皆と一緒に寝るのです。意思統一をしやすくするために・・・」と顔を赤くして呟いた。
「エルネス、きょうはジンパパを挟んで私たち3人が同じベッドで寝るのよ」
「はい!お姉様」
「お姉様・・・、いい響きだわ!」とヒューイがご機嫌だ。
「おいおい、勝手に娘達になるな。まぁ、今日だけだぞ一緒に寝てやるのは」とジンもまんざらではなく明日の戦いを前に寝ることになった。
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