第100話 魔王がいる国へ
ジン達は各国に潜んでいた魔族を打ち倒し、とりあえずは獣人族、人族の地には魔族は一人もいなくなった。
しかし依然として北の海を隔てた大地には魔王を筆頭に配下の高位魔族数人と好戦的な魔族がいることには変わりなく、ジンはタブレットを開き解決策を聞いてみることにした。
【GOD】に『平和的魔族以外の魔王配下を全て打ち倒す以外平和は訪れないか?もしその場合はどうしたら良いのか指針を示せ』と打ち込みenterキーを打ち込んだ。
『現在の魔王”エルケハルト”は先代の大魔王ヨーゼフを陥れて倒し、人類、獣人族の領地を侵略して魔族の国土を拡げる野心しか持っていない、そのためエルケハルト以下3人の将軍と配下の軍勢1000人程を倒さなければ平和は訪れない。先ずは真の魔王の城に行き、真の魔王と共にエルケハルトの軍勢を倒すことを勧める』
「真の魔王?魔王が二人も居るのか?」
ジンは更に【GOD】に『真の魔王の居住は何処?』と書き込みしてenterキーをクリックした。
『真の魔王の住居はブラックアイランド南海岸のレーピアという所に城が有る。先ずは、そこに向かい真の魔王と会うことを勧める』
「レーピアという所に真の魔王の城が有るのか?しかし、魔王が二人もいるとこれは厄介だな!」とジンは考え込んでしまった。
いつものようにセモアの地下の訓練所でヒューイとドール、イリーナ、イザベラ、イリアと朝の訓練を終えて、朝食を取りながらタブレットに示された事を皆んなに伝えた。
「ジン、先ずは真の魔王というのがどういう魔王かわからないが【GOD】の指示ではその真の魔王と共に人間族に敵対するエルケハルトを撃ち倒せという事でしょ?それなら真の魔王がいるというレーピアに行くしかないじゃない?」とイリーナが事もなげに言った。
「そうよ、パパ先に進めるにはその真の魔王とやらに会って、話し合わないと進まないわ」とヒューイにまで言われる。
「わかった、それじゃ先ずは魔王が二人もいるということにびっくりしたが、【GOD】が真の魔王と言っている御仁に会いに先ずはレーピアという場所に向かおう」
朝食も終えたので、全員が旅と戦闘の準備も終えて、『空飛ぶ車』に乗り込んで
ブラックアイランドの南海岸に時速1000k/hで飛んで行きおよそ3時間ほどして南海岸の近くに上陸した。
「ここは既に魔族の領土なので何が有っても可笑しくない!皆んな気を緩めず周りに注意してくれ」ジン達6人は油断せずに海岸線をゆっくり【サーチ】しながら歩いて行く。
しばらくすると砂地から10メートル程陸地に入った所に大きな鎖が上空に伸びている。
その上空に巨大な城が浮いて、鎖と繋がっていた。
鎖は2メートルほども有る巨大な鎖で、どうやら巨大な城の錨の役割のようだ。
再び6人は『空飛ぶ車』に乗り込み巨大な城まで上昇して城の城門に降り立った。
すると一人の壮年騎士が現れた。
ジン達一行は緊張した面持ちでドールが一歩前に出た。
「珍しい客人が訪れたようであるな、私は真の魔王”エルネスティーネ”様に仕える魔族1位のゲルハルトと申す。”エルネスティーネ”様に何用か?事と次第によってはこれ以上の立ち入りを実力を持って排除するが・・・」
「我々は魔王エルケハルトを倒すために人族を代表してきた者だ、お主のいう真の魔王エルネスティーネ殿と話をしたい、お取次を願う」
「エルケハルトを倒すと云うことは我らの目的と同じ目的では有るが、そなた達人間族ではとても倒せる相手ではない。見る所それなりの力は有るようだが、我が先ずはその実力を確かめてからの話じゃ」
ジンは魔族1位の高ランクの魔族がどの程度なのか【鑑定】で見ると、確かに凄い実力だがジンやヒューイ、ドールの敵ではない。
「そうか、穏やかにはエルネスティーネ殿と云う魔王には会えないようだね!ドール、お相手してあげなさい」
ドールが『雷剣』を構えて、ゲルハルトと対峙した。
一瞬でゲルハルトがドールの後ろを取って斬りかかるがドールはその時には残像を残して消えてゲルハルトの背中を捉え、袈裟に斬りかかる。
ゲルハルトは間に合わないと見て【シールド】でそれを防ぐ。
すぐに距離を取り、ドールの間合いから回避する。
何度か剣を交差させるが、最後はドールが余裕で彼の首に剣を添えた。
「私の見込み違いのようですな、貴女がこれほど強いと云うことはそちらの御仁は
更に強いとい云うことでしょうか?」
「私はジンと申しますが、真の魔王と人族領に攻め込もうとしている魔王エルケハルトはどういった関係なのですか?、このまま試合をしても、貴殿が勝つ見込みは皆無だと思います」
「左様ですね、確かにあなた方には私では勝てないでしょう、一度我が主のエルネスティーネ様にお会いして・・・」
その瞬間ジンに向かって強烈な殺気と共に巨大な【グラビティ】が襲い掛かったが
一瞬でジンが【ディスペル】で解除して魔法陣を霧散させた。
すると、城門の上から一人の魔族というか女の子が降りてくるや否や「爺、助太刀するで有るぞ!我が住処を脅かす裏切り者のエルケハルトの手先か?私が父の仇を取ってやる」と言ってジンに剣を構えて向かってくるが、ジンが【呪縛】をかけて身動き出来ないように【ダークロープ】で縛った。
「姫、この者達は有る意味我らと同じ目的の人族の方々じゃ、今私が実力を見てみようと模擬戦をいどんでいた所なので心配はいりません」
「なに、こやつらはエルケハルトを倒しに来たと申すのか?人間風情がエルケハルトに勝てるわけがなかろう、淡い夢を持つのではない」
「そういう姫様はこの一人の御仁にいとも簡単に身動き取れぬ有様ではないですか!」
ジンは【呪縛】を解いてやり、動けるようにしてあげ、「我らは人族や獣人族の
領土に攻めてきた魔王の部下達10数人を殲滅したが、きりがないため直接魔王を倒すために私達が来たのだ」
「人間などの手助けなど要らぬ、私と爺と数人の部下達で何とか倒してみせる」
そういうと、城門を軽々と飛び越えて城の中に入って行ってしまった。
「エルケハルトが仇と言っていたが、どういうことですか?」とジンはゲルハルトに聞いてみた。
「実は姫様、エルネスティーネ様の父上である先代の魔王様ヨーゼフ様をだまし討ちして今の地位に就いた逆賊ですのじゃ、ヨーゼフ様は温厚で偉大な魔王様で獣人族とも人族達と共に手をたづさえて共存共栄を目指そうとしていたお方でした。しかし、エルケハルトは魔族がいちばんの強者で後は全て奴隷にして魔族がこの世界を支配するのだと、高ランクの魔族数人と1000人程の魔族を引き連れ反乱を起こし、ヨーゼフ様は仲間を殺すに忍びないと温情を持って会談の場に行って、だまし討ちにされてしまったのじゃ!」
「成る程、今の姫がそのヨーゼフ殿の忘れ形見なのですね」
「今この城にいる魔族は貴方とエルネスティーネさんと魔族の騎士は何人ぐらいいるのですか?」
「恥ずかしい話ですが騎士団は30名弱程度しかおらず、現状は強力なシールドで守っているのが精一杯という状況です」
「わかりました、ゲルハルト殿、一応作戦を立ててエルケハルトと3名の将軍のスキルなどをお聞きしたいので、城に入ってよろしいかな?」
「もちろんでございます、食事を用意させて私の知る限りの相手の魔法、スキルを皆様にお教えいたします」
ジン達は空中に浮かぶ城に入城して大きな客間に通された。
そこには20名ほどの鎧をまとった魔族の騎士達が居ならび、礼儀正しく迎えてくれた。
「先ずはゆっくりお茶などを飲みながらエルケハルトの軍勢の事をご説明しましょう」
「エルネスティーネ殿が居ませんが宜しいのですか?」とイリーナが聞くと、
「姫は人族に助けてもらいながら仇を討つ事を良しとしていないので致し方ありません。今の我らの戦力ではどうあがいても彼らに勝てないので・・・」
「それで、まず3人の将軍ですが、こやつらの中で2位のクルトはドール様でも勝てると思います。剣は私より劣り、魔法は火魔法、水魔法、土魔法が得意ですがレベルは中程度の魔法ですので、ただスキルで幻惑・幻覚を持っておりますのでその辺りは注意が必要かと」
「ドールであれば、幻惑・幻覚は効かないので全く問題ありません」とジン。
「あと3位の将軍ヨーナスは剣技がレベル7で高く、闇魔法の影を操るのが得意です。スキルは特に持って居ないのですが影を踏まれると身動きが出来ず首を切り落とされてしまう危険があります」
「こちらはヒューイの『神龍剣』で全ての魔力とスキルを奪って、処理できるよね」とこれも問題ないとジンが話した。
「4位は人間族に倒されたと聞いてますが、もしや?」
「ああ、俺たちで倒しているな、残るは5位辺りかな?」
「5位は私が相手して倒します」とゲルハルトが言った。
「それじゃ残りはイリーナさん、イリアさん、イザベラで対応してくれる?」
「もちろん、ドールもヒューイも倒したら直ぐに応援する事、そのためには俺の方で700人程この城から【イレージング】で消して処理しておくから」
「ジン殿?その【イレージング】という魔法はどういった魔法ですか?」
「これは【サーチ】と併用して、離れた場所からでも物の存在を消し去る魔法で
全員を消し去ってもいいのだけど大量に魔力を消費するので、私的にはエルケハルトを倒すためには魔力を少し温存させて置きたいからね!」
「それでエルケハルトだけど強いのかい?」
「はい、魔力は1万を越え、先ほど姫が使った【重力魔法】が得意で、レベル的には9有ると思われます。それと危なくなると【転移】で逃げる事で難を逃れてしまうのでとても厄介な相手です」
「そうですか、それでやはり彼の最後はエルネスティーネに仇を取らせたいよね」
「望めるのであれば・・・」とゲルハルト。
「うん、大丈夫ですよ!【転移】で逃げようにも彼自体を【結界】で囲って【転移】出来ないようにして、彼の得意な【重力魔法】で自由を奪い、姫様に仇を打たせるようにしてみせます」
「かたじけない、くれぐれも姫様をよろしくお願いします」と爺と言われているがそれほど歳はいってない、ゲルハルトが丁重にお辞儀をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます