第98話 魔族との戦い(シルコレア編4)
パラメーラはユースダレーから更に北60キロ、シルコレア帝国最北端に位置する大都市で海の向こうには魔族領地のブラックアイランドが有る。
魔族が攻め込んでくるとしたらプロレジア帝国のカルセイやアゼル同様真っ先に狙われる都市の一つだった。
ジンは昼食を食べながら<タブレット>の【GOD】に『パラメーラの魔族の潜んでいる場所、及び魔族の魔法特性とスキルを表示せよ』と打ち込んでenterキーをくりっくした。
「パラメーラの魔族は街から北の海岸に家を構えて住み、魔族達が転移しやすい様に転移ポイントの石柱を立ててそれを守っている。彼の魔力は8000余りあり、人族、獣人族に潜む中で最強の魔族で剣、魔法共にレベルが8です。尚スキルでは【転移魔法】、【幻惑魔法】、【反射魔法】を持っており魔法は全て跳ね返されるために彼に対しては無力です』と表示された。
「みんな、これを見る限りでは今までの最強の恐らく魔王の幹部クラスの魔族だろうと思われる、相手に対しては魔法攻撃が無効だが、相手の魔法もこちらには同様に無効なので後は剣と体術勝負だと思う、なのでイリーナさん達は【シールド】を2重に施して俺とヒューイ、ドールが戦っている間に彼が立てた転移するための魔道具の石柱を破壊してくれるかな」
「了解よ、ジン達が剣で負けるとは思わないから心配はしてないけどくれぐれも注意してね」とイリーナが言って、皆で最北端の街パレメーラに向かい、午後3時半ごろにマラメーラの街の門の前に降り立った。
冒険者カードを衛兵に見せて無事、街の中に入った。
「まずは冒険者ギルドに行って、魔族討伐の件をギルドマスターと話し合おう」
ジン達はギルドの扉を開け、受付嬢に冒険者カードを見せてギルドマスターを呼んでもらうことにした。
「ジン様、ギルドマスターが2階にお越しくださいと申しております」と受付嬢の女性がジン達6人を2階のギルマスの部屋へと案内した。
ノックをし「ギルドマスター、ジン様一行がいらっしゃいました」
「はい、入って頂いて!」と女性の声が聞こえた。
”ここのギルマスは女性なんだ!”とジンは一瞬驚いた。
「初めまして、パラメーラの冒険者ギルドのマスターをしておりますゲルデと申します、ジン様はこの最北端の魔族領に接するギルド長が女性なので驚いていますね?(笑)」と優しい微笑みで挨拶して来た。
「はは初めまして、ジンと申します。いやぁ〜、最北端の一番危険な所の冒険者ギルドを仕切っているのが女性なので驚いただけですが、お会いしてかなりの強者だとわかりました」
「あら、鑑定眼をおもちなの?」
「いえ、佇まいと隙のない立ち位置を拝見すればわかります」
「ジンさんは女性にお優しいのですね、早速ですがこの地の魔族は海岸線にいる1体だと我々は考えているのですが、ジンさん達のお考えは?」
「はい、私たちの調べ上げた結果も同じで、彼が魔族をこの地に引き入れる『転移柱』を作り上げ、守っていると考えてます。未だ『転位柱』は魔力が完全に注入終わっていないので発動してませんができる限り早めに破壊してその魔族を仕留めたいと思います」
「私たちも三度彼を襲いましたが魔法も対物攻撃も効かず、私の魔法では彼と相性が悪く残念ながら未だに打ち取れないでいました」
「彼は恐らく人族の大陸に派遣された中では最強の魔族だと思います。今まで数十体の魔族を倒して参りましたが今回が1番の難敵だと僕らも考えて、まずは魔族がこの地に転移できない様に『転移柱』を破壊して私とここにいるヒューイ、ドールで魔族を倒します」
「私たちもAランクのパーティー2組と私がお供してサポートしますのでよろしくお願いします」
「これから向かいますか?」
「はい、一応パーティーはジン様達がくるというので2、3日待機して待っていてもらってますのですぐ駆けつけられます、30分後にこのギルドを出て海岸線の彼のアジトに向かいましょう」
「わかりました。私たちはこの隣の宿を抑えて来て、すぐ戻ります」
「でしたら受付の女性にギルドの名前で3部屋ツインを抑えますが?」
「それでしたらお言葉に甘えてお願いします」とイザベラが回答して、ジン達は冒険者が来るまでギルドマスター室でゲルデと打ち合わせをした。
20分ほどしてAランクの5人組パーティー二組が集まり、お互いが自己紹介を済ませ、ギルドからギルマスを含め11人とジン達6人が全員【身体強化】をかけて、魔族のいる海岸にあっという間に着いた。
ジンが【サーチ】を掛けて隠蔽を施していた『転移柱』を見つけてイリーナが強烈な【ファイアボム】で『転移柱』を粉々に砕いた。
すぐに小屋から黒々とした瘴気を纏った2メートルほどの魔族が現れ、いきなりイリーナ達に向けて【ダークビーム】を放った。
バキッ!バキッ!っと音がして魔族のダークビームを弾くイリーナ達の2重シールド。
すぐにドールが『雷剣』で魔族に詰め寄り首を切り落としにかかるが、魔族は余裕で『雷剣』を弾き、目から再び【ダークビーム】を放ちドールの胴体に穴を開けるがドールの胴体はその穴をグニャグニャと周りの金属が埋めていき、元の体に戻っている。
「ほほー!儂と同様な再生能力を持っているのか?お主人間ではないな?」
「・・・・」無言のドール。
その隙をついて、ジンがストレージから大剣『剛力』で上段より魔族に斬りかかる。
魔族は剣でそれを受け止めるが剣もろとも切り砕いて頭を砕いてしまうが、すぐにそれが幻影だとわかったジンは横に『剛力』を薙ぐと胴体を二つにされた魔族がニヤニヤ笑いながら別れた胴体をすぐにつなげて距離をとった。
「お前も人間技をはるかに超えているなぁ!魔王様の様な魔力の量だが儂には魔法は
効かんぞ」
「それはお互い様だよね、俺にも君の魔法は効かないよ」
ヒューイが『神龍剣』で魔力とスキルを奪おうと試みるが弾かれて奪えない。
ヒューイにとって初めての経験である。
少し離れたところで魔族の隙を窺っていた冒険者10人が急に泣き出したり恐怖におののき始めた。
「ジンさん、こちらに魔族が精神攻撃をして来たわ!私は耐性があるから跳ね返したけど冒険者の連中がやられてしまったは」
ジンは【ディスペル】と念じ魔族は放つ精神攻撃を【エナジースプラッシュ】で消し飛ばした。
「へぇー儂のスキルまで消し飛ばせるのか、お前何者だ?」
「冒険者のジンというものだ、ちなみに君の名前は?」
「儂は魔王様の直属の武将、四将軍の一人グゼー将軍だ!死に行く奴に教えても意味ない気がするがな」
「いやいや、その言葉をそっくり君に返すぞ」とジン。
「冒険者の皆さん、魔法は通じませんがスキルとか剣、弓は通じますので僕らが戦っている時に隙が有れば切りかかってください」
「儂がそんな隙を見せると思っているのか?下等な人間族よ」
いきなり、ヒューイが『神龍剣』で一瞬で裏を取り斬りかかるが魔族も一瞬で消えてヒューイの後ろ5メートルに転移して逃げた。
剣の技では太刀打ち出来ないと判断した魔族は取り敢えずここは不利と判断して転移で逃げようと考えた瞬間ジンの結界に囲まれてしまい、ディスペルも効かない!
「何故わしのディスペルが効かないのだ?」
「そりゃ、当たり前だろ、お前さんを囲っている囲いは魔法じゃなく俺自身の特別なスキルだからな!」
「それじゃ、俺とお前さんだけで勝負できる空間に運んであげるから、そこでみっちり俺と勝負しようや」とジンが魔族に言ったと思ったら、ジンは転移で逃げられない様に自分と魔族を【亜空間】の中に移動させて二人きりにして対峙した。
魔族は黒光りした魔剣を構えジンは愛用の『煌剣』を構え、人間が想像できぬ速さで斬り合って、魔族は胴と首と手をジンによって切り落とされる。
「貴様は人間か?『亜空間』まで作り出せるのは我が魔王様だけだと思ったが人間の様に下等な種族にも特殊な奴はいるのだな」
切られた首と腕を再生して薄笑いを浮かべながらも、こった様には見えない。
「そうか?大したことじゃないぞ、お前の体が再生できない様にすることもできるから今から覚悟しろ!」
「まずは、足から消すぞ」
「【イレージング】」と言って足にジンが手を翳す。
ぎやぁ!と悲鳴をあげて魔族が足を見ると股から下の両足が消えてなくなった!
しかも再生が効かない!
「何故だ、何故再生できない!」
「それはお前の体を構成している分子レベルの繋がりを解除して消し飛ばしたから、再生そのものの効力が効かないのだ、次は首だ消えろ!」
胴体を残して亜空間の中で転移もできずジンとの剣だけの戦いでは流石の魔族も剣ではとてもかなわなかった。
結局分子レベルの構成を引き離されて、身体の構成を保てず消されてしまった。
ジンとしては本来首と胴を残してギルドマスターに渡したかったが結局死体としては足と首がない胴だけを持って、『亜空間』から戻って来た。
「ジン殿が魔族と突然消えたので心配していましたが大丈夫でしたか?」
「ええ、魔族が転移魔法で消えるのを防ぐため、私の作り出した亜空間に閉じ込めてその中で剣だけで戦ったので首と足は再生出来ない様に消してしまいましたがこの様に手と胴を残して殺しましたから大丈夫です」
「確かに魔族の魔力が完全に消失しているのでだいじょうぶですね」とギルドマスターのゲルデが周りの魔族の痕跡と瘴気を探る様な仕草をしていた。
「それにしても魔法が全く相手に効かないと冒険者達の戦い方もシールドを使える冒険者を集めないと今後の戦いには厳しくなるわね」とゲルデが難しい顔をしてみんなに告げた。
「特にシルコレア帝国ではこのパラメーラとエゲルの街が海を挟んで魔族の国と接しているので帝国の冒険者のうちシールドをして自分のみを守るぐらいはしないと
魔法の発動時間が我々と比べて圧倒的に早い魔族に負けてしまうな」と冒険者達はジン達の戦いを見て、次元の違う魔族との戦い方に驚いていた。
「取り敢えずは何とか強力な魔族を打ち取ったのでギルドに戻りましょう」とゲルデ達とジン一行、冒険者10人が街に戻って来た。
「ジン殿、『ジンと6人の魔女達』パーティーに討伐報奨金白金10枚をお渡しします、それと冒険者2パーティに同じく白金5枚づつ渡します」とゲルデが帝国から預かっていたお金を渡してくれた。
冒険者達の10人は「何だか足手まといにしかならず魔族の幻覚魔法で苦しめられたのをジン殿に助けて貰っただけで白金を頂くのは心苦しい気がするが、ジン殿達の戦いを参考に私たちもスキルを更に磨いて頑張るいい勉強になりました」と素直に褒賞金を受け取って冒険者ギルドを後にした。
既に外は真っ暗になり、ジン達もゲルデが抑えてくれた直ぐそばの宿に行き、明日午前中改めてゲルデを訪ねて行くと約束して宿に向かった。
宿に入り、シャワーを浴びて階下の食堂で夕食を食べながら強敵だった魔族との戦いを皆で語り合っていた。
「魔王もジン君と同等の力が有る考えておいた方がいいわね、その時はジン君とヒューイちゃん、ドールに任せ私達はジン君の弱点にならない様に他の魔族との戦いをするとかシールドを仲間にして守るとかサポートに徹したやり方をしないと人質に取られたりしたらかえってジン君に迷惑をかけるわ」とイリーナが反省を口にした。
「魔族の高位の連中は再生能力を持っているので、ヒューイの『神龍剣』にそれを阻害する力をセモアに戻ったら考えようと思っているよ、それにヒューイで有れば『亜空間魔法』も使いこなせる筈だからその辺も今一度セモアで訓練するのとイリーナさん達も『魔導銃』ではなく『魔拳銃』で有れば魔法を放たず、物理的弾丸を放って、シールドさえも撃ち抜く”ジャイロバレット弾”や”、”アンチマテリアル弾”を撃てれば本当は今日の魔族も打ち取れたと思うんだ」
「あの例の『異界の魔物達』の古代人が押し込めたダンジョンに居た魔法を無効化する硬い革で覆われた化け物じみた魔物と同じね?」とイリア。
「そうそう、あの最強の魔物がほぼ魔族の高位クラスと同等と考えていいと思うんだ、今回は相手に通用する魔道具を知られないために敢えて『亜空間魔法』というスキルを使ったけど、『魔導銃』がダメなら『魔拳銃』で実弾を打てば間違いなく魔石を破壊できるからね」
「明日ゲルデさんの所に挨拶したら直ぐに家に【転移】して今後の対策を考えて訓練もしましょう」とイザベラが早く帰りたがっていた。
翌朝、朝練を終えたジンとヒューイ達は早々に朝食を食べ冒険者ギルドに向かいゲルデさんと会い、各国の冒険者ギルドに魔族に対しての戦い方、それと、シールドを張れる魔法師の早期育成、など各国で協力して魔王軍の侵略に対抗するために国とギルドが一体になって動く様頼んだ。
「それではジン殿達もお達者で、しかと各国の王様とギルド長には魔族の恐ろしさを伝え対応強化を伝えます」とゲルデがジンと握手をして別れた。
「それじゃやっと人族、獣人族内の魔族は討伐したのでセモアに戻り、『遠距離通話器』でキースのハリス侯爵様に連絡を入れて、我々の能力アップの訓練をしましょう」とジンが言って『空飛ぶ車』に乗り込みパラメーラの街から一瞬でセモアの自宅に【転移】した。
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