第93話 魔族との戦い(グラバド編)

ジン達一行はデイマール王国の魔族を全て殲滅してグラバド王国のカルバラの街に『空飛ぶ車』で向かっていた。


グラバド王国第三の都市、カルバラ、人口も5万を超える都市でグラバド王国の食材を供給する農業の盛んな街だ。


6人はカルバラの外れの畑が広がる街道筋に着陸して、カルバラの街が見える城壁に向かって『空飛ぶ車』を走らせていた。


およそ10分ほどして衛兵が居るが居る門に降り立って、冒険者カードを見せて街に入った。


先ずは冒険者ギルドに行きギルドマスターに会って魔族討伐の話を伝えるためギルドに向かった。


城門から500メートル程行くと左側に立派な建物があり、剣と盾の看板ですぐに冒険者ギルドだとわかる。


ジン達6人は受付嬢に冒険者カードを出してギルドマスターに会いたいと申し出た。


「ジン様、ギルドマスターには面会のお約束でも?」


「いいや、事前に約束はしていないがギルドマスターに『魔女5人とジン』が魔族討伐の緊急事案でお伺いしたと言えば、先日のギルド統括会議に出ていたギルドマスターは直ぐにお会いしてくださると思うぞ」


「わかりました、一応お伝えしますが会えない場合も有りますのでその旨ご承知おきください」


「わかりました、ただその時にはこの街が消滅することも君の胸に刻んでおいてね!」


「えええええ!そんなぁ・・・・」


受付嬢は慌てて2階のギルドマスター室に向かった。


受付嬢と一緒に慌てた様子で中年の男性が居りてきて、ジン達の方に小走りに歩みより、


「『魔女5人とジン様』のパーティーですね?私はカルバラのギルドマスターをして居りますハウザーと申します。ここカルバラには2体の魔族が潜んで居ると伺って居りますが、これからジン様達が討伐に行かれるのですね?ギルドで冒険者を募るとか、何かする事はございませんか?」


「いや、Aランクでも討伐は難しいので我らだけで対応します。ただ我らで対応仕切れないときは速やかにこの街の住民を避難させないと街全部が消滅させられるでしょうから、どなたか2、3名の高ランクの者が確認だけでも離れたところから見てくれたらと思います」


「わかりました、討伐に行かれる時にはまた一声おかけください。2名ほど高ランクの冒険者を募って確認させる人物は集めておきます」


ジン達はハウザーにお礼を述べて一旦ギルドを後にした。


「さて、イリーナさん先ずは落ち着いて作戦のためにも宿を取りましょう」


ジンは『地図帳』を広げ”料理が美味しく、綺麗な宿”と念じて『地図帳』を見ると5軒ほどカルバラの街の地図に緑で位置が表示された。


ギルドから一番近い宿に向かいジン達は直ぐに”清流の宿”の看板の所に入った。


「すみません、ツイン二部屋、シングル一部屋1泊で泊まりたいのですが、空いてますか?」


「はい、ツイン二部屋とシングル一部屋ですニャン?大丈夫ですニャン」と12、3歳の猫族のお嬢さんが出てきて答えた。


「ツインが一部屋銀貨1枚、シングルが銅貨50枚ですニャン」


ジンが銀貨2枚と銅貨50枚を出して200号室、201号室、205号室の鍵を受け取り2階に上がり、ジンとヒューイの200号室にイリーナ親子、イリアおばさんとドールが集まった。


ジンが<タブレット>に『カルバラに潜む2名の魔族の場所と彼らの魔法、スキル特性を教えて』と打ち込みenterキーをクリックした。


『魔族2名はカルバラの北の門を出て1キロ程行った丘の洞窟に潜んで居る。この2名は非常に異常状態耐性がレベル8有り、『神龍剣』で魔力とスキル奪うにはとても時間がかかるのでおすすめしない。魔法に関しては耐性が強く【ディスペル】のスキルを保有して居るので直ぐに無効化される。攻撃魔法は通常の中級魔法を全て保有して居るので物理攻撃がジン殿の総キルが有効と思われる』


「つまり【シールド】は相手の【ディスペル】で無効化されるので『リフレクションリング』を常に発動させて、相手の魔法、物理攻撃を跳ね返し、俺とヒューイ、ドールの剣で心臓と魔石を打ち砕くのがいいかな?」


「私たちはそのサポートに回るのね?」


「そうですね、魔法が効かない相手なのでイリーナさん達は効かないと判りつつ攻撃魔法を放って注意を引きつけてください。相手が【ディスペル】を掛けて居る隙をついて【転移】で相手の裏を取り剣で心臓と魔石を打ち砕きます」


「相手が【シールド】を掛けていたらどうするの?」


「俺とヒューイとドールなら魔族の【シールド】程度肉薄すればシールドごと破壊しますよ」


「わかったわ!イザベラとイリアと私は連続で2体の魔族に無駄でも攻撃魔法を放ち続けて相手の意識をこちらに引きつけて見せるわ」


「それじゃ、作戦会議は終わりにして、先ずは美味しい昼食で腹ごしらえしてギルドに向かいましょう!」


「ヒューイ、いつもの通り君の素晴らしい鼻のスキルで定食屋を決めてくれ」


「了解よパパ!」


ジン達は美味しい定食屋を探しに宿を出た。


何軒か行って「パパ、ここがいいわ」とヒューイが小さな、でも小ぎれいな定食屋のドアを開けて入っていく。


「いらっしゃい!昼食定食は今日はイエローテイルの塩焼きかマナバイソンのガーリックステーキでどちらも銅貨10枚です」


「俺とヒューイはマナバイソンのガーリックステーキ、イリーナさん達は?」


「私たちはイエローテイルの塩焼きにするわ」


「はい、それじゃー肉が2つ、魚が3つですね!どちらもスープとサラダはおかわり自由ですから」と行って厨房に消えて行った中年男性が4、5分したらスープとサラダを5人前持ってきて、それから数分してマナバイソンのガーリックステーキ2個とイエローテイルの塩焼き3皿持ってきた。


パンもおかわり自由でヒューイなどはパンとスープを3回も取りに行って満腹になったようだ。


定食屋で皆満足して、ゆっくりギルドに向かって歩いて行った。


ギルドに行き受付にギルドマスターのハウゼンを頼むと、2階からハウゼンが鎧を着て降りてきた。


「ハウゼン殿?その格好は・・・」


「はははは、いや魔族の戦いぶりを見て見たいのと現在このギルドには私ともう一人のAランクの人間しか高位の冒険者がいないので・・・」


「ジン殿、こちらが一緒に行くAランク冒険者のギゼー殿です」


「ギゼーです、見届け役を仰せつかったのでジン殿達の戦いをしっかりこの目で見て勉強させていただきます」


「わざわざご足労おかけします、相手は魔法も物理攻撃も無効にできるスキル持ちで魔法も4属性と闇魔法を放ってくるのでギルドマスター殿とギゼー殿は離れた位置から確認だけしてください。万が一我らが負けた場合は、直ぐに逃げてカルバラ市民を避難させることを最優先にしてください」


ギルドマスターが「ジン殿、魔族が潜んで居るところは?」


「はい、北の城門を出て1キロ離れた丘にある洞窟です。そこまで【転移】で向かいますので『魔道車』にお乗りください」


二人と5人の魔女を乗せてギルド裏から一瞬で目的地の丘の洞窟手前に【転移】した。


ギルドマスターとギゼーは300メートル程洞窟から離れて身を潜めた。


ジン達は洞窟から魔族をおびき出すために、イリーナが強烈な【ファイヤボム】を撃ち放った。


ものすごい轟音が轟いてギルドマスターとギゼーなどこれで魔族が死んだのではと思うほどの強烈な破壊力だ。


煙が消えて洞窟から2体の魔族が現れた。


「矮小な人間ども、わしらが安らぎを邪魔するとはいい度胸だ、魔王様が復活する前の小手調べにそちらの首を貰うとしよう」と一体の魔族が言い放った瞬間二人の魔族からジン達6人に黒い光が飛んできた。


6人ともそれを予想していたように余裕を持って躱すと黒い閃光は岩を溶かして消えた。


イリーナとイザベラが【ファイアスプラッシュ】、【エアカッター】、イリアが【アースランス】を放つが魔族が高らかに【ディスペル】というと3人が放った魔法がかき消されて行く。


魔族は3人の女性がメインの攻撃者だと認識したようで、イリーナ達に連続で闇魔法を放ってくる。


イリーナたち3人は【シールド】を掛けつつ『リフレクションリング』を発動して魔族の魔法をことごとく防いで行く。


「ほほう、お前達はシールドを使えるのか!しかしシールドを無効にしたらどうする?」


一人の魔族が【ディスペル】を掛けてもう一体の魔族が【エアカッター】3連続を放ってきた。


3人の魔女のシールドはかき消されるが『リフレクションリング』でエアカッターを放った魔族に3連続で跳ね返って来る。


「ぬぬぬ、小癪な魔道具を使いおって!しかし魔法だけで剣や腕力はなさそうだな」そういうと【転移】で3人の目の前に2体の魔族が剣を構えて切り掛かって来た。


しかし、彼らが転移した直ぐ後ろにジンとヒューイが一瞬で現れ、首を切り落とし心臓を貫いて魔石を一瞬で破壊した。


切り掛かった魔族達の剣はドールが瞬時に剣ギゼーで防いで2体の魔族の剣を砕いて3人を守った。


その間0,5秒もかからない、ギルドマスター達にはまるで動きが見えなかった。


切り落とされた魔族の首2体と胴をストレージに入れ、離れて見ていたギルドマスターのハウゼンとギゼーの所に戻り、


「何とか2体の魔族を葬ることができました、ギルドに戻ったら魔族達の死体と砕けた魔石を納品しますね」


「いやぁー圧勝でしたね。一瞬で勝負が決まってびっくりしました。もう少し魔法の戦いが続くのかと予想していたのですが・・・」


「いや、魔法をいくら放っても相手は無効化してしまうのでこちらでは魔法は陽動作戦で使い、最終的には隙をついて剣で倒す作戦でいましたから」


「相手が【ディスペル】を使えるとは思いもしませんでした。これでは通常の冒険者では太刀打ちできませんな」


「ディスペルをディスペルで返しても埒があきません!相手の魔力もかなりあるのでこちらは3人にあえて無駄でも攻撃魔法を放って貰い、隙をついて剣で倒すのがいいと、うまく作戦通りに行きました」


ジン達は『空飛ぶ車』に乗り込んで一瞬で冒険者ギルドの裏に現れて、ギルマスの部屋に向かった。


ジン達が魔族の遺体と魔石をギルドマスターに渡し、依頼達成の白金10枚を受け取った。


「ギゼー殿、貴殿にも金貨50枚を用意したので受け取ってくれ」


「いやぁー、私はただジン殿達の戦いを見ていただけで何もしてないぞ」


「それでも、何かあった時は貴殿が命をかけて街に戻らなければならなかったのだからこれはギルドからの依頼達成ということだ」


ギゼーは面映ゆい顔をしてハウゼンから金貨50枚を受け取りギルドマスター質を降りていった。


「ジン殿達はこの後ベルセタの街に行かれるのですか?」


「はい、ベルセタには3名もいるのでこの街で1泊して作戦を立てて向かおうと思います」


「それでは私からベルセタのギルドマスターのジョゼフに連絡を取っておきます」とハウゼンが握手してその旨伝えた。


「ありがとうございます、また機会が有りましたらお会いしたいですね」とじんがいい、ギルドを後にした。


宿に戻るには少し早いのでカルバラの街を少し見て回り、途中で感じのいいお店でお茶にした。




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