第87話 魔族との戦い(3)

ブルーノの森の洞窟にいる魔族は一人だが眷属としてミノタウロスを従えており、かなりの魔力を持っている。

【MP】6000は今までの敵対した中で最高の魔力量だ。

しかも剣技Lvが100あり、数人がかりで攻めないと剣でも負けてしまいそうだ。


朝食を済ませて冒険者ギルドで討伐隊と合流し、目的地の森の洞窟に向かった。


500メートルほど近づいて、まずは洞窟に向けてイリーナが【ファイアスプラッシュ】を撃ち放った。


中から凄まじいミノタウロスの叫び声が聞こえてドスンドスンとミノタウロスがハルバードを持って出て来た。


冒険者達がここで消耗するのは得策でないと感じたハリス侯爵が「ジン君対処してくれんか」とジンに頼む。


ドールが素早く飛び出して斬りかかり、相手はハルバードでそれをいなし、逆に攻撃してくるがドールがハルバードを切り落とし首と胴を一瞬のうちに切り分けて倒した。


強烈な魔力が出口に近づいてくる。


「なんだかなぁ、ゆっくり朝食を食べていたのに無粋な連中だねぇ。おいら魔王様に言われて人間どもを観察しているだけなのに」


「坊主、それなら大人しく魔王の所に戻ってくれないか?」


「へぇー、お前人間にしては凄いな!魔王様と同じ力を感じるぞ」


「とりあえず観察も飽きたのでお前らを消してから魔王様のところに戻るか」


剣を空中からひょいと出した子供の様な魔族はみるみる大きくなり成人した魔族と同じ大きさになり「お前達、かわいそうだが儂の力の糧となれ」


瞬時にヒューイが『神龍剣』で魔族のスキルと魔法を奪うが相手の力もかなり強力で一部の魔法が奪いきれなかった。


「パパ、火魔法と闇魔法が残ってしまったわ」


「いいよ、俺がやる」


ジンは手をかざすと、魔族の体から黒い靄が人の手に吸い込まれる様に流れて消えていく。


「きき貴様、俺様の魔法を盗んだな、もう容赦しねぇ」


剣をかざして向かってくるところを、冒険者の魔法師が【ファイアランス】を放つも魔族は剣で薙ぎ払って霧散させてしまう。


一瞬の隙をついてAランクの冒険者が【縮地】で裏を取り斬りかかるがそれを余裕で躱し冒険者の胸を突き刺す様に鋭い突きを放った。


冒険者も流石にAクラス、それを剣で弾いた。

もう一人のAクラスの冒険者が後ろに魔族の注意が向いた瞬間足から胴を狙って切り上げる。


慌てて飛び上がりそれを交わすところに、エルフの冒険者のAクラスが弓を連射して1本が魔族の胸を貫いた。


「くくくそっ!儂のスキルと魔法を奪われなければこんな雑魚に傷一つつけさせないのだが・・・」


更に最初に襲ったAクラスの冒険者がつかさず剣を持っている右肩から打ち下ろして肩から魔族を切りつけて体半分をえぐりとった。


それでも未だ生きている魔族は最後は後ろにいるイザベラの強烈な【ファイアボム】を浴びて肉片になって燃え尽きた。


「かなり強力な魔族だったわね」とイリーナ。


「ヒューイ殿とジン殿がスキルと魔法を奪ってなければ我々の方があぶなかったかもしれぬな」


「侯爵様、おそらくはこの程度でも魔族は中級クラスの強さだと思いますよ、我々の国以外に潜伏している可能性が有るのでギルドを通して早急に炙り出していかないと大変ですね」とジンがハリス侯爵に話した。


一旦全員でブルーノの冒険者ギルドに行き、ギルドマスターから冒険者達はとりあえずの清算金を受け取った。


冒険者10人を乗せた馬車と、ジン達と侯爵様親子を乗せた馬車は最終目的地ケーベルに潜む3人の魔族討伐に向かって走り出した。


王都デルゼで1泊し、ハリス侯爵は王様にブルーノの件を報告してフェリシアとジン達は王都の侯爵邸に泊まり、冒険者は王都のギルドが用意した宿に泊まることになった。


冒険者達はいずれも王都を中心に冒険者をしているので、自宅に帰る人間もいて、ギルドが抑えた部屋はツインの3部屋で済んだ。


予定としては王都を10時ごろ出発して次の宿泊地ヘルカスに1泊してケーベルに向かうことになっている。


ハリス侯爵が王宮に行っている間に、ジンは<タブレット>の【GOD】に『ケーベルの魔族が潜んでいる肉屋の場所は』と打ち込んでenterキーをポチった。


『ケーベルの冒険者ギルドの通りを南門に向かって30メートル行った右側の肉屋』と表示が出たので、【転移】でギルドの裏にジンとヒューイが向かった。

ギルドから歩いて行くと確かに肉屋から3人の魔族の魔力が流れている。


ジンが【鑑定】で探りをいれると3人とも魔法が3属性で【MP】は2000で剣技Lvは全員60と平均的だ。

スキルは全員が透明化のスキルを持ち、一人が幻覚スキルも持っていた。


「ヒューイこの3人は大したことないからスキルと魔力を奪えば僕らは手出し無用で良いと思うぞ」


「そうね、午前中の魔族は流石の『神竜剣』でも容量オーバーで取りきれなかった部分も有ったけど、この3人なら余裕だわ」


「それじゃ侯爵邸に戻ろうか」

ジンとヒューイは【転移】で侯爵邸に戻りイリーナ達と合流してケーキタイムにした。


王都の手前でお昼を食べたのでフェリシアとイザベラは夕食までダイエットというのでイリーナとイリア叔母さんと4人でケーキタイムにした。


ハリス侯爵が王様と打ち合わせをして、戻ってきた。


「ジン殿明日は冒険者を温存してジンファミリーで3人の魔族を打ち取ってくれとの王様からの伝言なのじゃ」


「一応二箇所の魔族を冒険者の高ランクが打ち倒したので全国のギルド連合がこの王都のダルゼに集まり魔族対策会議を開く際に経験者10名の戦った感想を述べてもらうことになったそうなのだ」


「その会議はいつ開かれるのですか?」


「何でも王都のギルマスのフェイトと王様が動いて明後日にこのダルゼで開くらしい」


「わかりました、それでは私たちで明日の午前中に【転移】で3人を葬ってきます」


「すまんがよろしく頼む、フェリシアも行かせようか?」


「それには及びません、私たち6人でじゅうぶんです」


翌朝ジン達はハリス邸で朝食をご馳走になって『空飛ぶ車』で昨日ロケハンした肉屋の前に現れた。


「ヒューイ、いつもの感じで先に魔法とスキルを『神龍剣』で奪い取るぞ!」


ジンが肉屋の前に行き扉を開けた。


「お客さん、申し訳ないがあと1時間ほど待ってくだせ、今開店の準備中なんで」


「親父さん、それじゃ開店の必要はないから店を閉めてくれ」


「なに言ってるんだ?お客さん開店は1時間後だよ」


「だから、きょうでこのお店は終わりなんで開店の必要はないよ」


「パパ、ドアの向こうの二人のも処理完了したわ」


「おお、ご苦労さん。イリーナさん達3人とも魔法もスキルも使えないから殺さず足でも切り落としてくれていいぞ」


「ドールはドアの向こうの一人、もう一人はヒューイが頼む」


「お前ら何者だ?」


「俺たちは魔族討伐対だぞ!」


ジンがそう言った途端店の男は変貌して頭にツノが2本出て、黒い体に尻尾を生やしていた。


「イザベラ、エアカッターで足を、イリアは腕を、私が【アイスロック】で動きを

止めるから。


3人は一瞬でチームワークよく動き、店に出ている魔族の手足をもぎ取りジンが【呪縛の縄】で縛り上げた。


一方店の奥の魔族二人は件を構えてドールとヒューイに襲いかかってくるが魔法もスキルも使えない魔族は二人の敵ではなく、あっという間に手足を切断されてジンの【呪縛の縄】に縛られてしまった。


ジンは店の入り口に”都合によりしばらく休みます”と看板を出して『空飛ぶ車』で3人を王都のギルドに【転移】で移送した。


フェイトに3人を引き渡してハリス侯爵邸に行き全て処理した事を伝えて一旦セモアの自宅に【転移】でもどることにした。

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