第76話 貴族派の蜂起

ハリス侯爵邸でジンファミリーが食事を楽しんでいる所に、アーネスト公爵邸に潜ませていた斥候から連絡が入り、どうやら貴族派が”異界の魔物の檻”ダンジョンの結界を解除して、魔物を王都に出現させ、その騒ぎに乗じて貴族派が武力蜂起すると連絡が入った。


急遽ハリス侯爵ご夫妻と、騎士団たちをジンとイリーナが【転移】を繰り返して王都に移送し、ジン達ファミリー一同も”夕餉の里”に泊まり込み、貴族派の動きを監視することになった。


ジンは〈タブレット〉に『貴族派及び王家に敵対する者達』と打込みenterキーをポチッた。


すると、〈タブレット〉の画面に赤い点が王都のリーマン伯爵邸や貴族派の男爵邸などが真っ赤に染まっている。


アーネスト公爵邸は未だ彼が王都に入って来てない為、赤い点はごく僅かだ。


ジンは念の為、王宮内も見ると、侍女と侍従の3人居るのが分かり、『遠距離通話器』でハリス侯爵に連絡して3人を捕獲して貰った。


リーマン伯爵はその頃王宮に潜り込ませていた、侍女と侍従二人計3人からの『遠距離通話器』の連絡が途切れて焦っていた。


リーマン伯爵はルブロン魔法師以外に二人の魔法師を今回連れてきている。

名前はネイピアという女性魔法師とディスターという男性魔法師だ。


ネイピアは無属性魔法の【隠蔽(ハイド)】と【シールド】、ディスターは火の魔法属性に長けており、【ファイアボブ】、【ファイスプラッシュ】、など火の攻撃魔法が得意の魔法師だ。


リーマン伯爵は王宮に潜らせていた3人の配下の者が捉えられたと悟り、ずる賢い伯爵はネイピアに指示を出して、ルブロンと二人で【隠蔽(ハイド)】を掛けて王族派が図書館の地下入り口の守りを固める前に、【シールド】と【結界】を解除してこいと指示を出した。


リーマン伯爵は王族派の魔法師が自分たちの動きを【サーチ】で窺っていることを悟り、ネイピアに指示を出し、【サーチ】に引っかからない様に【ハイド】を掛けて、図書館の地下に二人を潜り込ませることに成功した。


”異界の魔物の檻”ダンジョン入り口と図書館の地下道につながる部分の結界を、ルブロンが【ディスペル】で少しずつすこしずつジンの施した強力な【結界】を解除していく。


1時間以上掛けやっと【結界】を外し、次に取り掛かったのは【シールド】の解除だ。


【シールド】は入り口だけでなく外壁の古代人が作った坑道外壁に500メートル以上に渡って掛けられており、ディスペルを得意とするルブロンでさえ3時間でも解除できず、一旦作業を終えて、伯爵邸までネイピアの【ハイド】に守られて戻ってきた。


「ルブロン、どうじゃった?解除できたのか?」


「リーマン様、夕食休憩を挟んで最後のひとおしをやれば大丈夫です、魔力が枯渇しそうなので休憩のため戻りましたが・・・」


「少し魔力を回復するためポーションを飲んで1時間ほど休みます」とルブロン。


「ネイピア、警備の方は如何だったかな?」


「騎士団が固めておりましたが、魔法師がいないので簡単に入れました」とネイピアが伯爵に図書館の地下道の様子を伝えていた。


ネイピアとルブロンがこの後の作業でついていなかったのは、リーマン伯爵邸にヒューイが様子を見にきていたことだった。


ネイピアがルブロンと【ハイド】を自分とルブロンに掛けて周りに見えなくしながら再び図書館に向かっている時、他の警戒している王族派の連中に見えていないがヒューイの鋭い臭覚を騙すことができていないことだった。


ヒューイが直ぐに[パパ、変な匂いの奴二人が【ハイド】で図書館の地下道を目指して向かっているわ]


[ありがとう、ヒューイ直ぐお前のところに【転移】する]


ジンが直ぐに現れて【ディスペル】を二人に向けて放った。


ネイピアとルブロンの二人の姿が目視状態にさらされ、直ぐにジンの【呪縛の縄】によって束縛され、王宮の地下の魔法が無効化される特別な檻【ダークジェイル】に【呪縛の縄】に縛られたまま投獄された。


ヒューイとジンが図書館の地下に直ぐ向かい、午前中にルブロンによって解除されてしまった【結界】と【シールド】をより強固に掛けて、ルブロンの【ディスペル】程度では解除できない強さに作業を修正して全ての部分の再補強をした。


ジンは<タブレット>のサーチモニターの赤点滅の条件に『魔法効果を施している人物、及び魔法師を四角の印にして表示』と条件を追加すると、敵の赤丸のいくつかが四角の点滅に切り替わった。


王宮のサーチに切り替えて同様の条件を追加して<タブレット>を見るが幸い王宮は午前中に3人の侍女、侍従を捕まえた以外は敵はいなくなっていた。


「ヒューイ、お手柄だな!助かったぞ。お前がいなかったら、完全に”異界の魔物の檻”ダンジョンと図書館の直通路の【結界】を壊されて大変なことになるところだった!」


「パパ、相手も今回は必死できているから結構魔法師を連れてきているわ。【ディスペル】は特殊だから何人もいないと思うけど、今後は【サーチ】するときには条件付けの【サーチ】が必要よ」


「伯爵邸にはまだ一人魔法師がいるのと、数人の貴族派の連中の中にも魔法師がいるな、リーマン伯爵邸はドールとヒューイ二人で大丈夫だね?」


「パパ、王宮の出入りを制限して【結界】を張って!入り口はハリス侯爵さんの騎士団で大丈夫だわ、問題はアーネスト伯爵の方だわ」


「あそこはオレが担当する、あとは貴族派をイザベラ、イリア、イリーナが受け持って王族派の騎士団が当たれば大丈夫だ。怪我人はフェリシアお嬢が王宮の入り口で回復魔法で全ての怪我人を直すことにしているから・・・」


「ドール、ヒューイ、敵さんは二人の魔法師が帰らないと新たな手を打ってくるかも知れん、敵も『遠距離通話器』で連絡を取り合って動きを活発化してくる可能性があるから気をつけてくれな」


「わかったわ、パパ。連絡はパパとは念話でいいわ!おそらく公爵が明日の早朝に王都につくでしょ?彼の軍勢が一番多いからパパも気をつけてね」


「おう、大丈夫だそれじゃ頼むぞ」とジンは言って、王都のアーネスト公爵邸の近くに『空飛ぶ車』の中で陣取って<タブレット>の【サーチモニター】を見つめるのだった。


貴族派の男爵クラスの貴族数人の邸にはイザベラ、イリア、イラーナとハリス侯爵、王族派の騎士団がそれぞれ800人程度離れた位置で待機している。


イザベラ達はジンと『遠距離通話器』で連絡を取り合っており、既に伯爵が魔法師二人を動かして図書館の地下道のシールをディスペルで解除しようとしたことは全員情報を共有しており、相手方にもそれなりの魔法師が一人から二人はいると、皆気持ちを引き締めていた。


その日は伯爵の魔法師を捕まえた以外何事もなく朝を迎え、王都にアーネスト公爵

が3000人の騎士団と館に入った。


ジンは『空飛ぶ車』から<タブレット>のモニターを確認して、魔法師が二人いることを確認した。


ジンは先手を打って魔法師達には可哀想だが<タブレット>に表示されている魔法師二人を【イレージング】を掛けてこの世界から消し去った。


また、リーマン伯爵邸の火炎系に強い魔法師ディスターも【消滅(イレージング)】魔法によってこの世界から消してしまった。


あとは個々の男爵達が連れてきた魔法師を<タブレット>に表示させては消し去る作業をして、敵側の魔法師を殲滅してしまった。


ジンはヒューイにその事を念話で伝え、イザベラ、イリア、イリーナには『遠距離通話』で伝え、相手方には魔法師は居ないので思う存分魔法を放ってくれと伝えた。


「ジン、油断してはダメよ!相手が『マジックアイテム』や『アーティファクト』を持っていたら魔法師達よりやっかいよ」とイリーナがジンに気を引き締めるよう伝えた。


ジンもハット気が付いて、魔法師以外に『マジックアイテム』がある事をすっかり忘れて居た。


自分たちが持っているのだから、当然敵側も魔道具屋とか代々祖先から受け継いだ魔道具が無いとは限らない。


ヒューイにすぐにその話を念話でして、あまり油断しないように伝えた。


ジンは<タブレット>の【サーチモニター】の条件を切り替えて各貴族派の館にある『アーティファクト』と『マジックアイテム』が有るのか調べた。

アーネスト公爵のところには一つ有った!

すぐ様<タブレット>に表示されている『マジックアイテム』を消し去り、同様の作業を全ての貴族派の館をチェックし、結局『アーティファクト』と『マジックアイテム』は公爵邸とリーマン伯爵、男爵の一人が保持しているだけで全て消し去った。


ジンファミリーにその旨を『遠距離通話器』と念話で伝え、夫々【次元ストレージ】から朝食を出して腹ごしらえして貰う様に指示した。


一方リーマン伯爵はアーネスト公爵が王都の公爵邸に入った事をしり、図書館の地下道のシールドと結界の解除に向かった二人の魔法師が戻らないので相手方に捕まった事を『遠距離通話器』で伝えた。


その直後に手元から『遠距離通話器』が消えてしまったのだ!

ジンの『マジックアイテム』と『アーティファクト』を【イレージング】で消されてしまい、結局その後は伯爵は公爵邸に全軍を率いて向かう羽目になった。


ヒューイとドールは伯爵の軍1000名程が王宮の方に向かわずアーネスト邸に向かったのを確認して、ジンの所に【転移】で現れ、ジンと合流した。


公爵達貴族派は『遠距離通話器』を失ったため、男爵数名には公爵の騎士が馬で連絡を取らざる得なくなり、公爵邸から出てきた連絡役の騎士達4名程を王族派が捉えて貴族派の他の貴族達の動きを止めることに成功した。


ジン達は『空飛ぶ車』をアーネスト公爵邸から王宮に向かう一本道の中程に駐車して貴族派4000の軍勢を迎え打つことにした。


遂にアーネスト公爵とリーマン伯爵の軍勢が公爵邸を出た。


ハリス侯爵および騎士団達も王宮の入り口を守って居たが、王宮全体をジンの強固【結界】が囲っているのを確認して、『空飛ぶ車』のジン達に合流した。


いよいよ貴族街で二大勢力の戦いが火蓋を切って落とされた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る