第73話 セモアの海賊騒ぎ

久しぶりに冒険の旅からセモアに戻ってきて、イリア叔母さんの『マジックアイテム』の性能チェックや、ダンジョンの宝箱で得た『天使の靴』を3人の魔女達に履いてもらい、ジン達全員が空を飛べる様になった。


またイザベラがスラムで危ない目にあったのを契機に3人にジンが【察知】スキルをエンチャントして、そのスキルも訓練で各自自分のものとできる様になった。


いつものように午前中の訓練を終えて、リビングにみんなで集まりアメリカンコーヒーを飲んでいると、セモアの冒険者ギルドのギルドマスター、ハロルドが訪ねてくる。


「ハロルドさん、お久しぶりです。お元気そうで何よりですが、今日はどう云ったご用件でしょうか?」


「本日伺ったのは、セモアの港から漁に出た船が度々海賊船に襲われ、今は漁師たちも船を出せない状況なんです。この街は漁業で生活しているため、男爵様からの指名依頼で海賊船及び海賊団の殲滅をジンさん達に依頼しに伺いました」


「そうですか、わかりました早々午後一番から港に出て海賊船を殲滅して来ます」


ハロルドはジン達が簡単に午後から殲滅してきますなどと言うので驚いていたが

ジンは大したことでないと簡単にハロルドに約束していた。


魔女達3人もそれほどジンが言ったことに対して驚いた様子もなく半日仕事の様に受け止めている。


ジン達はお昼をピロシキとボルシチのスープにマナバイソンのガーリックステーキで腹ごしらえして、『研究棟』に行き、【次元ストレージ】から『潜水艇』を出し

て全員で乗り込み、水路を静かに進み出した。


海に出る手前から潜行し始め、海に出きってからしばらく50メートルほど進んで

海上に姿を現し、港に横付けした。


冒険者ギルドに行き、ハロルドから依頼伝票を受け取り、「”ジンと5人の魔女達”がこの依頼を受けさせてもらいます」と伝えて、ギルマスのハロルドに近づいてジンが

頼みごとをする。


ハロルドに「漁船を1隻漁師から借りられないですか?船は【シールド】を掛け絶対に破損や奪われないことを約束しますので」と伝え、ハロルドの親しい漁師の船を借りることになった。


「ドールは『潜水艇』で僕らが港から出たら後ろを潜行して、くれる?」


「海賊船が1隻というわけではないと思うので、もし、2、3隻出たら『魔道砲』

で全て破壊してくれ。1隻は僕らの漁船が横付けして海賊達を捉えて彼らの隠れ家に行って根こそぎ海賊団を殲滅するから」と伝えた。


借りた漁船にジン、ヒューイ、イザベラ、イリア、イリーナが乗り込み船の船底から全てを【シールド】で覆い、イザベラの風魔法で港を出て行く。


後ろには50メートル程後方を潜行して、『潜水艇』が追尾して行く。


港を出て外洋に出たあたりで、海賊船の船影が3隻見えて来た。


「手前の1隻に狙いを定めて、沈没させない程度に攻撃するよ、まずイリーナの『滅亡の弓』で甲板にいる5、6人を討ち取ってくれる?」


イリーナは『滅亡の弓』に矢を添えて魔力を流し放つと、まだ遥か遠くにいる船の甲板の海賊達6人の頭を居抜き殺した。


イザベラが海賊船の帆に【ファイアアロー】を2発放ち逃げ足を止めると、イリアが自分たちの船の帆に風を送り、あっという間に近づいて行く。


『潜水艇』に残ったドールは2隻の海賊船を『魔道砲』で一瞬にして沈めて残るは

ジン達が横につけようとしている1隻だけになった。


ジンが3、4人だけは生かして後は好きにしていいよと魔女たちに言うと、イリア、イザベラが【ウォーターアロー】や【エアカッター】で3人、4人と倒して、ジン、ヒューイが剣で海賊達の片足を全て切り落とし、血止めをして【呪術の縄】で縛り上げた。


2隻の海賊船から投げ出された20人ほどの海賊達は全てジンが捕獲して縛り上げ、漁船の甲板に作った【闇檻(ダークジェイル)】に入れた。


海賊のリーダーらしき人間に海賊集団の隠れ家はどこか聞くが口を割らないのでジンが頭に手をやり記憶を奪い取って彼らの隠れ家に向かうことになった。


港から25キロ外洋に出た小さな無人島の入江に集落を作って50人以上が隠れ住んでいるのがわかった。


一旦港に戻り、捕まえた海賊25名ほどをギルマスのハロルドに引き渡し、漁船も無事返して、皆が『潜水艇』に乗り換えて25キロ外洋の小島に向かって潜行し始めた。


小島の小さな入江には50人程の海賊どもがいる。


中には捉えられている漁師3人ほどが手足を縛られて檻に繋がれていた。


ジンは『潜水艇』を隠れ家の裏手の島に着けたが断崖絶壁で上陸はできない。


『潜水艇』の甲板に『空飛ぶ車』を出してドール、ジン、ヒューイとイザベラが【インビジブル】を掛けた『空飛ぶ車』に乗り込み垂直上昇して彼らがいる入江に静かに降りた。


全員が【インビジブル】魔法で見えなくして、まず、捉えられている漁師3名を助けて、『空飛ぶ車』の中に保護し、後はイザベラが海賊の足を狙って【エアカッター】を連発、ドールは【縮地】であっという間に海賊のそばに行き5人の足を切り落とし、続いてヒューイも足と手を切り落とし、、ジンは手刀で腕を切り落とし、首に手刀を当てて意識を奪い、30分程で海賊全員を捕獲して、ジンが住処を全て消し去った。


海賊の割にはお宝とかは無く漁師達の魚を奪っては食料としていたようだ。


しばらくすると『潜水艇』が入江に姿を現し、50人程の海賊全員を【呪術の縄】で縛り上げて『潜水艇』に乗せて、ジン達は漁師3人を『空飛ぶ車』に乗せてセモアの港に向かった。


『空飛ぶ車』の方が流石に早く、港で待っていたハロルドと漁師長が3人の無事を見て彼らを迎えていた。


10分ほど遅れて『潜水艇』が到着して50人ほどの海賊を全員ハロルドに引き渡して、『潜水艇』を【次元ストレージ】に入れて、冒険者ギルドに向かった。


ハロルドから依頼達成の清算金金貨85枚をカードに入金してもらい、みんなで『空飛ぶ車』に乗って家まで帰って来た。


「ジン、いくらセモアの冒険者ギルドが小さくてクエストが殆ど無くても3日に1

度くらいは、クエストを誰かが見に行くようにした方がいいわ?」とイリーナ。


「それじゃ、俺が行きます。【転移】で行き来すればあっという間だしいいでしょ?」


「そうね、でも皆んなもジンから『転移石』を貰ったからこれからは順番で行きましょうよ!此処に居るときはジン、私、ヒューイちゃん、イザベラ、イリア、ドールちゃんの順番で行きましょ!」とイリーナ。


そんな話をしていたら来客を知らせるベルが鳴った。


玄関に出ると冒険者ギルドの受付嬢が立っていて「ジン様、みなさんが捕まえた海賊団は多額の指名手配の金額が課せられていまして、ギルマスからのはあくまで男爵様からの指名依頼の金額でした、改めて金貨58枚をお持ちしました」


「カードに入金する場合はジン様も一旦ギルドに来ていただく必要がございます」


「あっ、それなら大変でしょうからそのまま現金を頂きます」とジンが言って、金貨58枚を受け取った。


海賊討伐で結局金貨143枚の仕事だった。

随分割りのいい仕事だったがジン達にとってはお金はダンジョン討伐で王様達よりおそらく持って居るので、まぁあって困ることはないが、全員のスキルアップの『マジックアイテム』でいいのがあれば嬉しいとジンは思った。


ジンには『万物創造魔法』があるので考えつくものは作り出せるのだが、ダンジョンに潜って得るお宝には自分が考えつく以外の意外な物があるのでジンはそれが嬉しい様だ。


今回はそういったものはなかったが、イリーナから「縁あってセモアにお世話になっているのだから、街のために私たちも少しは貢献しないとね」と言われていたので、今回は無償でやってあげてもよかったぐらいだった。


意外だったのは海賊達は食料略奪がメインで、陸地の野盗の連中と違いお宝の類の財宝は全くといってないのはやはりのどかなセモアならではなのだろう。


明日は、少し研究室で古代人の資料を読み解いて、古代魔法の研究でもしようと考えるジンだった。


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