第67話 セビラーの街

ジン達はセビラーの冒険者ギルドのクエストで『黒い瘴気の霧』のクエストを何とか解決して、行くえ知らずの冒険者達の遺体もギルド迄引き上げ、その後街の魔道具屋等を見て周り、翌日はゆっくりと街全体を散策しようと、朝食を食べてから6人で街に繰り出した。


ギルド周辺の昨日回れなかった魔道具屋さんと武具屋を先ず見て回ることにした。


最初に入った魔道具屋で土魔法だけに特化した『土精霊の杖』というのがジンの目に止まった。


【鑑定】すると土魔法の威力を10倍にする杖と出た!

説明書には土魔法を倍に引き揚げると記されているが、何かの間違いでは無いかと店の主人に聞いたが「これは土魔法の属性を持った人が使えばその人の魔力によって2倍の力で魔法を放つ事が出来ます」と、矢張り鑑定と違う答えが帰ってきた!


「いくらだい?」ジンが聞くと、「白金1枚で安くしときますよ」というのでイリア叔母さんにと考えカードで購入を決めた。


イリアが『魔力増幅器』とこれを併用すれば【アースランス(土の槍)】で黒龍さえも倒せる威力の魔法が使えるようになる。


「イリアさん、この杖は内緒ですが俺の鑑定では凄い威力が出るはずなので後でどっかの広場で試してみましょう」と言って渡した。


その後残りの店も回ってみたがたいした物もなく、一軒のお茶屋さんで休憩を取った。


紅茶とクレープに似た食べ物が有り、ジン達は皆それを頼んだ。


ジンが前世の原宿で食べたクレープと似た味で美味しいと感じて、懐かしさで顔を

綻ばせていると・・・、


「パパ、何思い出し笑いしているの?」とヒューイに言われ


「いや、昔食べたお菓子に似た味で懐かしんだだけだぞ!」


「昔って、ジンがいた村のお菓子?」とイザベラ。


「ああ、田舎にしては食べ物が結構豊富だったんだ!」と適当に言葉を濁した。


店を出て、歩いていると前方から5人の男性が道幅いっぱいに広がって話しながら歩いて来る。


イリーナ、イザベラ、イリアは道路沿いのお店の壁にピッタリ付いて避けたが、ドール、ジン、ヒューイは彼らの間をすり抜けた。


「ちょっと待てや!俺たちの歩きの邪魔をして黙って通り抜けるのか?」


「道幅いっぱいに歩いていて何言っているの?」とヒューイ。


「おいおい、おねぇちゃん、可愛い顔して言ってくれるじゃねぇか?ええ?俺たちが歩いているのを見たら道を譲るのが常識だろ?そんな常識も知らないお嬢様にはお仕置が必要だな!」と言って、いきなり洋服を掴みにかかったが、何せ相手がヒューイだ。


一瞬の内に10メートル程彼らの進む方向に投げ飛ばされた。


「10メートル歩かなくて良いように進ませてあげたわよ、もう少し先に行きたいなら50メートル程投げてあげましょうか?」


投げられた男は気絶して立てない。


もうひとりの男がスキルなのか【縮地】を使いヒューイを捕まえようとするが、ヒューイが裏を一瞬で取って、今度は30メートル先に投げ飛ばした。


「この野郎、優しく出ればつけあがって、もう容赦はしねえ、覚悟しろ」と言って3人が一斉に剣を抜いて来た。


「あぁ、全く五月蝿い男達ね」

と言って、ヒューイが今度は50メートル先まで吹き飛ばして気絶させた。


その様子を店の中から両サイドの店の客や主人が見て、皆手を叩いて喜んでいる。


ジンもドールも全く手出しをしなかった!


呆れているのはイリーナやイザベラ達3人の魔女さん達だ。


「ヒューイちゃん、あんな馬鹿な男達を相手にしたってしょうがないわよ」とイザベラが言うと、ヒューイが「あぁいう連中には時々お仕置が必要よ、自分がいかにちっぽけな存在かを知らなければいつまで経っても成長しないわよ」と言って6人は近くの肉屋に入ってファングボアの肉とマナバイソンの肉をブロック買いして、今度は八百屋に入った。


八百屋ではサラダの材料を多めに買って昼ご飯を食べようと定食屋に入った。


ここの定食屋は魚料理が豊富でヒューイ以外は皆魚料理を頼んだ。


ジンはイエロテイルの塩焼きにご飯とスープ、女性陣は白身の魚のムニエルにパンとスープ、ヒューイは相変わらずマナバイソンのステーキにガーリックパンとスープだ!


食べ終わって、更に色々な店を廻ってみる。


途中の屋台で『フジ』用にオークの照り焼きを買い、ジンとヒューイの分も買って二人で歩きながら串焼きを楽しんだ。


メイン通りを端まで見て、今度は露地周りを始めた。


ジンは【サーチ】と全員に一応シールドを掛けて移動するように伝えた。


露地には貧民街もあり、犯罪者が集まるスラム街もあるのだ。

表通りに近いとは言え、スラムからこういう裏路地迄出てきて強盗をしたり、殺して追い剥ぎをする連中がごまんといるのだ。


ドール以外のヒューイも【シールド】をして歩いて行く。


横道から10歳位の男の子が飛び出し、イザベラのポシェットを狙って来たが彼女のシールドに阻まれ不発に終わった。


シールドにぶつかり倒れた子供を心配して近ずこうとするイザベラをジンが「止めろ!」と叫ぶが間に合わない。


イザベラは【シールド】を解除して数歩近ずいた時を見計らって、子供のダガーが彼女の頸動脈を切断する瞬間、周り50メートル四方の時が止まり、ジンが彼女を抱えて子供から遠ざけ、子供を【呪縛の縄】で縛り、時を再び動かした。


「イザベラ、何やっているんだ!【シールド】を外す奴がどこにいる?」


「だって、私のシールドに当たって怪我したのかと思って・・・」


「あの小僧はイザベラのポシェットを盗もうと狙いを定めて、失敗したから首を切ってまでして盗もうとしたのを、何てお前さんは甘いのだ?」


「相手の殺気が解らないのは未だ未だ修行が足りないな!」


「そうよ、イザベラ、あなたジンが時を止めて無ければ死んでいたわよ」とイリーナが怒っている。


”あれっ?イリーナさんは俺が時間を止めたのをわかっているのかな?”と内心さすがイリーナさんと、思ってしまうジン。


「私もイリアもさっきから子供がお前に殺気を放っていたのに気が付いていたけど、お前は全く無関心だったわよ」


「ここは平和な街だからと言って、のほほーんとして歩いていたら、人間に化けている魔族がいるかもしれないのよ、ジンの側に居たいならもっとしっかりしなさい!」とイリーナが珍しく本気で怒っている。


「ごめんなさい」としょぼんとしてしまったイザベラ。


「まぁ、何事も無くて良かったけど、外を歩く時は絶対【シールド】は外さない事、分かったねイザベラ」とジン。


「よくわかったは、ところでこの子はどうするの?」


「兵隊に突き出してもいいけど面倒なので、俺たちが露地からでたら、縄をほどいてやるよ。それと宿に戻ったら3人に【察知】スキルを【付与(エンチャント)】するよ、そしたらこんな危ない目にはもう会わないだろ?」


その後何事も無く、露地周りを終えて、メイン通りに出て宿に向かった。


「パパ、さっきの5人の馬鹿が未だ懲りずに待ち伏せしてるわ」


「ああ、そうみたいだな!ヒューイは何もせず今度は俺が対処しよう」


50メートル程先でジン達を認めた、ヒューイに吹っ飛ばされた5人の男達が剣を抜いて走って向かって来る。


ジンは5人を纏めて【結界(バリア)】に入れて、死なない程度に空気を抜いて意識を奪った。


その後、バリアを解除して一人ずつ彼らの頭に手を添えて、きょう1日の記憶を抜いて、皆で宿に帰った。


宿に着き、魔女達3回に【察知】のスキルを【付与(エンチャント)】してあげ、きょうの様な事が二度と無いようにした。


「イザベラ、今後は赤ん坊を抱く時も自分のシールドは解除はしないで、赤ん坊と自分を含めてシールドをしてからイザベラ自信のシールドを解く位、用心しなよ!」


「何で私とジンの子供が出て来るのよ!」


「何言いだすんだ?一般的な子供の事を言っているのに、なんで俺とイザベラの子供になるんだよ!考え過ぎだよ」


「ええええ?そうなの?」と顔を真っ赤にして叫ぶイザベラをヒューイが腹を抱えて笑い転げた。


「ヒューイちゃん、ちょっと笑い過ぎじゃない?」とイザベラ。


夕食を食べながら明日の朝は次の街に行こうということになり、宿の主人に言って、一泊をキャンセルした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る