第66話 セビーラの森の黒い霧

ジン達と5人の女性陣でセビーラの”荒涼のダンジョン”を踏破してきょうはクエストか街を観光して回ることにしている。


まずは冒険者ギルドに6人で向かい、掲示板のクエストを見た。


セビーラの南西5キロの森の『黒い瘴気の霧』の調査と不明になった冒険者5名の探索依頼が金貨5枚、『黒い瘴気の霧』を討伐すると合わせて金貨15枚とかなりの高額の調査、討伐依頼が残っていた。


ヒューイが「何だかこれ面白そうだよ」とジンにクエストを見せて皆んなもこれを受けようと決めて、受付に依頼の紙を剥がして持って行った。


「ジン様、既にこの調査依頼で2パーティーが帰って来ません、恐らく犠牲者は5名にも登ります。しかもBランク冒険者3名と後に行ったAランク2名でいずれもこの街としては高ランクの冒険者なんです。是非解明して、5名の安否も確認してください」と受付嬢が頼んで来た。


「とりあえず、調査して、安否の確認後『黒い瘴気の霧』を消すことができればやってきます」と言って冒険者カード6枚を提出して、ギルドの受付から聞いた場所に向かった。


『フジ』が森のすぐそばまで馬車を引いてくれて、30分ほどして受付に言われた森の入り口に着いた。


【サーチ】すると直ぐにその場所はわかった。

森の入り口からおよそ1000メートル奥に入った森の奥深いところに10メートルほどの黒い霧の様な瘴気が蠢いていた。


【鑑定】『生きる者の魂を食らう霧』とでて、名前を”ソウルイーター”、剣でも魔法でも倒せない。


「イザベラ『浄化の杖』で魔力増幅器を使って最大魔力で聖魔法を放って浄化してみて!」


イザベラが持つ『浄化の杖』から白く輝く光が『瘴気の霧』に向かって飛んでいく。

しかし、『浄化の杖』から放たれた聖魔法の光は黒い瘴気に吸い込まれて消えて行ってしまった。


イリーナが先日ダンジョンの宝箱で手に入れた『聖者の杖』を使って同様に浄化の光を撃ち放った。


イザベラの時よりは効果が有り、何やら苦しんでいる様に激しく霧が渦を巻いて回転しだし、ゆっくりとこちらに向かってくる。


ジンはイリーナの『聖者の杖』でも浄化に失敗したと思い、『黒い瘴気の霧』を【結界(バリア)】で完全に包み込んだ。

更にジンは【亜空間】と呟いて結界で包んだ黒い瘴気の霧を結界ごと亜空間に放り投げた。


『亜空間』を一応閉じて、冒険者ギルドに行って再び『亜空間』を呼び戻せばいいか、とジンは一人色々説明するのに必要なことを考えていた。


剣も魔法も『聖者の杖』でさえも全く浄化できない『魂を食らう瘴気』は何が元で

生まれて来たのだろう、今は宇宙の彼方の別世界に放ったので調べるすべも失ってしまったが、恐ろしい相手だ。


『黒い瘴気の霧』がいた所に5名の冒険者の死体が横たわっていた。


彼らを見てジンは直ぐに心臓だけが綺麗に抜き取られてないことに気が付いた。

一応白い布に一体、一体包んで【次元ストレージ】に回収して、馬車で冒険者ギルドに戻り、ギルドマスターを呼んでくれと受付に伝えた。


ギルドマスターのトムソンが降りて来て「やぁ、ジン殿先日はありがとうございます。して今日は?」


「クエストにあった森にいる『黒い瘴気の霧』の調査と冒険者の安否の確認それと討伐依頼を終えて来たので報告に上がりました」


「それじゃ、みなさん2階の私の部屋で伺いましょうか!」


「あっ、その前に前に調査依頼に出た冒険者達、残念ながら全員遺体で発見しましたのでこちらにお持ちしました。全員死因は心臓を瘴気に食われて無くなっています」


「ありがとうございます」トムソンは受付にいた男性職員2名に言って冒険者カードを確認したのち然るべき処置をする様に伝えて、ジン達と2階に上がった。


「トムソンさん、まずは『黒い瘴気の霧』は魔法も剣も【聖魔法】での浄化も効かない相手で霧ごと【結界】に閉じ込めて『亜空間』に入れ込んで来ました。一応証拠としてお見せしたのち消した方がいいのですが、まずは見てご確認ください」


ジンはそう言って、【アンドゥ(元に戻す)】と言って『亜空間』を呼び出してその中に有る、【結界】に閉じ込められている『黒い瘴気の霧』を見せた。


「この瘴気は何故発生したのか分かりませんが、魔法も剣も全く効かない危険極まりない霧なのでこのまま消し去ります」そう言って【イレージング】で消し去った。


「ジン殿色々ありがとうございます、5人の犠牲者をだしましたが、あの『黒い瘴気の霧』が街に現れていた大変な被害が出る所でした、受付でクエストの報奨金をお受け取りください」


「それじゃギルマス、これで俺たちは失礼します」と言って階下の受付に行き、ギルマスのサインのクエストを渡して清算金金貨15枚を受け取り、ギルドをでた。


ドールが『フジ』を宿の厩舎に置いてくるまで、ギルドの周辺をぶらぶらして、ドールが戻って来たので6人で高級そうな食堂に少し早めの昼食を食べに入った。


女性陣3人は白身魚のムニエルに野菜サラダとケルピーのスープとパンを頼み、ヒューイとジンはマナバイソンのガーリックステーキと野菜サラダにケルピーのスープとパンを頼んだ。


「ジン、あの黒い瘴気の霧はなんだったのかしらね?」とイザベラがステーキを頬張って食べているジンに聞いてみる。


「いやぁ〜、俺もわからないな!悪霊のレイスとかならイザベラやイリーナさんの杖で浄化出来る筈で、まして心臓を食らう霧なんて聞いたことないよ」


「イリーナさんは分かりますか?」


「私も聞いたことがないけど、あの森で冒険者や上位種の魔物によって殺されたり食べられてしまった、中級の魔物の怨霊が徐々に徐々に年月を重ねて大きく成長してあの様な強力な意思を持つ霧の様な瘴気となったのカモしれないわね!」


「何れにしても”恨み”とは恐ろしいものですね」とジンが言った。


ジン達は昼食を終えて、その足で商店街を歩いてみる。


女性陣達は既に昨日洋服を購入するために商店街を随分歩いている様で、今度は魔道具屋とか武器屋を中心に見て回ることにした。


魔道具屋はイリーナとイザベラが熱心に陳列されている商品を見てはメモに何かかいていた。


キースの”魔女の道楽”の参考にでもと思っているのだろうか?


ジンは『マジックアイテム』を作り出せるキューブをダンジョンの宝箱から得ているので、特にこれといって欲しい魔道具はない。


冒険者ギルドの周りにほとんどの魔道具屋、武器屋が集中して建っているので数が多いこともあり、まだ半分くらいの商店しか回っていないのに時間ばかり掛かって夕食の時間になってしまった。


あと、2日ほど宿を予約しているので、夕食を食べた後どうするか、皆に相談してみようと思うジンだった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る