第65話 荒涼のダンジョン踏破

ジンはイリーナ親娘、イリア叔母さん、ドールとヒューイそれに従魔のフジを連れて、皆の技術とスキルを磨くために未だ訪れたことのないシルコレア帝国のマルゲートの街にある”みのり有るダンジョン”を制覇して次の冒険の街を目指して馬車を走らせていく。


<タブレット>に『マルゲートの次にいくべき街とダンジョンは?』と打ち込みenterキーをポチった。


『マルゲートからおよそ80キロ東に行ったセビーラの街、南に2キロのダンジョンが最適』とでたので、セビーラの街を目指してフジを走らせている。


途中で日が沈みかかって来たので、夜走るよりここで久しぶりに野営することになった。


ジンが【モデリング】でBBQができる様に作り込んで、ファングボア、マナバイソン、ウィンナーソーセージ、玉ねぎ、椎茸、人参、じゃがいもなどを出して、炭火で焼いて、女性陣二人には冷えたエールを出してやり、イザベラとヒューイとジンは果実ジュースを飲みながら夕食を食べている。


匂いにつられてか、オーク、フォレストウルフ、ファングボア、などの魔物が寄ってくるがドールとフジが刈り取って、倒している。


馬車の周りは【結界】で覆っているためみんなのんびりBBQを楽しんでいた。


イリーナが「ところでジン、暫くダンジョン制覇を続けるとして時々は行った街々をもっとゆっくり滞在してみたいわ」とジンに言ってきた。


「そうですね、折角旅をしながらのスキルアップなのでもう少し訪れた街に滞在してその街を楽しむのも旅の一つですね!」とジンもダンジョン制覇ばかりじゃなく訪れている街をもう少し楽しもうと思っているところだった。


「幸い、イリーナさん達3魔女のコンビネーションもかなり洗練されて来てますし今後は少なくともダンジョン制覇とクエストで2日、街を楽しむのに2、3日を掛けて滞在することにしましょう」


「女性達はやはり洋服を買ったりその国の特産の食べ物をもっと楽しみたいしね」とイザベラも同調する。


真夜中に魔物が何匹か来るが結界が寄せ付けず結局何もできずに去っていき朝を迎えた。


ジンはヒューイとドールも最近は加わり、朝練の素振りを始める。


ドールも今やジン達と同様に自分の腕を大剣にして素振りをするが、もともとドールの怪力では大剣も難なくこなしていた。


ジンは5000回の素振りを終えて汗びっしょりになり、馬車の中のシャワーを浴びて着替え、ヒューイもシャワーを浴びて着替え、ジンが皆の朝食をドールと準備してヒューイがシャワーから出て来るのを待った。


とりあえず先にジンとヒューイ2人がピロシキとボルシチのスープにマナバイソンのガーリックステーキを食べて魔法師3人がおきて来るのを待っている。


イザベラが真っ先に起きて来た。


「ジン達はもう、食べたの?」


「俺たちは朝練で腹ペコだったし、先に食べ終わったぞ!」


イリーナ、イリアも起きてきて朝食を食べ終えて、『フジ』が引く馬車は動き出した。


セビーラの街には朝9時頃に着き冒険者ギルドに入って、受付にダンジョンに潜る旨伝えると「”荒涼のダンジョン”は未だどなたも踏破しておりませんので地図とダンジョンコアを期待しております」と言ってカードに履歴を打ち込んで返してくれた。


既にこの時点で”ジンと5人の魔女達”の冒険者ランクは全員がSSランクになっており、ジンがSSSクラス、他全員がSSクラスになっていた。


セビーラの街から2キロと離れておらず馬車で向かって行き、直ぐに着いた。


入り口は岩山に大きな穴が空いていて、近寄ると階段が見えている。


兵士にジンのカードを見せて、ドールを先頭にイザベラ、イリア、ヒューイ、イリーナ、ジンの順に階段を降りて1階層のたどり着く。


”荒涼”というだけあって、岩肌が露わになった殺伐とした感じのステージでホーンラビットが20匹、コボルトが15匹、更にはバンデットゴブリンが20匹とかなりの魔物がいる。


ドールがホーンラビットを、コボルト15匹はイザベラ、イリアが、

バンデットゴブリンはヒューイがそれぞれ数分かけて殲滅した。


「あら、私とジンは何もしないで手を握り合っていればいいのね!」と娘のイザベラに冗談を言うと、コボルトに対して【エアカッター】を連発しながら、「お母様、抜け駆けは許さないわよ」と真剣に言って来る。


「イリーナさん、あまりイザベラが戦っている最中に冗談でも気が散りますから刺激しないでください」


「あら、ジン、あの程度の相手なら周りを見ながら余裕を持って戦えなければ駄目よ、ジンだっていつも周りを観察しながら戦っているじゃない」


言葉では常にイリーナに負けるジンはその後だんまりで全員が殲滅するのを待っていた。


2階層に行く。

荒涼とした野原にファングボア10頭とオーガが2体いる。


オーガは大剣を構えている。


ここはヒューイとイリーナがファングボアを、ジンがオーガに対峙する。


イリーナが【アイスロック】で突進力のあるファングボアの足を止めて【アイスニードル】で7匹を一人で刈り取り残りの3匹をヒューイが剣で首を切り落とした。


ジンの方は『煌剣』を構えてオーガに横一線ブーンと音を立てながらすごい斬撃を放つと二人のオーガが大剣もろとも体まで2体一緒に切断されてしまった。


イリーナが驚きの表情で見てヒューイに「パパさんの『煌剣』での戦いを毎度見てるけど、あれを普通の剣で防ぐのは無理ね!」


「無理無理、あの『煌剣』は全てを切り裂くのでシールドを4、5層かけてやっと守れる破壊力だから岩竜の甲羅も簡単に斬撃できるよ」とヒューイは自分のことの様に誇らしげに話した。


3階層はドラゴントカゲ3匹、4階層はオーク20頭とオークキングをドールと

イザベラ、ヒューイとイリア叔母さんが順当に討伐して5階層のボス部屋にきた。


ドールが扉を開けて皆が入ると扉が閉まり、倒すまで扉は開かない。


相手はマンティコアだ。


人の顔にライオンの体、尾はサソリの尾を持つ人喰い魔物だ。


ヒューイが『神龍剣』を構えてマンティコアが飛びかかって来るところを下段から上に剣を一振り振り上げると人面の首が落ちてあっけなく斬り殺した。


側には宝箱があり、『聖者の杖』と書かれたメモとともに1本の小さな杖が入っていた。


イリーナが【鑑定】で『全ての病気、呪いを解き、人々を正常に戻し、全ての邪悪なものを浄化する杖』と出た。


「イザベラは既にこの力を持っているから、これは私が持っておくわ」とイリーナがこの杖を持つことになった。


6階層は荒涼とした砂漠が広がっている。


『空飛ぶ車』に乗り込み、2メートル砂上を飛んで【サーチ】をかけるとサンドワームが2匹、スコーピオンキングが1匹それぞれ200メートル先にいた。


イリアが『魔道砲』に向かって【サンドスピア】と呟きサンドワームに放つと、”砂の槍”がサンドワーム2匹を串刺しにして葬った。


スコーピオンキングにも同様に放ったが硬い外皮に弾かれて、霧散してしまう。


ジンが『魔道砲』にレーザービームと念じてスコーピオンキングを射抜く。


硬い外皮も砕いて討ち取ってしまった。


7階層、8階層と順調に魔物を殲滅して9階層にやって来た。


9階層は周りが氷の山に覆われ、体感気温も零下二十度ぐらいだ。


全員がシールドをしているので活動するには支障がない。


青龍が『ブリザード咆哮』を吐いて威嚇して来る。


当たれば一瞬のうちに氷漬けになって死んでしまう。

薄いシールド程度は破壊されてしまう。


ジンはシールドもかけず青龍に向かって『煌剣』を一閃すると、あっという間に青

龍の首がずれていき氷の地表に落ちた。


「ジンの斬撃は相変らず神業ねぇ」と呆れ口調でイリアが呟いた。


10階層は今度は真逆の火山地帯だ。


黒龍が高温の火炎咆哮を吐いている。


ドールが『シールドの指輪』で身を守り実際はシールドを掛けなくとも彼女の体で有れば全く耐熱があり、問題はないのだが『マジックアイテム』の使い勝っても自分なりに把しようと、あえて『シールドの指輪』を作動させていた。


『魔剣雷剣』で【縮地】から一気に間合いを詰めてジャンプし首めがけて剣を薙いだ。


硬いドラゴンの首も柔らかいものを切る感じで綺麗に切断した。


宝箱には『雨を降らす指輪』が入っていた。


干ばつで田畑に食物などができない地域とか飲料水が干ばつで干上がる時に使える。


【次元ストレージ】に入れた。


ダンジョンコアを持って、転移盤に乗り込み1階層の出口に戻った6人は『フジ』が引っ張る馬車に乗って2キロほど北の街に帰り、ギルドに戻った。


素材置き場に討伐した魔物を納品して、ギルドの食堂でエールと果実ジュースを飲みながら待っていると30分ほどで、納品書ができて、受付に「”荒涼のダンジョン”を踏破しました」といって、ダンジョンコアと地図に納品書にカード6枚を添えて出した。


慌てて受付嬢がギルドマスターを呼んでくる。


「初めまして、私はここセビーラの街の冒険者ギルドのギルドマスターをしていますトムソンです。高名なジン様一行にお会いできて感激です」


「ご丁寧な挨拶、いたみいります。ダンジョンコアと地図です」


「すごく大きいですな」とコアの大きさに驚いているギルマス。


「今後ともこの国のギルドをよろしく」といって上に上がって戻っていった。


「ジン様、カードをお返しいたします。ジン様のカードに入金させていただきました。白金63枚、金貨78枚、銀貨48枚、銅貨65枚です。ダンジョン以外の途中で討伐された魔物の料金も加算してあります」と受付嬢が丁寧に答えた。


「ありがとう!」と言って6人は馬車に乗り込み、昨日話し合った様に宿を抑えるべくギルドを後にした。


ギルドを出てジンが<タブレト>の【GOD】に『セビーラのお風呂付の高級宿で食事が美味しい宿は?』と打ち込みenterをポチった!


『ギルドを出て通りを左に20メートル行くと右側に”セビーラのともしび”と言う宿がお風呂付の高級宿で、食事も美味しいです。ツインが1泊銀貨2枚です』と表示されたので、<タブレット>の教えてくれたその宿に向かった。


「すみません!ツインを3部屋それと厩舎に馬を預けたいのですが、4泊程泊まりで部屋あいておりますか?」


「はい、205号室から207号室3部屋ツインが空いております。1泊銀貨2枚なので銀貨24枚をいただきます」


「それじゃ、冒険者カードからお願いします」と言ってジンがカードを渡した。


「お客様はSSSくらすですか?SSでもこの世界ではいるかどうかなのに私共にお泊まりいただき光栄です」と宿のご主人らしき男性がジンをまじまじ見つめていってくる。


ドールが裏に回って『フジ』を厩舎に繋ぎ、戻って来た。


「それじゃ、いつもの通り俺とヒューイ、イリーナとイザベラ、イリア叔母さんとドールでお風呂に入ったら俺の部屋で紅茶タイムしましょう」と言って夫々の部屋に向かった。


ジンとヒューイも久しぶりの宿のお風呂だがどこの高級宿のお風呂よりジンが作った『亜空間』のお風呂には叶わない。


二人とも着替えてさっぱりして、二人で先に紅茶を飲んでいたら、ドールも一緒に4人が入って来て、ケーキではなく『夢の果実の木』から桃を出してみんなで食べた。

夕食までまだ時間が有るので、自由時間として、18時に食堂に集まることにした。


イリーナ、イリア、イザベラはドールを護衛に街に繰り出して洋服屋を見て回っているようだ。


ジンとヒューイは夕食迄惰眠を貪って過ごす様だ!


17時半ごろ女性陣が帰って来て、イリーナ達は2着程冒険者用のパンツとシャツをどうやら3人で色違いを買って来ていた。


食堂に6人で降りて行き、夕定食を5人前頼んでエールをジョッキで2杯、果実ジュースを3杯追加で頼み”乾杯”して食べ始めた。


さすがにここの高級宿には商人の人がほとんどで、冒険者の身なりの人はジン達のグループとあと一組エルフの3人のパーティーしかいなかった。


食事をしながらジンが「アイショッピング如何でしたか?」とイリーナに聞くと「3人で冒険者用のズボンとシャツを色違いで購入してわ」と話していた時、商人らしき恰幅のいいおっさんが、少し酔った足取りで、近づいて来た。


「すみませんが、そちらに座っている方はゴーレムでしょうか?すごく良くできている人形の様で是非私殿に購入させて頂きたいのですが!」と言ってきた。


「確かに、ゴーレムではないが人間でもないけど俺の眷属なので家族の一員でうりものではないから売るわけには行かないな!」とジンが断った。


「そうですか、それでしたらこの人形はどちらで購入されたのですか?」としつこく聞いてきた。


「ドールはどこにも売っていないよ、俺が生み出した眷属だ!眷属ということは従魔と同義語で売ったり買ったりしたものじゃないからね」


「どうしてもダメですか?」


「家族を金で売買はできないよ」そう言って断った。


商人は残念だといった顔つきで自分の席にすごすご戻っていった。


「ジン、あの商人よくドールが人間ではないと見破ったわね」とイリーナ。


「彼は【鑑定】眼の持ち主だね!でも、商品としての【鑑定】眼なので俺たちのスキルとか魔力を見ることはできないよ」


「あら、そこまで彼を鑑定で見たの?」


「彼だけでなくここの食堂にいる連中の魔力やスキル、殺意や好意とか雑多な情報は自然と俺に入り込んでくる様になっているからね」


「ほら、あそこに座っているここでは珍しい冒険者の3人組のエルフ、彼らはAクラスで女性が魔法師、男性一人が剣士、もう一人が弓を扱うアーチャーだよ」


「そこまでわかるんだ」とイザベラが感心しているが「そんなに情報が頭に流れ込んでいると疲れない?」と聞いてくる。


「最初の頃は慣れないせいもあり、疲労感があったけど瞬時に周りの情報を整理できる様になってからはさほど疲れは感じないよ、さっきもヒューイと仮眠していたしね」


「だから、商人が近づいて来たときは殆どなぜ我々に近づいて来たのかはわかったよ」


「ジンはどんどん進化してしているのね」とイリア。


「あははは、3人の魔女様達もヒューイも日々進化してますよ」と言って食事を終え2階の部屋に戻っていくのだった。





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今日はあと66話を18時に投稿します。

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