第62話 中立派の壊滅

ヘルカスのエルバル伯爵の軍が伯爵含めて全滅した責任を取って中立派は全軍を率いてヘルカスの街に向かって進軍していた。


ジン達は一応応急処置的に破壊されたダンジョンの外壁をシールドをしたので、異界の魔物は出て来れないだろうとたかを括って王都の侯爵邸でしばしの休憩を取っていた。


中立派の軍が丁度掘削現場に差し掛かった辺りで、ジンのシールドの数メートル先の亀裂を異界の魔物が破壊して再び地上に現れ中立派の軍と交戦になった。


ハリス侯爵の斥候から連絡を受けたジンとヒューイそれとドールに侯爵、フェリシア、侯爵の騎士団50人が急ぎヘルカスのギルド前に『空飛ぶ車』で街の城壁内に【転移】して、城壁の先2キロ辺りの戦況を確認する。


一方イリーナ達は、ダンジョン踏破で得た『マジックアイテム』の『簡易転移盤』で

100名ずつ3人が手分けして、侯爵の軍隊4500人、王族派の騎士団5000人をピストン稼働してヘルカス場内に【転移】させた。


ジンは王族派の軍隊が城壁内に全員配置を終えたのを見計らい、街全体を強力な【シールド】で覆った。


ジン達はドールとイリーナ、イリア、イザベラが『空飛ぶ車』から『レーザー砲』を撃つ用意をして城壁前上空100メートルで待機させ、ジンとヒューイが城壁前500メートル前方でこちらに異界の魔物が来た場合に備えた。


魔物は3匹とも異界では最弱のゴリンプソグナだ。

それでも黒龍を秒殺できるほどの強さで、強靭な脚力と鋭い牙が武器の魔物だ。


中立派の軍15000人の約半数の7500人の兵隊がたった3匹のゴリンプソグナに向かって一斉に矢と【ファイアボール】を放った。


3匹のゴリンプソグナに当たった矢は全て硬い鱗に何の役にも立たない。

魔法師数名が放った【ファイアボール】をゴリンプソグナは自らの尾を振って霧散させてしまった。

魔法師が次の魔法を詠唱し始めるが、強力な脚力でみるみる兵士達との間合いを詰めた魔物、ゴリンプソグなは容赦無く強烈な速度で兵士達をなぎ倒し、その鋭い牙で一度に5人6人と一瞬のうちに噛み砕いてメンチにしていく。


7500人が虐殺されるのに然程時間は要しない、その内の貴族2名が既に殺され残るは4人の貴族達になっていた。


残り7000人の軍にも魔法師が数人しかおらず、相手の魔物3匹は軍隊の剣をものともせず、鎧ごと噛み砕いて食いちぎって行く。


ゴリンプソグナ3匹の後ろに30メートル程のがたいがあるアルバートザウルスが出て来て口から火炎咆哮を放つと4000人の軍があっという間に焼かれ、その中に重鎮のガウレス侯爵も含まれ、残る貴族達は3人の男爵達だけになり、全軍城門に向かって全速力で、敗走してくる。


その数はたった1500名ほど。


「ハリス侯爵様、俺とヒューイで4匹を取り敢えず片付けて、亀裂を修復して来ます、ヒューイ行こう」


「はい、パパ」


二人は【転移】で一瞬にして異界の魔物の目の前に現れ、ジンは『煌剣』でヒューイは『神龍剣』で3匹の首を切り落としにかかる。


流石に異界の魔物だ、二人の光の速度で放った一撃を鋭い脚力で避けるがヒューイもジンもその攻撃は見せかけで、素早く避けたそれよりも早く裏を取った二人はジンが2匹のゴリンプソグナを、もう1匹のゴリンプソグナはヒューイが硬い鱗を物ともせず切り落とした。


強力な火炎咆哮を放ってくるアルバートザウルスには『煌剣』が炎を吸い取り無効化

しつつ、【アブソリュートゼロ(絶対零度)】魔法をジンが放った。


アルバートザウルスの周りが一瞬で全て凍りつき寒さに弱いアルバートザウルスは一瞬で凍りついて死んでしまった。


ジンは魔物が破壊したミスリル製坑道数百メートルを再構築して【シールド】をして

更にプロテクションで保護をかけかなりの怪力の魔物でも破壊できない様に補強して埋め戻した。


15000人の兵隊のうち生き残ったのは3名の男爵と1500人の兵士、騎士達

のみでほぼ壊滅容態となった。


ジンは自分の【サーチ】範囲を掘削場所だけにしたのを悔いて反省した。


今度は応急処置的にでは無くしっかり広めにシールドをしてプロテクションをかけたので大丈夫だ。


敗走した軍が城門から無事街に入り、怪我人達はフェリシアの回復魔法の世話になり、重症者も彼女の【ハイヒール】で持ち直しギルドで休んで居る。


ハリス侯爵が敗走した3人の男爵とギルドの会議室を借りて話し合っていた。


彼ら3人は中立派の会議にも呼ばれておらずなぜ出陣させられたのかも分からずに来たそうだ。


ジンが呼ばれて、今迄の状況を説明すると3人の男爵は皆驚いていた。


ここの領主の伯爵も死に、中立派の重鎮だったガウレス侯爵も死んだ。


伯爵の軍隊と中立派の軍合わせて2万人近くの軍隊がたった4匹の異界の魔物に殲滅されたニュースはヘルカスの冒険者ギルドから瞬く間に話が王都のダルゼ、ケール、キースとレンブラント王国全土に広がっていった。


王様から侯爵に『遠距離通話器』で連絡が入り、「ジン達家族一行と侯爵、夫妻、フェリシアを含めて宰相と王家の騎士師団長を入れて打ち合わせたいので、ヘルカスの街が一段落したら王宮に来るように」と伝えられた。


ヘルカスの住民には全く被害が出なかったが、中立派の主だった貴族達と軍隊がほぼ壊滅したため、ヘルカスの宿という宿が負傷者の収容所のようになってしまっていた。


幸いフェリシアの強力な【回復魔法】で負傷者も動く事には問題なくなるまで回復

して、欠損部分はジンの【神級エクストラハイヒール】で五体満足に再生されて数百の騎士達がジンに涙を流しながら感謝していた。


騎士団の中の中隊長以上のクラスと騎士団長の数人は、ハリス侯爵と打ち合わせをした男爵達3名に直訴して、「皆王族派に従うように騎士団長以下中隊長達をいれた敗残兵の総意です」と訴えた。


男爵3名も侯爵に「今後は自分達は王様に忠誠を尽くすので、配下に入れてくれ」と跪いて頼まれ、ハリス侯爵は王様の裁断を待つまでもなく受け入れることにした。


ガウレス侯爵直属の騎士団長と軍隊はほぼ魔物の火炎咆哮で骨だけになってほとんど死亡したが、数十人は大火傷を負いながらも街に逃げ込めて、フェリシアによって命を救われ、彼らは直接ハリス侯爵の騎士団に入ることを強く求めたので彼らの家族を含めてキースの街で引き取ることにした。


ジン達は2日ほどヘルカスの中央広場に『空飛ぶ車』を駐車させて街が落ち着き、魔物が出てこないのを確認して、ハリス侯爵とフェリシアと騎士団を乗せて一旦王都に戻ることにした。


ハリス侯爵の軍隊と王族派の軍隊はイリーナ達が『簡易転移盤』に乗せて2日間で

何度も王都とヘルカスを往復して全員を戻した。


彼らの車の後に続いて3名の生き残り男爵とその兵士、騎士団も王様に謝罪を含めた会見を求めて彼らの車の後に従った。


魔物に殲滅されて残った兵士達1500名がダルゼの王城についたのが午後3時を過ぎていた。


王様は大広間に男爵3名以下1500名の騎士達、兵士達に向かって口を開いた。


「本来、中立派のガウレスに申したが、魔物がこの地上に出てきたときは死をもって償えと伝えていた、お主らはただガウレスの命に従ったので罪は無いとはいえ、そもそも中立派と言う組織にいたお主らを全く諸手を挙げて歓迎する事はできん。

男爵3人はそれぞれ、領地に戻る際ガウレスの騎士団の生き残りを3者で責任をもって面倒を見なさい。それが儂に忠義を尽くす事だ!わかったな」と男爵達に伝えた。


「ハリス侯爵よ、ヘルカスの街は弟のジョゼフにウルバルの街と共に統治してもらおうと思うがどうだ?本当はそなたに頼みたいがキースからではヘルカスは離れ過ぎておるでな・・・」


「王様、それが宜しいかと!ジョゼフ公爵様ならウルバルを統治しながらヘルカスも1日かからず動ける距離ですからな」とハリス侯爵が言った。


その後宰相から男爵3名と魔物討伐に出兵した騎士達にはお咎めはなく、男爵領に戻って生き残った仲間の兵士も面倒みることと言われて、中立派は解散して、生き残った男爵3名はなんとか生き残った兵士たちとそれぞれの統治の街に戻って行った。


後に残った、ハリス侯爵ご家族と、ジン達一行に王様ご夫妻、王女、王子、宰相と王家騎士団長が部屋を移してお茶を飲みながら再び異界の魔物達が地上に出てきたときの場合を想定して話し合った。


「ジン君、この度の働きに痛み入る。4匹の魔物を簡単に討伐した件はさすがであるな!1万人以上が犠牲になった魔物を瞬殺した力は見事であった。白金5枚を褒賞として遣わす」


「ありがとうございます。私がもう少し広い地域を【サーチ】して入れば犠牲はもう少し少なくてすんだかもしれません」


「いやいや、中立派の連中が儂らの忠告も聞かず動いた報いだ、気にするな!」


「ところでジン君、ジバルサバルから聞いたがセモアに家を移転してイリーナ殿達と暮らすことになったとか?王都の家はどうした?」


「王様、それに関しては・・・」とイリーナが答えた。


「我々娘と妹も魔法のスキルを高めたく、魔道具屋を営んでの片手間ではダメだと感じ商業地区の店を賃貸で貸して、景色の良い静かなところで毎日模擬戦をしながら魔法の技術を磨こうと意見が一致して引っ越しました。いずれ王様達のお役に立つべく、昨日もヘルカスで模擬戦をして訓練してました」


「ただ、お主らが王都にいないと何だか不安でのう、本当は儂らのそばに置いておきたかったのだが・・・」


「王様、王様と直接連絡取れるように『遠距離通話器』をお渡しして置きますので何か有れば【転移】で一瞬でおそばに現れますのでご心配なさらないでください」とジンが言った。


その後はフェリシアやエリザベート夫妻がジン達の家のことや食事やケーキの話をし出して、王様の王妃と王女迄も興味を抱き、今度男爵領地を視察すると言う名目で訪ねて行くと王様迄も言い出し、ジン達は早々王都からセルモに帰って行った。


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