第63話 『研究棟』のお披露目と海中散歩 

ヘルカスの掘削現場から異界の魔物が地上に出現し、中立派の貴族と軍隊が

全滅して中立派は全て王族派になり、生き残った男爵3名と兵士1000数十名は

男爵3名が責任持って召し抱えることで王様は特にお咎めはしなかった。


ジンは掘削部分を少し広域に補強してシールドを掛け直し、二度と異界の魔物が出てくることのないように【プロテクション】で補強した。


しかし、このヘルカスから王都までの間に存在するミスリル鉱の外壁が古代人のダンジョンで異界の強力な魔物を封じ込めていると言うことが広く世間に知れ渡ることとなり、いずれ貴族派がこれを利用してレンブラント王国始まって以来の大騒動になるのはまだまだ先のことだ。


とりあえずジン達はセモアの海が見える家に戻ってきてドールが作る朝食を皆で美味しく食べて、地下の訓練所でヒューイとドール、ジンとイリーナ、イリア、イザベラの模擬戦を始めている。


『100倍時計の指輪』を嵌めたドールはヒューイに肉薄し、鋭い剣裁きを連発して一見ヒューイを追い詰めている感じだが実はヒューイは余裕で躱していた。

ドールもそれがわかるまでに成長していたのだ。


ヒューイは『神龍剣』を構えて一瞬でドールの裏を取り攻撃を仕掛ける。


ドールは今まではそれで勝負あったが、今はかろうじて間を取り、ヒューイの攻撃を紙ひとえの差でかわす。


すぐに【縮地】で間を開け向き直って、逆に【縮地】でヒューイに詰め寄り鋭い突きのひとたちを浴びせるが軽く躱され、上段からの袈裟斬りがドールを襲う。


何とか剣で防ぐも、そこにヒューイの強烈な正拳を溝うちにくらい、ふっとばされてしまう。


「ドール、剣だけが武器でわないわよ!体全部が敵の武器だと認識して攻撃を予測しながら動かないとせっかく『100倍時計の指輪』で私の動きが見えるようになったのだから」


「了解です、ヒューイ様」と腹を抑えながら起き上がり、再び剣を構えるドール。


ドールは吹っ飛ばされながらも、ヒューイが手加減してくれているのはわかる。

手加減しなければドールのお腹に穴が空いて中の金属を撒き散らして故障してしまうのだから・・・。


一方ジンと三人の魔法師の魔法模擬戦もイリーナ、イザベラ、イリアの連携は鋭さを増してジンを攻め立てるところまで成長してきたが、何しろ相手がジンなので余裕で相手をされていた。


イリーナの得意は4属性の全てを同じレベルまで使いこなせることだ。

一方イザベラは無属性魔法で仲間にシールドをかけながら風魔法の【エアカッター】の多連発動だ。


イリアは火炎系と土の属性に秀でて特に【アースアロー】や【アースニードル】の発動速度は無詠唱で早い。


三人とも今は『シールドの指輪』で身を守りながら攻めているのでジンからの攻撃は防げるが、ジンがかなり手加減しているのでシールドも破壊されずにいる。


ジンが『煌剣』を本気で薙げばどんな強固なシールドもその前では無力だったが。


2時間以上訓練所で模擬戦をして、全員シャワーを浴びて着替えておちゃにする。


疲れた体にジンが全員に【ヒール】をかけて、癒してあげ、ティラミスとサバランのケーキを出して皆で食べる。


ジンがケーキを食べながら「みんなに聞いてもらいたいことがあるのです、実はみんなには話してなかった事ですが、先日見つけた古代人の遺跡の土地を『潜水艇』の水路をあのままにするのも勿体無いので安く1000坪購入しました」


「ええ?1000坪も?幾らで?」とイザベラ。


「はい、とても安く銀貨10枚でした」


「何でそんなに安いの?」と驚くイザベラ。


「何でも商業ギルドでは持て余していた土地で、港からも3キロも離れているから住民はこちらには住まないので買い手がいれば幾らでも良かったみたいですよ」とジンがいう。


「それで、実は皆んながお茶を飲んでいる間にそこに家を建てて、『潜水艇』を改造してみたんだけど、お昼にそちらに行ってみませんか?」


「実は『亜空間』を使ってここの地下訓練場の研究室と向こうの地下道を繋げたので歩いて直ぐに向こうに行けますから・・・」


「そこまでジンは作ってしまったの?まぁ銀貨10枚は安いけど値段の問題ではなく、今後は私達に必ず相談してね、隠し事はなしよ」とイリーナにやんわりたしなめられてしまった。


お茶も終えたので、再び地下に行って、研究室の突き当たりから扉を開けて地下道

に出るとそこはすでにあの古代人遺跡の地下で、上がってみると2階建ての立派な家が建っている。


実はジン達の家と古代人の遺跡は然程距離が離れておらず数百メートルの位置に有ったので、簡単に地下を結ぶことが出来たのだ!


こちらの名称を『研究棟』と名付けて、数秒で『家』と『研究棟』を行ったりきたりできるようになっている。


ヒューイは大して驚いてはいないが、三人の女性陣は唖然とした表情だ。


ジンはとりあえず、皆に昼食をと思い【次元ストレージ】にいれておいた、スパゲティーミートソースの大盛りと、野菜サラダにコンソメスープを出して女性陣のご機嫌を取り繕う。


「こちらの『研究棟』もマジックアイテム状態ね?」とイリーナが感心するやら呆れるやら・・・。


「『研究棟』の地下はこのカウンターの所に入り口が見えないようになっていますから何か有った場合はここから『家』に直ぐ移動できます。カウンターの入り口は常に【隠蔽(ハイド)】で我々ドールを入れて6人にしか認識出来ない様になってます」とジンがミートソースを食べながらも説明した。


「水路もシールドを2箇所設置して、6人だけが解除できるようにしてあります。

『潜水艇』も改造して1ヶ月は潜行したまま生活ができる様にしたので、これから夕方まで近海を散策して見ましょう」とジンが提案した。


昼食を食べ終えて、水路に停泊している『潜水艇』のタラップを登って室内に入った。


女性陣は当然ながら中の変わり様に驚いている。


『空飛ぶ車』同様、ベッド、お風呂とシャワー室、キッチン、【次元ストレージ】に冷蔵庫、電子レンジが備え付けられてまるで『家』と同じ様だ。


奥には厩舎まで付いていて、『フジ』を繋いで連れて行ける様にしてあり、勿論厩舎の匂いは【消臭魔法】でこもらない様になっていた。


「それじゃ、近海の散歩と洒落込みます」と軽口を叩くジン。


『潜水艇』が静かに水路を移動してセモアの海に出た。


出口の100メートル手前から潜行しているので、海に出る姿は誰からも見られない。


色々な魚が泳いでおり、セモアが豊かな漁場だとわかる。


「海の中って綺麗だわ」とイリア叔母さん。


『潜水艇』の全面には<タブレット>を設置して【サーチモニター】を兼ね備えられる様になっている。


セモアの港から南下してベルギア公国の海中深度100メートル辺りを潜行して進んでいると、前方に大型のクラーケンが1匹【サーチモニター】にかかった。


ジンは『魔道砲』でレーザービームを念じてクランケンめがけて放つと、クランケンのこめかみにあたり一瞬で葬った。


直ぐに回収して『潜水艇』の【次元ストレージ】にいれた。


<タブレット>は流石神様からの贈り物で、優秀だ。


時々潜行している海図もモニタリングできて、【MAPing】と【サーチ】を併用出来る様に自動で切り替わってくれる。


公国のチャンベルの近海あたりでUターンしてセモアに戻ってきた。


再び水路を通って、『研究棟』に戻った。


ジンは『潜水艇』を【次元ストレージ】に入れて、女性陣達と『家』に戻った。


家に戻って、ドールが夕食を準備している間、<タブレット>の【GOD】でまだ訪れたことのないシルコレア帝国に行ってみようと思い、『シルコレア帝国について』と打ち込みenterキーをポチった。


『シルコレア帝国は皇帝ハワード・ボッサ・シルコレアが統治する国で帝都はスカイヨークで帝国の中央に位置し、人口は60%が人間族、20%ドワーフ、20%が獣人族で差別はない』とでた。


更に【GOD】をクリックして、『シルコレア帝国内のダンジョン、未知を含めて全て記せ』と書き込みenterキーをポチった。


『全部で既知のダンジョンが4箇所、未知のダンジョンが2箇所全部で6箇所のダンジョンが存在します』と出た。


ジンは技術向上を兼ねて明日から、全員でシルコレア帝国に行こうと提案した。


セモアからデイマール王国と帝国の国境の街キロッケン迄迄【転移】して出入国手続きをすれば午前中の早い時間内にシルコレア帝国内に入れる計算だ。


皆も賛成して、シルコレア帝国内では車と馬車を併用することにした。


翌朝ドールが用意した朝食コーヒーとウィンナーソーセージに野菜コンソメスープと目玉焼きにクロワッサンとサラダでお腹を満たし、『フジ』も車に乗せてデイマール王国のキロッケンに【転移】した。


『王家の短剣』を見せてすんなり手続きを終えて、車をしまい、『フジ』に荷馬車をひかせて、ドールとヒューイが御者台に乗り、ジン以下イリーナ、イザベラ、イリア叔母さんは馬車の【亜空間魔法】で広げられた異空間で快適に馬車の旅を楽しんでいる。


ジンは<タブレット>の【MAPing】を働かせて、キロッケンから一番近くで冒険者ギルドがある帝国内の街を目指した。


最初の街はマールゲートという街で馬車で30分ほど東に進んだところにある街だ。


ここにはダンジョンが有る。


ギルドに行って、全員のカード6枚を出し「”ジンと5人の魔女達”がダンジョンを潜ります。大体の場所と名前を教えてください」


「ダンジョンの名前は”みのり有るダンジョン”で4階層から未踏破です。ここを出て1キロ半ほど北に行けば看板が有り直ぐわかります」


ジン達は馬車に乗ってそのまま1キロ半北に行き”みのり有るダンジョン”の入り口に着いた。


馬車は【次元ストレージ】に仕舞い、『フジ』を放してあげて、自由に遊んでいてくれと伝え、6人はドール、イザベラ、ヒューイ、イリア、イリーナ、ジンの体制で1階層に入って行った。






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きょうは第64話を20時ごろ投稿する予定です。





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