第45話 記憶の改ざん
ハリス侯爵様からの指名依頼のクエストをイリーナ親娘とともに解決して王都に戻って来たジン達は数日後、遅れて王都に来たハリス侯爵と王様に呼び出された。
ジンとヒューイ、イリーナの3人がドールが手綱を握った馬車で王都の城門をくぐった。
暫くして、衛兵から連絡を受けた侍従長が迎えに来て、王様と侯爵様が打ち合わせをしている部屋に招かれた。
「おお、ジン君、イリーナ殿もよく来てくれた。この度の件を侯爵から聞かされ事前に事なきを得られたのもお主らのお陰、助かった!礼を申すぞ」
「アーネストが何処まで貴族派に話しているのか探る手立てが無いのだが、ジン君何とかならないか?」
「王様のお許しを頂ければ、私が変装して彼の記憶を確認して参ります。もし、他言していなければ、その時すぐに彼の記憶を消去して来ますが・・・」
「そんな事が可能なのか?」
「はい、先ず変装はキースに潜んでいたトムソンに【変身】して、彼に近づき彼の記憶を探るか、全く知らない賊として彼が一人の時に潜り込んで、彼の記憶を探って来れます」
「そうか、それではジン君あやつは今は自領地のベルヘアにいる。王都には暫くは来る予定は無いので彼の一人の時に何とか彼の脳の中を探れたら探って来てほしい、周りにはハリス程強者は居らぬが、それなりの剣士と魔法師が控えているのでくれぐれも気をつけてくれよ」
「儂らは、その結果を待って行動に移ろうとおもう」
「わかりました、早めに今日にも動いて確認してすぐに侯爵様へ『遠距離通話器』で内容を伝えますよ、遅れればそれだけアーネスト公爵が他の貴族派に話す可能性が増えますから」ジンはそう云うと【転移】で既に<タブレット>で以前検索していた公爵のいるベルヘアに一人で乗り込んだ。
ジンは【サーチ】でアーネスト公爵がいる場所を確定して一人なのか探ってみる。
彼は執務室で一人で仕事をしていた。
ジンはまず己の顔を【変身】で全く違う何処にでもいる男に変えて彼の部屋にいきなり【転移】する。
瞬時にアーネスト公爵と自分を【結界】で囲い込み外に音も漏らさず一瞬で彼の背後に回って、両手で彼の頭をつかんだ。
ジンは【アトラクト】を公爵の記憶にかけて引き寄せた。
アーネスト公爵は幸いにも地下の古代人ダンジョンの秘密をまだ誰にも話ししておらず、キースに潜り込ませたトムソンの報告を今か今かと待っているところだった。
さらに、彼に古代人ダンジョンの話を漏らしたのは王立図書館の職員があまり深く考えないで公爵に話したことも分かった。
一瞬でそこまでのことがわかり、ジンは直ぐに公爵の脳内のそれらの記憶を全て消し去り、公爵の執務室に見知らぬ男が突然【転移】で現れたことさえも記憶の中から消し去って、彼の意識を数秒だけ奪い取り、ジンは王宮に戻って来た。
イリーナが王様と話をしているところに現れて、「王様、侯爵様全て処理して来ました、アーネスト公爵はキースに潜伏させていたトムソンの報告を待って、貴族派を集めて計画を発表するつもりだったらしく、まだ貴族派の連中には地下の古代人ダンジョンの話は伝わっておりませんでした」
「おお、そうかぁ!『遠距離通話器』で連絡が来るとばかり思ったがいきなりジン君が現れ、しかも未だそれ程時も立たないので潜入に失敗でもしたのかと思ったぞ」と王様が言った。
「申し訳ありません、『遠距離通話器』を使うより【転移】で戻って来た方が早いし、公爵領のベルヘアに居るよりいきなりこちらに【転移】した方が
安全でしたので・・・、それで彼の記憶を消して来ました、図書館の職員からの情報でそのことも記憶から消し、私が彼の執務室に現れたことも消したので、彼は何が起こったのかも分からずいると思いますよ」
「王立図書館の職員の方はどうするか?」
「それは、任せてください。ヒューイと本を借りに行って彼の頭の中を少し離れたところから弄って、芝居をして記憶を消しますよ」
「この後、戻る途中に図書館に寄って、その職員を見つけて一芝居打ちます」とジンは笑いながら話した。
「色々、ジン君助かったぞ、ハリス侯爵が如何に剣術が強いと言ってもまさか自領地に盗掘団が入り込んでいるとは思わなかっただろうからな!」
「なぁハリスよ!」と王様。
「ははぁー、王様、誠に面目ない」とハリス侯爵は頭を下げた。
「それと、イリーナ殿、先程話していた件をハリス侯爵とも相談して今後のこととして考えてくれ、よろしく頼む」
「わかりました、王様」
「侯爵様、近々ご家族交えて、お打ち合わせさせてください。ご連絡します」
「それじゃ、ジン君帰りに図書館に寄るのでしょ?店に帰りましょ?」
イリーナがそう言って、王様と侯爵に挨拶して、城を出た。
馬車に乗って走り出したところで「イリーナさん、何を王様に頼まれたの?
侯爵様の家族と打ち合わせって・・・」
「国に何か重大な危機が起きて平民にも甚大な被害が出ると思われる時、少なくとも王族派だ貴族派だ中立派だと言ってられないでしょ?その時に信頼できる人達で特殊な組織で動けるチームを編成すると云うことかな?」
「ふ〜ん、良いことじゃない?」
「この国ではハリス侯爵、フェリシアさん、エリザベート夫人、イザベラ、イリア、私、そしてハリス侯爵騎士団長パブロさん、王様の弟さんの筆頭公爵等が予定されるメンバーのようよ」
「あっ、図書館に着いたわよ、どうするの?」
「ヒューイとちょっと行って来ます」
ジンはヒューイと連れ立って図書館に入った。
ジンは〈タブレット〉の【GOD】に"アーネスト公爵と接触した図書館員"と打ち込みenterをポチッた。モニターに一人だけ赤点が付く。
ヒューイに彼の所に行って、空間の歪みに関する本はどの辺りに置いてあるか聞いてくれと頼む。
「俺がそばから彼の頭の中を少し触って彼が急に頭が痛いと苦しみ出したら俺がヒューイの兄になりすまして、治す振りで、彼の頭に触って記憶を消して、頭痛も治してあげる算段で行こう!」
「何だか芝居がかってめんどくさいけどわかったわ!」
ヒューイは目的の図書館員に近ずいて、「すみません、空間の歪みについての研究書物はどの辺に有りますか?」
「何だね?空間の歪み?次元空間魔法の事かな?」
「あれっ、痛たたたぁ、急に頭が痛い、割れそうに・・・」
「あっ、お兄ちゃん、急にこの人頭が痛いって苦しみ出したの、何とかしてあげて」
「どれ、私は回復術が使えるから見てあげましょう!」
ジンは図書館員の頭に両手を添えて【アトラクト】と呟き地下ダンジョンの記憶を消してから、わざとらしく「回復開始」と大声で叫び、彼に「終わりました、もう痛くないはずですが如何です?」
「おお、ありがとうございます。痛みが取れました」と喜ばれ、「お嬢さん、次元魔法は向こうの二番目の棚に有ります」と言って、更にジンにお礼を言って離れて行った。
「ヒューイ、名演技有難うな!ついでに次元魔法の本をチラッと見て帰ろう」
ジンは図書館員が教えてくれた棚に行ってパラパラと本を捲って見て、元の位置に戻した。
二人で馬車に戻りイリーナに上手く行った旨話して"魔女の道楽"に帰ってきた。
貴族派が王都の地下ダンジョンを破壊する危険は無くなったが、1年後にヘルカスの古代人遺跡跡地が王都の地下ダンジョンの最下層の真上にあるあることが起因して、異界の魔物がこの地を襲うのをジンが知るのは未だ先の話だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます