第32話 商隊の護衛依頼−1
翌朝”せせらぎの宿”で朝食を食べ終え、厩舎に行って『フジ』を馬車に繋ぎ、たらふくオークの塩焼きを『フジ』に食わせて、ギルドの前に向かった。
8時少し前だが、既に他の2パーティーは来ておりジンが自己紹介をした。
「俺は魔法剣士のジン、こいつは俺の相棒のヒューイとドールだ。宜しく」
「私は”炎の怒り”のチームリーダーのディアンヌ、こちらがグレンとサラ。グレンが剣士でサラが回復術師(プリースト)、私は魔法剣士よ!宜しくね。ちなみにパーティーランクはAクラスよ」
「俺は”雷鳴の轟”のリーダー、グロス。こいつは魔法師のアマンダとシーフのアーノルド、同じくAクラスだ」
「ところで、ジン君達のパーティ名は?ランクはいくつ?」とディアンヌが訪ねてきた。
「俺たちはパーティーではない、二人は俺の眷属だ。3人ともSランクだ」
「・・・?あなたがSランク?もしかしてジン君レンブラント王国の?」
「ああ、見聞を広めようと3人で旅してるところだ」
「ディアンヌ、お前知っているのか?」とグロス。
「ええ、噂では・・・。1ヶ月も掛からずSランクに到達した人外の青年
と美人二人の噂わね」とディアンヌが驚いて言う。
「俺は信じられねぇな、普通20年以上はかかるSランクだぞ!それを1ヶ月も掛からず金でも積んだのだろう?」
「いや、ダンジョンを4箇所踏破して、ドラゴンを5匹討伐して・・・」とジン。
「まぁ、一緒に動けばわかるだろう?」とグロス。
「おじさん、私たちを見ただけで判断できない程度ではパパには遠く及ばないわ」とヒューイが爆弾発言をした。
「なななんだとう?」グロスが驚く。
「気にせんでくれ、ヒューイは未だ生まれたばかりの赤ちゃん龍なんだ」
2パーティーの全員が「・・・・」
ちょうど商隊の馬車が4列、隊列を組んでやって来た。
商隊のリーダーがおりてきて皆に挨拶をした。
「私は此の商隊のリーダーのカシムと言います、3泊4日間宜しく」
ジンは彼はそこそこできると感じた。おそらくAランクの冒険者程度には剣が使える様だ。
一方カシムは直ぐにジンが人外の力量だと察知した。
8時半になり、ジン達の馬車を先頭に中衛にディアンヌ達、しんがりをグロスのパーティーが受け持って、最初の宿泊地ロデスに向かった。
城門をでて、何事もなく順調に馬車を進めて行く。
2時間程した辺りで、グリーンウルフの群れ20匹が馬車に向かって来る。
ドールとヒューイが剣で10秒程で10匹ずつ片付け、回収した。
流石の剣捌きに見とれてしまうディアンヌたち、噂は本当かもと思ってしまう。(本当なんですが!)
しばらく行くと今度はオークが15匹、馬車を狙って来た。
ジンは『幻影』を投げて15頭の頭をダガーで砕いて瞬殺して、回収する。
途中の平原で馬車を止めて昼食休憩をとる。
ジンは商隊のリーダー、カシムに「【結界】でグループを囲うので見張りも何も必要ない」と告げて、2パーティーにもその旨告げて各々食事をとる。
ジンとヒューイはアンチョビのピザとボルシチのスープ、それに生ハムを切って食べた。
『フジ』にホーンラビットの2匹の肉をあげた。
「ヒューイ、食後に甘い果物を食べるか?」
「私はいいわ!後で喉が乾いて水が欲しくなるから」
「それもそうだな、この国は果物が美味しいと云うからどうかな?っと思って・・・」
休憩しているとディアンヌがジン達の馬車に来て、「中衛と後衛を入れ替えて私たちがしんがりに行くわ」と言って来た。
「俺たちは先頭で良いのか?」とジンが聞くと、「あれだけ見事に魔物を討伐してくれる先頭はそう、いないから頼むわ」と言って戻って行った。
昼食休憩も終わりロデスに向かって動き出した。
3キロほど進むと20人ほどの盗賊が隠れているのが【サーチ】に掛かった。
ジンは<タブレット>にマーキングで表示して一度に【イレージング】で消し去った。
商隊のリーダーのカシムが真っ青な顔でその様子を見ている。
中衛のリーダー、グロスも剣を抜いて準備しようとしていた矢先、ジンが何かしたら盗賊がいなくなったのに驚いている。
更に進むとオーク2体が剣を抜いて来るが、ドールとヒューイが一瞬で首を跳ね飛ばして回収した。
中衛に来て初めてジン達のすごさを目の当たりにしたグロスは信じられないといった顔で馬車に乗っていた。
その後は順調に最初の泊まりの地、ロデスに着いた。
宿は全員一緒の宿で、ドリスと『フジ』は厩舎の中で休み、ジンとヒューイはツインの部屋の201号室、ディアンヌはツインともう一部屋シングル、グロス達も同じだ。
202号室にディアンヌとサラ、シングル部屋はグレンで210号室、グロスとアーノルドが203号室、アマンダが211号室、商隊は3階に全員で12名部屋をとった。
夕食は冒険者達は同じ時間帯に食堂で皆で食べる。
男性陣は追加でエールで喉を潤しているが、ジンは果実ジュースにしている。
もちろんヒューイも同じ果実ジュースだ。
女性陣もエールで喉を潤していて、ジンの隣にディアンヌが座って話し掛けてきた。
「ジン君は冒険者になってどのくらい経つの?
「俺か?もう直ぐで丸1ヶ月かな?ど田舎のニーホンというところからでてきてキースで冒険者登録したのが最初なんだ」
「それにしては凄い剣捌きね?」
「村で小さい時からオジキに鍛えられていたからな、剣と体術には自身があるんだ!」
「体術も?」
「ああ、岩竜みたいに硬い甲羅を剣で切るのは億劫だから体術で仕留めるよ」
「剣でもダメなのにどうやって?」
「俺の体術の流派に『掌底破』という技があって、気を手のひらに集中させて甲羅の上から放つと、甲羅自体は破壊されないが、内臓をぐちゃぐちゃに破壊して殺すんだ」
「そんな技、見たことないわ!レンブラント王国ではその武術流行っているの?」
「いや、俺の村だけだな!」
「今度、その技で魔物を倒してみせて」
「ウルフなど相手では穴が空いて商品価値がなくなるから大きな魔物相手でないと、ワイバーンがでてきたら見せてやるよ」
「いやいや、ワイバーンがでてきたら皆で相手しないと大変でしょう!」
「ワイバーン辺りならヒューイやドール一人で5匹ぐらい平気だぞ」
「あなた達ってどういうメンバーなの?」
「二人とも俺が育てている眷属でほら、従魔登録してるだろう?」
とヒューイの首にかかっている従魔の印を見せた。
「こんなに綺麗な女性が魔物?いやドラゴンの赤ちゃん?」
「パパに卵から孵してもらったから・・・」とヒューイがニコニコして言う。
夕食は珍しく魚料理で、”イエロウテイル”というブリに似た照り焼きにご飯とスープでジンは久しぶりに昔の味を楽しんだ。
食事の後、ジンとヒューイは部屋に戻ったが、グロスやディアンヌ達は街に出て飲み直す様だ。
ジンとヒューイはシャワーを浴びて、着替えてベッドに早めに横になって意識を手放した。
翌朝、朝食を済ませて馬車に乗って皆を待った。
全員が揃ったところで、次の宿泊地ランスに向かって馬車を走らせて行く
。
3時間ほどで国境の町につき出入国手続きを済ませてランスに向かう。
途中国境を越えて直ぐにファングボア5匹の群れが来るが、ジンが【エアカッター】で3匹を一度に倒し、ヒューイが【ファイアアロー】で2匹を瞬殺した。
その後は何事もなくランスに2時頃着いて、宿に入った。
少し早いのでランスの冒険者ギルドに入って、途中で討伐した魔物達を納品して、清算金を受け取った。金貨7枚だった。
掲示板にワイバーン2匹の討伐依頼が金貨50枚で出ていたので、剥ぎ取って受付に出しているところに偶然ディアンヌのパーティーが来たので挨拶すると「ジン君討伐依頼受けたの?」ときいてきた。
「ディアンヌ、ワイバーン討伐だけど俺たちのを見に来るか?掌底破を見せてやるぞ」
「ほんと?じゃついて行くわ!」
「俺は街をぶらぶらしているわ」とグレンが言う。
サラはディアンヌと見に行くと言うのでワイバーンの場所を聞いて、ギルドを出た。
ギルドから北に7キロほど行った、丘のそばの平原に2匹いると言うのでジンが裏に回りディアンヌ達に自分の肩に手を添えてくれと言って、【転移】をして一瞬でワイバーンの見える平原についた。
「ジン君、今の魔法もしかして【転移】?」
「そうだが?何か・・・?」
「私初めてよ、転移ができる人って、お伽話かと思っていたわ」
「もう少し、近く行くぞ」ディアンヌをお姫様抱っこし、サラはヒューイがお姫様抱っこして【縮地】で間合いを一瞬で詰めて、彼女達を降ろし、ジンはつかさずジャンプしてワイバーンの顳顬に掌底破を打ち込む。
ワイバーンは一瞬首がガクッとして、頭が吹っ飛び一瞬で死んだ。
もう1匹はヒューイが首を切り落として瞬殺し、ワイバーンとしては何が起こったのか分からずに死んで行った。
【次元ストレージ】に入れて回収すると、「ジン君今のは?」
サラが「次元ストレージですね?持っている人、初めて見ました」と驚いていた。
再び、【転移】でギルドに戻り、素材置き場に納品して、納品書を受け取って受付で金貨50枚を受け取り、あっという間に金貨50枚を稼いだ。
「ディアンヌ、サラ、稼いだからお茶と菓子でも奢るぞ!」と言って、5人で近くの茶店に入った。
「ジン君、君たちの戦い方は冒険者のそれとはレベルが違いすぎるわね、1ヶ月でSランクになるのもうなづけるわ」
「ジン君貴方どのくらい、魔法使えるの?回復魔法って使える?」とサラ。
「回復魔法は使えるぞ、まぁ死んで1日たったら生き返らないけどな」
「剣のスキルはどのくらいなの?」ディアンヌが聞くが、
「あまり冒険者は自分の技量は言わないもんだぞ!」とやんわり断った。
「ただ剣は3歳の頃から鍛えているから、負ける気はしないがな」
「宿に戻ったら、私と模擬戦してくれる?これでもAランクなんだから」
「ディアンヌさん、無理よ。パパはSランクの侯爵にだって手抜きして勝つくらいだから」
「レンブラント王国の侯爵のハリス侯爵?彼にも勝ったの?」
「そうよ、パパは13秒で勝ったわ。しかも本気出す前にね」
「でも、そんな人と戦って見たいわ!」
「ドールとしてみたら?それでも数秒で勝負が決まるけどな」
「この子もそれほど強いの?」
「だから、3人ともSランクと言ったろ!」
1時間ほど剣談義をして、宿に戻った。
夕食までのんびり昼寝して、ヒューイとうたた寝して食堂に降りて行った。
夕食を皆で食べ終え、さっさとジンとヒューイは部屋に戻った。
残った”炎の怒り”と”雷鳴の響”のメンバーがエールを飲みながら話し込んでいた。
「グロスさん、ジン君の強さは本物よ、と言うより人外だわ。素手でワイバーンを秒殺する冒険者なんて見たことないもの。それに【転移】魔法が使えて、一瞬でどんなところにも移動できる【転移】なんて初めてよ。【転移】は一度行ったところしか【転移】できないはずでしょ?」
「あいつはそんなにすごいのか?」
「眷属のヒューイちゃんが言っていたけど、真の強者はその足捌きや動き、たたずまいだけでわかるものだと言ってたわ!確かにそうかもしれない」
そんな会話をしながら飲んでいると、商隊のリーダーのカシムがエールを持って近寄って来て、皆にエールを奢ってくれた。
「先ほどの話を聞いていましたが、確かにジン君は飛び抜けて強いですよ。
恐らく私が知っているSランクの猛者でも彼には瞬殺されるほど強いとおもいます。彼の動きに全く隙はないし魔力量も1000とか2000の数値ではないですよ」
「ええ?だって、人間は100を超える人が数人だけでしょ?その10倍以上?」
「ええ、恐らく1万も超えているかも・・・」
「カシムさんは【鑑定】のスキル持ち?」ディアンヌが聞いた。
「はい、全部は見れませんがね!」
「彼が出来ない魔法はないのじゃないかな?恐らく7特性持ちかと」
「世界で初めて?」とディアンヌ。
「普通は多くて2、3特性だけだろ?それを全部持っているなんてありえねぇぞ!」とグロスが叫んだ。
「勿論推測ですがね、でも恐らくあってますよ」とカシム。
「彼が前衛に入れば、あなた方はすごく楽ですよ、ドラゴンが来ても瞬殺してくれるはずです」と笑いながらカシムは戻って行った。
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