第31話 公都ニースア

ジン達3人はトロンの街でダンジョンを踏破して、『インビジブルの腕輪』などを得て、ベルギア公国の首都ニースアにたどり着いた。


途中、強盗団を討伐して金貨10枚を稼いだりしたジンは”せせらぎの宿”に2泊おさえて部屋に上って行った。


宿はツインだけあってとても広い。シャワールームにはお風呂がついている。この世界でお風呂があるのは貴族の館ぐらいと聞いていたので早速ジンが入ると「パパ、私も」って、ヒューイが素っ裸で入って来た。


「お前な、体系的には赤ちゃんではなく大人の女性なんだから、こちらが恥ずかしいだろう」


「別に親子なんだし、私はまだ生後1ヶ月の子供だよ」


「いやいや、どう見てもイザベラ辺りより発育が・・・」とジンは下半身を抑えながら湯船に浸かった。


全然頓着しない絶世の美女ヒューイは「やはりお風呂はいいねぇー」なんて呑気に言って一緒に湯船に入ってくる。


ついつい、ヒューイの豊満な胸に目がいくジンだった。

のぼせ気味に着替えたジンとご機嫌のヒューイは階下の食堂で夕食をとる。


久しぶりにマナバイソンのステーキにスープと野菜サラダにパンだ!

勿論美味しい南国の果物がついてきていた。


既に体系的には成長したヒューイも今では2人前は食べずに1人前で足りているようだ。


夕食を食べ終え、ジンはヒューイと街を散策してみる。


首都といっても公国は比較的こじんまりした国なので、レンブラント王国の王都ダルゼ程賑々しくはない。


公爵が騎士道を重んじる人というだけあって、武具の店がかなり多い。

冒険者のレベルより騎士団のレベルの方が高いという、珍しい国だ。


高そうな店先から聞いたような声が聞こえて来て、見るとトロンのギルドマスターのエルフのグラシアが中年の男性と会談していた。


グラシアが視線を感じたのか、ジンを認めて「あら、ジン君!ちょっと来ない?こちらニースアのギルドマスターのケビンさんよ!」


「ようこそ、ベルギア公国へ!公都のギルドマスターをしているケビンだ」と握手を求められた。


「ダルゼで冒険者をしているジンです、初めまして」と手を握り返して挨拶をした。


「随分綺麗なお嬢さんを連れているね」


「娘みたいなヒューイです」とジン。


「レンブラント王国の至宝のジン君とヒューイさんか・・・」


「ジン君達はこの国には何か目的があって来たの?」とグラシアが聞いてきた。


「いや、俺たちはレンブラント以外知らないので、見聞を広めるために旅行方々、冒険者の旅をしているだけなんだ。ついでにスキルとか増やせればと思ってね」とジンが答えた。


「ジン君、このニースアにもまだ未踏破で誰も最下層にたどり着いていないダンジョンが1箇所あるから挑戦して見たらどうかね?」とケビンがジンに話しかけて来た。


「明日にでも潜って見ます。それじゃ、俺たちは宿に戻るので」と行ってその場を離れた。


「ケビン、どう見る?彼らの凄まじい魔力量とあの隙のない足さばき。とても冒険者になったばかりとは思えないわ」


「彼らはおそらくこの公国が滅びるほどの相手だな!我が国の騎士団長でさえ瞬殺されるだろうね。それ程人外の怪物だよ」


「恐らくは『迷い人』じゃないかしら?」とグラシアがケビンに言った。


「そうかもしれないね、【隠蔽】で隠しても隠せないほどの魔力だったからな・・・。おそらく通常の人の100倍じゃ効かない魔力があるね」


「そうね、魔力だけじゃなく剣、体術も半端じゃないわ」


「明日、ダンジョンに潜るようだからお手並みを拝見とするよ。あそこのラスボスは相当手強い気がするからね」とケビンが言った。


そんな話をしているとは知らずジン達は宿に戻って、ベッドに潜り込んだ。


よく朝、早めに朝食をとってジン達は3人でギルドに向かい、ニースア管轄のダンジョンを聞いて、その”深淵のダンジョン”に潜る事を伝え、カードを提示した。


場所は城壁を出て5キロほど東に向かった丘の麓にあった。

兵士が入り口に4人おり、ジンはカードを提示して、ドール、ヒューイとともにおりて行った。


1階層は洞窟にゴブリンが5匹ほどいる。

瞬殺で耳だけ切り取り、死体はそのままダンジョンの肥やしにした。


2階層はファングウルフの群れ20頭程がいる。


ヒューイが【エアカッター】で首を切り落としていく。


途中から『神龍剣』で切り倒して、ヒューイ一人で20頭全てを倒し回収した。


3階層は平原ステージでマナバイソンが5頭いる。

ここはドールが綺麗に首を切り落として、回収。


更に進むとオークが2体いる。

ドールとヒューイが1体ずつ刈り取って4階層に向かった。


4階層は海のステージになっていた。

途中迄3人は【飛翔】魔法で海上2メートル上を飛んでいたが前方にケートスを認め、ドールが海中に飛び込んで襲ってくるところを【アイスアロー】で射止めて、ジンが【スティール】と唱え、同期と念じると【次元ストレージ】にケートスが回収された。


ドールが海中から浮き上がり再び海上2メートルを【フライング】して前に進むと今度はクラーケンが1匹いる。


ドールが再び海中に入り、【アイスアロー】を放って殺し、ジンが【スティール】と唱えて、同期して【次元ストレージ】に入れた。


5階層はボス部屋で扉を開けると、ミノタウロスがハルバードを構えて待ち構えていた。


ヒューイが『神龍剣』でジャンプ一番首めがけて横に薙いだ。

ミノタウロスがハルバードで避けるも、そのハルバードを切り倒して首までも切断してしまった。


「あれ?パパ、ハルバードって木でできてるの?なんで簡単に切れてしまって・・・」


「お前の斬撃が凄いから金属までも一瞬で切ってしまったんだよ」


ボス部屋にしてはあまりにも弱いと3人が感じていたが、通常の冒険者達ではミノタウロスを3、4時間かけてもやっと倒せるかどうかだと、彼ら3人は知らないのだ。


宝箱には『解毒ポーション』が入っていた。

ジン達にはあまり必要ないが、イザベラに渡そうと、【次元ストレージ】にいれた。


6階層は岩のステージに岩ゴーレムが2体、馬鹿でかい岩を持ち上げて投げてくる。


ジンがかわしながら掌底破を放ち1体を倒し、ヒューイが正拳で魔石のところを叩き込んで風穴をあけて葬った。


7階層はオーガが3体いる。

ジンが『煌剣』で久しぶりに馬庭念流を華麗に舞、一瞬で3体の首を落としたが、ヒューイでさえその速さを見逃すほどだった。


8階層にはリザードマンジェネラルが5体いる。

ジンは『幻影』を抜いて、解き放って5体の頚動脈を切り、あっという間に血の海のなか、首を切り落として血止めの後回収。


9階層はスケルトンキングが剣を持って立ちはだかっている。

ドールが切り倒すが、すぐに再生して向かってくる。


キリがなくドールとの戦いが続くので、ジンが【聖魔法】の【浄化】をスケルトンキングに放つと金色に光った光がスケルトンを包み込み、凄い悲鳴をあげながら霧となって消えていくスケルトンキング。


剣だけが残った。

特に回収するほどの剣ではないので10階層に向かった。


ボス部屋で扉を開けると不死系のバンパイアキングがいる。

ジンは異界の魔物の事を想定して【ブラックホール】を作りバンパイアキングを異世界の宇宙空間に飛ばしてみる事にした。


「ヒューイ、ドール少し出口側に離れていろ、俺より後ろにいてくれ」


ジンはバンパイアキングの目の前に小さなブラックホールを生じさせて、あっという間に吸い込み次元の彼方にいなくなって、ブラックホールを解除した。


あまり使い勝手がいい魔法ではないとジンが思いながらも強烈な魔法には違いなかった。


危うく宝箱まで吸い込んで仕舞うところだったが何とか無事で、開けて見ると『転移盤』と出ている。但し1度行った事が有るところにしかいけない。


フリーサイズだが最大人数50名迄と出ている。

イザベラに渡そうと思って回収した。


ダンジョンコアがないのでここが最下層ではないようだ。


11階層におりて行った。

11階層は砂漠のステージで、サンドワームが5匹も【サーチ】にかかった。


ジン達は砂上を【飛翔】で飛んで、サンドワームがいる所に【アースニードル】を何発も打ち込んだ。


たまらずサンドワームが地中から出てきたところを、ドールは剣で、ヒューイは【エアカッター】、ジンは【ダークカッター】でそれぞれ切り刻んで殺した。


12階層はワイバーンが5匹もいる。


ジンがワイバーンの足を一瞬で【アイスロック】かけて動けなくして、ドールとヒューイが【縮地】で一気に首を切り落として5匹を葬った。


13階層は死臭が鼻をつくほどの匂いが立ち込めた洞窟だ。


スケルトンが30体、その後ろにはミイラが20体以上、更にその後ろからバンパイアが30体程押し寄せてくる。


ヒューイが【ファイアボム】を強烈に撃ち放った!

ヒューイの【ファイアボム】は常人のそれとは違い【インフェルノ】に近い。


数千度の灼熱の塊が爆裂して、一瞬数万度にも達する強烈さだ!

ヒューイより前にいる全ての物が、灰になり霧散する。


ジンが最後の仕上げに【浄化】をして、悪しき瘴気もことごとく清め、匂いも無くなり、14階層の入り口が見えてくる。


14階層は火山のステージで、キマイラが2匹が炎を吐いて威嚇してくる。


頭の獅子の部分は通常では鬣(タテガミ)が硬く剣が届かないが、体の部分の山羊の部分が狙い目だ!尾は竜でグロテスクの極みで有る。


ドールが【縮地】で間合いを一瞬にして詰め、胴体の部分を目にもたまらぬ速さで上段から剣を打ち下ろした。


真二つに体が別れたキマイラが死んでも未だ口から炎が出ていた。


もう1匹は硬い頭部の鬣も何のその、ジンは『煌剣』を一閃して首を切り落として回収した。


15階層は扉が有り、ラスボスの部屋のようだ。

ドールがユックリ開けると、30メートルを超える黒龍の周りには配下の様に4匹の大蜘蛛がキィキィ鳴いて口から粘着力のある糸を吹きかけてくる。


ヒューイが4匹の大蜘蛛に【ファイアアロー】を4連発放った!しかし、本来火に弱い筈の大蜘蛛は黒龍の配下だけ有り、火には強い様だ。

糸を絡めて、火の矢を撃ち落としてしまった。


ジンが4匹をそれぞれ2匹ずつ【結界】に閉じ込めて、一気に中の空気を真空にした。


数秒後4匹の大蜘蛛は口から糸ではなく、血飛沫を吐いてのたれ回り、最後は動かなくなって死んだ。


その間、黒龍をドールが相手して、何度か『雷剣』で雷を打ち下ろすが巨体で硬い鱗に覆われた黒龍には効いていない様だ。


ジンが『煌剣』を横一線に薙ぐと黒龍の首が次第にずれて、ドスンと地面に落ちた。


「さすが、ご主人様の斬撃は神業ですわ」と珍しくドールが褒めて感嘆の声をあげた。


ジンの剣さばきはそれ程までにレベルが上がって、『煌剣』が当たらなくてもドラゴンの首を簡単に切り落とす神の領域に来ていた。


そばに宝箱とダンジョンコアが有り、宝箱の蓋をドールが開けると『竜宮の木の実』と書かれた木に水色の実が10個なっていた。


ジンが【鑑定】すると、”この実を食べると、1日中水の中で過ごす事が自由に出来、呼吸も話も、魚達の会話もできる実で一つ取れば新たに一つ実がなる”と【鑑定】にでた。


今後、湖や海の魔物退治にドールだけでなく、ジンやヒューイも参戦できるので便利だ。【次元ストレージ】に入れて、3人はダンジョン入り口まで戻った。


冒険者ギルドに戻り、まずは素材置き場に大量の魔物を置いて、ギルドの食堂で昼飯を食べながら待つことにした。


ギルドで昼を食べるのはヒューイも初めてでジンとヒューイ、ドールは空いている3人がけの丸テーブルに着いた。


マナバイソンのステーキー2人前とコンソメ風野菜スープとパンを頼み、食後の果実ジュース2個をドールの前に置いて食べはじめた。


ジンの側には絶世の美人が二人いるので、目立ちすぎる!


案の定、少しほろ酔いの冒険者が寄ってくるが、ヒューイの【殺気】で近づけずに席に戻って行った。


定食を食べる頃に納品書も出来上がり、受け取って、果実ジュースをヒューイと飲んで、受付に納品書、カードそれにダンジョンコアと地図を出すと慌てて、受付嬢がギルドマスターを呼びに2階に上がった。


2階からギルドマスターのケビンがグラシアを連れ立って降りて来た。


「やぁ!ジン君やはりダンジョンを踏破したんだね、凄いな!ダンジョンコアもすごく大きいし、ラスボスの部屋の魔物は何だった?」


「大蜘蛛4匹を配下にした、黒龍だったが直ぐに首を切り落として終わったよ!」


「ジン君、が言うと本当に簡単な様に聞こえるけど、大蜘蛛4匹だけで半日かかるわよ、まして黒龍を3人で?」とグラシアが呆れて言った。


ジンはダンジョンコアと地図をケビンに渡し、清算金の白金67枚、金貨58枚、銀貨85枚、銅貨45枚を受付嬢から貰い、カードに履歴を打ち込んでから入金もカードにしてもらった。


ケビンが納品書を見て驚いていた。

「ジン君達の魔物討伐の数はAクラスのパーティーが5組以上束になっても2日以上かかる魔物の数だね!全く驚きだ」とジンをしげしげと見つめて言った。


ジンはあまり見つめられるのは苦手なので、そうそうに「面白いクエストでも又見て依頼を受けて来ます」と言って、掲示板の方に3人で向かった。


「ジン君は意外にシャイだわね」とグラシア。


「未だ、若いからね」とケビン。


二人とも、ジン達が自国のベルギア公国でないのを残念がっている様子だ。


ジン達は掲示板に商隊の護衛依頼が有るのを見つけた。


明日出発で、ニースアからデイマール王国の王都シューベルまで3泊4日の護衛依頼で、1パーティー金貨30枚だ。


ジンは、ベルギア公国の後はデイマール王国に行く予定だったのでヒューイに言ってこれを受けることにした。


「すみません、このクエストを受けますのでよろしく」とジンが張り紙を剥いで受付嬢に渡した。


「ジンさん達以外に後2パーティーの方6名の男女の人たちです2パーティーともAクラスですから安心ですよ、ええ?Sクラス?失礼しました。明日の朝8時にギルド前集合で、8時半出発です。集合時間に遅れない様おねがいいたします」と言ってカードに印字した。


ジン達は”せせらぎの宿”に戻って行った。

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