第17話 オークション

王都に来てから”魔女の道楽”の魔道具屋の2階に下宿するようになったジンとヒューイは初日と2日目と立て続けに未踏破のダンジョンを踏破したジンは未だ冒険者登録をして1週間と数日でAランクの冒険者に昇格した。


”密林のダンジョン”で得たお宝『遠距離通話器』と『高級ポーションのエリクサー』を”魔女の道楽”に渡したのだが、イリーナは『エリクサー』は店において居ても問題になるので、オークションに出すことにした。


オークションの手続きはイリーナさんが全てして、王都でのオークションが3日後に王宮近くのハリス侯爵邸で行われるということになった。


「ジン君はオークション参加できるわよ、私は資格が有るのでイザベラは出品者という資格があるし、ジン君はランクA以上の冒険者なので、ヒューイちゃんを連れて四人でオークションを楽しみましょ?」


「気になる物が有れば落札してもいいのよ?ジン君は大金持ちになったのだから」とイリーナさんが茶化しながら言った。


夕食はマナバイソンのステーキに野菜スープとジンとヒューイはご飯で、イリーナとイザベラはジンが出してくれたクロワッサンのパンでお腹を満たした。


オークションが行われる3日後までは、ジンとヒューイは毎日冒険者ギルドに通って通常の討伐依頼のクエストを受けて、カードの金額は白金55枚、金貨355枚、銀貨580枚、銅貨395枚に膨れ上がっていた。


オークションの当日イリーナは学校から早めに帰宅して、夕食を四人で早めに済ませ、『フジ』を馬車に繋いで、侯爵邸までジンの馬車で揃って行くことになった。


いつもよりイリーナと娘のイザベラは着飾って、ジンは普通に綿パンにシャツと冒険者の格好で、ヒューイもワンピースであまり派手にしないで侯爵邸の中に入った。


後ろの方に四人で座り、番号札を持って、オークションの開始を待っていると、イザベラのところに侯爵様の娘フェリシアが寄って来て「あら、珍しいわね、イザベラがオークションに来るなんて!」


「今日は出品者として参加してるの、ジン君がダンジョンで取って来たお宝なのよ」


「ジン君、お久しぶりです。ダンジョンを2箇所も制覇したと聞き及んでおりますが流石ですわ、きょうは存分にお楽しみください」


「イリーナ先生、ご無沙汰しております」


「フェリシアもたまには我が家に遊びにいらっしゃい、今はジン君も下宿していつもいるわよ」


「えええええ、ジン君がイザベラの家に一緒に住んでいるのですか?」


「たまたま、ジン君が下宿先を探していて条件が我が家と一致したのでね!」


それを聞いてからのフェリシアは何故か機嫌が麗しくなくなり、そわそわとして侯爵様たちの所に戻って行った。


「フェリシアが私とジンが一緒に生活していると誤解して、ヤキモチ焼いているわ!」


「いや、一緒に生活はしてるけど、別に一緒に寝たり風呂入ったりしてるわけではないぞ、なに誤解する?」


「同じ屋根の下というだけで誤解してるのよ」


「俺にはよくわからん」


そんな会話をしていたら、オークションの開始が告げられた。


前の方には侯爵夫妻に娘さん、その隣が王様ご夫妻と王子と王女が居て、その隣が公爵夫妻と息子さんと貴族が3列まで陣取っていた。

その後ろに大商人達が並び、一般のジン達が2列ほど後ろの席を占めた。


最初は魔物の皮とか牙、などが出て、後半にドラゴンの牙も出て来た。


ドラゴンの牙が白金5枚あたりで取引されたのには驚いているジン。

魔道具は殆どなかった。


司会がいきなり次はすごいですよ「最高級のポーション、エリクサー」です。手に入れれば不老不死さえも夢ではないポーション白金1枚からいきます」


白金5枚、白金7枚、・・・白金15枚、白金20枚、・・・白金35枚、白金38枚、白金40枚、


これにはジンはびっくりだ!まさかこれほどまでしてこんなポーションが欲しいのかと・・・。

結局白金48枚で落札された。


「イザベラ、すげー金持ちになったじゃん」


「何言ってるの、もともとジンがダンジョンで得たものじゃない」


全てのオークションが終わり、結局”魔女の道楽”が出した『エリクサー』が一番の高額商品だった。


ハリス侯爵がジンを見てニヤッと笑い軽く挨拶を交わした。


ジンは面倒な人達が前の列に居るので、後ろの席から動か無いでイザベラが

白金48枚を受け取って戻って来るまで、ヒューイと席から動かず待って居た。

イザベラがフェリシアと連れ立って戻って来た。


「イザベラから聞いたのですが『エリクサー』はジン君がダンジョン制覇で得たお宝だそうですね?」


「イザベラにあげたもんだよ!」


「王様が落札したそうよ」とイザベラ。


「ところで、ジン君がどうしてイザベラの家に下宿することになったのですの?」


「まずは冒険者ギルドに近く、厩舎が有って、安いところと言ったら偶然イザベラのところだったということだけど・・・、別に他意はないぞ!」


「そうだ、フェリシア明日でもお昼うちに来ない?ジンが作るお昼はとても美味しいのよ。この国では食べたことがないものよ」


「あした?分かったは、明日11時半ごろ”魔女の道楽”に遊びに行くわ」

「ジンも明日は午前中出かけないで居てくれる?」


「11時半までに帰って来てればいいのだろ?簡単なクエスト受けても十分帰れるよ」とジン。


「ダメよ、ジンの言うことあてにならないわ」


「俺の言うことほど確かなことはないぞ!」

結局明日は午前中はギルドに行かずに居ることになったジンであった。


四人で家に戻ったジン達は、イリーナがジンに「オークションでのお金は私が予想した通り大金だったわ、これはジン君のものよ」


「いや、イザベラに上げたのだからイリーナさんとイザベラで自由に使ってください」


「そうは行かないわ!こんな大金何もしなくても一生暮らして行ける額よ。我が家でも魔道具の材料を買って売買しても利益が出るから結局このお金がさらに増える勘定よ」


「でも、俺もお金は要らないもの、既にポーションの落札金額よりダンジョンで踏破した清算金の方が沢山有るから必要ないです」


「分かった、そしたら下宿代は今後要らないわ」とイリーナ。


「でも時々、魔物の素材を持って来るよ。ダンジョンで狩るドラゴンも結構こちらに持って来れば魔道具の素材になるでしょ?それを加工したりするのを見るのも勉強になるしね」


「ジン君の好きなようにして。とりあえず、オークションのお金は我が家で運営することにするわね」とイリーナが言ってこの件には蓋をした。


「オークション会場でハリス侯爵様と王様からジン君を王宮に連れて来て紹介しろと言って来たわ、ジン君はまだ王都に慣れて居ないのでもうしばらくは待ってくださいと話を先延ばしにして来たけどね」


「俺は王宮なんて堅苦しいところは嫌いだよ!明日も冒険に行きたいのにフェリシアさんが来るなんて言うから、午前中は居なければいけないし」


「フェリシアが来るの?」


「だってお母様、フェリシアったら凄い怖い顔して何で私とジンが一緒に生活してるのかと、えらい剣幕なんだもの・・・」


「仕方ないからお昼にジンの作るピザでも食べてご機嫌を取ろうと思って!」


「イザベラ、それって、逆効果だわ。おそらくそんな美味しいものをいつもイザベラがジン君から作ってもらって食べてるなんて思ったら、かえって燃え上がってしまうわよ!」


「そんなぁ、お母さん・・・」


「何でピザ食わしたら燃え上がるんだ?」


「うー、ジンの鈍感!」とイザベラが叫んだ。




翌日・・・。


「ジン、ヒューイちゃん、少し掃除するから起きてちょうだい!」


「ん〜ん、あさご飯は?」


「台所に二人分あるわ、フジにももう朝ごはんと水は上げてるわ」


「分かった、ありがとう!ヒューイ起きるぞ」


「はーい、パパ午後からはフェリシアさんが帰ってから残りのダンジョンに行こうよ」


「ああ、俺もそのつもりだ、早く飯食って掃除でも手伝おう!」


「イザベラ、お前【クリーン】魔法で綺麗にすればいいじゃん」


「勿論そのつもりよ、ジン達が寝てたらあなた達まで綺麗になっちゃうでしょ?」


「その方が一石二鳥でいいじゃん!」


「つべこべ言わないの、早く食べて手伝って!」


「ハイハイ」


11時ごろにフェリシアが騎士団三人に護衛されてやって来た。

護衛の騎士は3時ごろまた迎えに来ると告げて直ぐに侯爵邸に帰って行った。


「ジン君はどこで寝泊まりしてるの?」


「2階の一番大きい部屋にヒューイちゃんと一緒の部屋よ」とイザベラ。


「ちょっと上がって見させてもらってもいい?」


「ジン、構わない?」


「ああ、別にパンツなんか出てないからいいぞ!」


「あのねー、ジン、そう言うことではないの。ホント、デリカシーのないやつだな、お主は!」


「じゃ、俺は昼の用意をして居るぞ」


『美食の皿』に大皿2枚を乗せ、マルゲリータ2枚、次にまた大皿2枚を乗せディアボラを思い浮かべて念じるとディアボラ2枚が乗って出て来た。

サラミもちゃんと乗せてある。

次にアンチョビの塩焼きがのったピザも2枚大皿に乗せて計6枚の大皿に乗った熱々ピザを用意した。


飲み物は、ジンジャーエールを4杯コップに作り、今回は更に、小さい器2本にタバスコを用意した。


『美食の皿』は便利だが何気に二人分だとポン酢やタバスコを出すにも器を2個用意するのが面倒だ。


「イザベラ、昼飯ができたぞぉー。はやく熱いうちにこっち来いよ!」

フェリシアとイザベラが2階から降りて来てキッチンに座った。

8等分に切り分けられたピザをフェリシアは眺めていた。


イザベラが食べ方を教えて手で一切れを口に入れた。


「なななな、何ですの?この味、この美味しさ。信じられない・・・」


「フェリシアさん、この赤いタバスコというものは癖があるけど調味料としてかけて食べて見て、ヒリヒリするけどチーズに合うと思うよ」


「あら、わっ、辛い!でも、凄くコレにあいますわ」


「え、私もかけて見るわ。この前は無かったものね!」


「わぁ、ホントだ、とてもピリッとしてピザに合うわ」


「パパ、コレは肉なの?燻製かな?」


「お前燻製なんて言葉知って居るのか?コレはサラミというものだよ」


「凄く美味しいよ、私はこのサラミのピザが一番好きだわ」とヒューイ。


「そうか、俺はアンチョビが一番の好物だな。この塩味がピザとあって一番美味しいよ」


「ジン君、この飲み物もこの世界では飲んだことありませんがとてもピザと合いますね!」


「コレは私の生まれた田舎で飲まれて居る飲み物でジンジャーエールというものです」


「さっぱりして、ちょっぴりお酒のようでとてもこのピザという食べ物に合いますね」


「イザベラ、いつもこんなに美味しい食べ物をジン君と一緒に食べてるの?ずるわ!」


「いつも一緒って、時々よ。大抵はジンは冒険者ギルドに入って居るからね」


「お昼食べ終わったら、イザベラ、フェリシアさんとお店の方で話し相手をしてて」

ジンはイザベラとフェリシアが話をしている間に、アメリカンコーヒーを用意して、ミルクと砂糖を準備して、二人を呼んだ。


「フェリシアさん、好みに合わせてミルクと砂糖を入れてください。俺は何も入れないで飲むのが好きでね」


「少し苦い感じがするならミルクをほんの少し、それと砂糖も少しだけ入れるとスッキリした感じで美味しいわよ」とイザベラ。


「イザベラ、俺はヒューイと冒険者ギルドに行って、簡単なクエストを受けて来るからフェリシアと楽しんでくれよ」


そう言って、ジンはヒューイと”魔女の道楽”を後にした。


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