第11話 指名依頼3日目、4日目
ケーベルの街を予定通りの時間に出発してへルカスに向かって馬車を進めて行く。
この辺になると街道筋の往来もそこそこ有り、魔物や野盗のたぐいは出て来なくなった。
順調に進んで途中の小さな宿場町で昼食休憩をとる。
『フジ』には途中で狩ったオークを1匹与え、昼飯変わりに食べるように言い、俺とヒューイは馬車の中でファングボアの生姜焼きをご飯とスープで食べた。へルカス迄は途中、馬を休めるために1時間程止まって休憩したが夕方には無事宿に着いた。
宿では侯爵様達とも同じ宿で再び皆で一緒に夕食を食べる事になり、フェリシアがジンの前に座って色々ジンから聞き出そうと話しかけて来る。
ジンとしては、魔法学校に行ってたわけでも無く、彼女より魔法に詳しい訳では無いので話を合わせるのが大変だ!
逆に彼女の話を聞くと、彼女は王立魔法学校の特待生で、王立魔法軍団の副団長につかされているそうだ。そこの団長は3属性を操るこの国最高の魔法師らしい。
その話を聞いたヒューイが「それならパパの方が上だわ」なんて言うもんだから、フェリシアの突っ込みを躱すのが大変だった!
話を逸らすため、ジンは先日訪れた"魔女の道楽"の魔法師イザベラの話をしたところ、フェリシアが彼女の名前を聞いて話に食いついてきた。
「ジン君、イザベラを知っているの?」
「知っていると言うか、魔道具のローブでも買おうと思って行ったのが”魔女の道楽”で接客に出でてきたのがイザベラさんだったから」
「そうなの、彼女は確か3属性の魔法の達人よ、王立魔法学園で一緒のクラスだったの!」
「そうでしたか!彼女は自分のことを魔法師の女王とか言って面白い方ですね」
「ええ、でもそれは当たっているわ!魔法師の女王と言えなくもないほど魔法が得意よ」
そんな魔法の話で花が咲き、楽しく食事も終えた。
ハリス侯爵夫妻が何となくフェリシアさんと俺の会話を注視していたのには少々気恥ずかしかった。
2階の部屋に戻ったジンとヒューイはシャワーを浴びて早めにベッドにダイブして意識を手放した。
朝朝食を食べて8時に出発をするので少し早めに出て待って、侯爵様達が現れたので王都ダルゼに向かって最後の工程に動き出した。
ヘルカスから王都までは4時間程で着く。
街道の道も往来が結構あり、魔物などは出てこない。
3時間ほどしたら、前方に立派な城壁が見えてきた。
高さ5メートルほども有るだろうか、城壁の前には堀が設けられており、入るには羽橋を卸して、その橋を渡らないと城門をくぐる事は出来ないようになっていた。
堀の手前で兵士に冒険者カードを見せて、侯爵様一行だと述べると問題なく羽橋が降りてきて城壁の門をくぐることが出来た。
城門の内側は流石王都というだけあって、メイン通りは道幅も広く、両側にはズラッと商店が軒を連ねている。
ジン達は先ず冒険者ギルドに行き、侯爵様から護衛依頼達成のサインを貰ってギルドの受付に持っていく。
”怒りの稲妻”のリーダーと二人でカードを出してジンはカードに金貨30枚を入れてもらい、カードの金額が50枚、銀貨20枚となった。
”怒りの稲妻”たちとはここでお別れだ。
「どうも、お世話になりました。又会ったら宜しく」とジンはグローに言って、別れた。
ジンは護衛の途中で討伐した魔物も清算しておこうと思いたち、受付に「すみません、護衛依頼中にオーク10匹とトロール2体それとワイバーン3体を倒したのですが、素材置き場の方に持ち込めばいいですか?」
「そうですね、裏に回って素材置場に納品書を貰ってきてください」と受付嬢から言われ、ジンは素材置場に行って、ワイバーン3匹とオークを1体ともう1体の魔石だけを納品した。
その場で、5分程待って、納品書を受け取り再び受付に持っていき納品書とカードを提出する。
「ジン様、オーク10匹で銀貨150枚、トロールは1体が魔石だけなのでトータル銀貨55枚、ワイバーンが3匹で金貨120枚になります。カードに入金しますか?」
「お願いします」
「それでは、カード金額は金貨170枚、銀貨225枚になりました」
「ありがとう」と言ってジンはハリス侯爵が待ってくれた馬車の後ろについて、侯爵邸は王城のわりと近くにあり、ジンは王城の巨大さに驚くとともに侯爵邸の大きさにも目を見張った。
執事長以下門に勢揃いして、ハリス侯爵夫妻と娘さんを出迎える。
馬車から降りて、侯爵様が、ジンとヒューイに執事長についていくように言い、ジンは執事長のあとに従って、客間に通された。
暫くすると、執事が二人を食堂に案内し、そこで着替えてきた侯爵夫妻とフェリシアとで昼食を旅の感想などをしながら食べた。
食後に美味しい紅茶が出て、久しぶりにジンは日本の紅茶を飲んでいる気分になった。
「ジン君、そろそろ儂と模擬戦をしてもらえないかな?」
「はい、私でよろしければ」そう言って、ジンは侯爵の後について行き、公爵邸の中庭に有る訓練場に向かった。
騎士団長以下主だった侯爵家の騎士たち、魔法師たち、奥様、フェリシアが立ち会いを観客席から見守る中、ハリス侯爵と対峙するジン。
先に仕掛けてきたのは侯爵の方で【縮地】で一瞬のうちに人の間合いに入り鋭い突きの一撃を出すが、ジンは100倍時計のスキルで常人の速度に感じて軽く躱し、裏を取るが侯爵も流石『剣聖』のスキル持ちだ、とっさに距離を取り背中からの攻撃を防ぐ。
ハリス侯爵はジンに正対し、すぐさま剣を横に払ってジンの胴を狙うと見せて剣をジンの肩を狙って斜めに切り上げた。
普通の剣士ならハリスの素早い切り返しに付いて行けず肩から腕一本を切り落とされているだろう。
しかし、『剣聖』、『剣神』、『剣豪』全ての先人達の捌きを会得したジンには全く通用しない。
軽くバックステップで躱され、切り上げた剣の持ち手にジンの模擬刀が当てられ、ハリス侯爵が剣を下げて負けを認めた。
試合を見ていた騎士団や奥さん、娘のフェリシアも余りに二人の動きが早すぎて何故侯爵が負けを認めたのかも分からなかった!
「いやぁー、ジン君流石だなぁ!儂もそこそこやれると思い、勝つ気ではいたのだが、相手にならなかったな」
「いえ、驚いたのは私の方です。久しぶり本気になりましたから!」
「ジン君、もし良かったら我が家に時々来て、儂の模擬戦の相手をしてくれんかな?なかなか儂の周りでは本気で相手をする程の好敵手がおらんのじゃよ!」
「私でよろしければ、喜んでお相手します」
「そうか!儂は嬉しいぞ!やっと儂より強い剣士に会えて。ジン君とヒューイ君はここの王都をベースに冒険者をやらないか?
こちらのギルドの方がクエストの量がキースの倍近く有るし、ダンジョンもここ王都近くに3箇所有るぞ!」
「ダンジョンが有るのですが?それは魅力だなぁ、ヒューイどうかな?ここをベースに宿を取って冒険しようか?」
「私はパパが居れば何処でも良いわ!」
「それじゃ、侯爵様私達はギルドに行ってクエストでも受けて、定宿を決めて来ます」
「おお、それじゃ、またな!」
フェリシアに門まで見送られてジン達は商業施設街に有るギルドに再び向かった。
ギルドのクエストの掲示板に行くと確かにキースの倍以上のクエストが残っていた。
ヒューイがひとつのクエストを剥がしてジンに「パパ、これを受けましょう」と持って来たのはサウンドラー2匹の討伐だ。
受付に出して場所を聞き、城門を出た3キロ先の森に居るというので馬車で向かった。
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