第54話 赤き竜
「はぁはぁはぁ」
息を上げながらカイトは連絡通路をわたり王様の元を目指す。
外からは竜達の翼を羽ばたかせる音が聞こえ、緊迫感漂う空気の中、カイトは額に汗を浮かべながらも足を止めることなく必死に走り続けた。
その瞬間一頭の竜が連絡通路の壁をぶちやぶり、ハイム城を襲い始めた。
それを皮切に次々と竜が勢いをつけてハイム城に取り付いていく。
カイトの渡る連絡通路も大きく揺れ、カイトは足とられるが、竜が隙間から顔覗かせる姿をみて大急ぎで立ち上がり全速力でその場を駆け抜けた。
カイトは無事に連絡通路を渡りきりなんとか竜の追手をまくことできた。そしてその勢いのまま走り続け、ようやく王室のドアに手をかけた。本来なら無礼のないようノックを3度叩き、王様の許可を頂いてからドアを開く所だが今はそんな悠長なことは言ってられない。
「国王陛下助けに参りました」
王室の扉を開くと奥に王様の姿が見え、カイトは王様の無事を知り安堵の表情浮かべるが、すぐに二人の護衛が道を遮りカイトを王様に近付けさせる事を拒んだ。
「反逆者め今更なにしにきた」
護衛達はカイトの首元に槍を向け威嚇したが、カイトは何一つ動じることなく護衛達に言った。
「時間がないんだ今俺達が争ってる場合じゃない」
「反逆者がなにを」
それでも護衛達は引き下がろうとしない。すると王様自らが前に出て護衛の二人の肩に手をかけた。
「お前らもうよい、下がれ」
「しかし」
「もうよいのだ」
護衛達は王様の命令にしぶしぶ身を引かせ、カイトが王様の元へと駆け寄った。
王様はこのバルセルラの異常事態をカイトに問いただした。
「カイトこの竜の数、一体何が起きてるのだ?」
「リンドセル号が竜のアジトを襲ったために竜達の怒りを勝ってしまったのです」
「リンドセル号は、リンドセル号はどうしたのだ」
王様がカイトの両肩を揺らし興奮気味にカイトに聞いた。
「リンドセル号は沈みました」
「なんということだ」
王様が信じられない様子で意気消沈し腰が抜けたように両膝を地面につけた。
「でもまだ方法はあります。陛下は竜のイヤリングをお持ちのはずです。もう時間がありません」
「それでおさまるのだな」
「おそらく」
カイトには確証といえる自信はなかった。でも後はアサの説得にかけるしかなかった。
「まっておれ」
王様は背中をむけ机の一番目の引き出しからイヤリングを探しだした。しかしそうしてる内に1頭の竜が王室を攻めこみ王室の壁は無惨にも剥がされ外からむき出しにされてしまった。
それをみた王様は頭を抱え地面に丸くなった。
「くっ」
歯を食い縛り死を覚悟するカイトだったが、城に取り付いた竜はその直後に勢いよく横に投げ飛ばされた。
カイトが空いた隙間から外を見るとこれまでに見たことのない大きな赤い竜が、次々と黒い竜達を薙ぎ払っていく。全ての竜を薙ぎ倒すと王室のあいた穴を塞ぐように赤い竜はその場に陣取り、翼を大きくひらげた。その姿はまるでカイトたちを庇っているようだった。
赤い竜が首を曲げカイトを方を見て、カイトもその竜の瞳を覗き込むと不意に言葉がもれた。
「アサ?もしかしてアサなのか」
その言葉に反応するように赤い竜は鳴いた。
「わかった」
カイトは王様に向き帰り怯えて震える王様に言った。
「王様イヤリングを」
王様が指の隙間からこちらを覗き、竜の動きを止まったことを確認すると、大急ぎで机の引き出しに入った財宝の中からイヤリングを見つけ出した。
そしてカイトに向けて投げ込む。
「ほれもっていけ」
「あっ」
王様の投げた距離が足りずカイトが前かがみになりながら一歩二歩進み、なんとかイヤリングをキャッチした。手にとったイヤリングを頭上に掲げカイトは赤い竜の元へ駆け寄った。
「アサ、イヤリングを取り戻した。これをどうしたらいい?」
その時城がまた大きくゆれはじめる。竜たちが活動再開し私に牙をむき始めたのだ。何頭をも竜が私の体に噛みつき赤い竜は力尽き、城からまっさかさまに落ちていった。
「アサ!!」
カイトが私の名を叫び、考えなしに赤い竜の体へと飛びこんだ。
二人で落ち行く中で赤い光の球体が体を包み、私は人の姿へと戻りその場で二人は浮遊した。
「アサ、アサ」
仰向けに倒れる私にカイトは肩を揺らし、何度も私の名前を叫んだ。そして意識が戻り始める。
「やっぱりアサだったか良かった」
カイトが私の手をゆぎり、私が無事だったことを喜んでくれている。その目にはうっすらと涙が見えた。
「カイト?」
私は目を開き目の前にカイトがいることを知り、涙を浮かべるカイトをみて私も手を握り返しカイト言った。
「もう大丈夫。さぁ全てを終わらせに行こう」
私はカイトの手を借り立ち上がると赤く光るオーラをまとった球体を浮上させバルセルラ上空へ移動した。
そしてリップから受け取ったイヤリングを外すとそのイヤリングから赤くオーラを放った光が放たれているようだった。お母さんが力を貸してくれたのかもしれない。私はそのイヤリングを服のポッケにしまった。
「カイト、私のイヤリングを」
「ああ」
カイトからイヤリングを受け取り、私はイヤリングを耳に取り付ける。ようやく両方のイヤリングが揃った。
私は全ての記憶の取り戻した。私が何者なのか、イヤリングを持つと言うことが何を意味するのか、そしてその扱い方も全て熟知していた。
私はあの時リィズさんがやってみせたように、精神を竜の聖域へとおいやった。
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