第28話 因縁の対決
「久しいな、お前はまだ軍に所属しているのか」
お父さんが剣を鞘に納め、こんな状況にも関わらず取り乱すことなくルヴィーさんにきいた。
「いいや、とうに軍から離れたよ。あのときお前を陥れたのは間違いだったようだ。お前さえいなければトップになれると思ったが、張り合う相手がいないほど空虚な時間はなかったよ」
「昔のことだ。軍追放について今さら謝罪を求める気はない。だがそれにアサを巻き込んだことは今も許すことはできない」
「アサか確かにそんな名前だったような気がする」
ルヴィーさんが私あった時のように穏やかな顔に戻った。
「そのアサがこちらに訪れたとおもうのだが、みかけておらんか?」
「いや知らないね」
しらを切るルヴィーさん。
「君も知らないか? 」
お父さんが倒れる兵隊に聞いた。
「今さっき少女がーー」
兵隊が途切れそう声で喋ったが……
ぐさ
「うっ」
傷口に小型ナイフが投げ込まれうめく兵隊。
2撃、3撃と続くナイフを鞘のままはじき飛ばすお父さん。
「ルヴィー貴様またアサに危険な目を」
お父さんが怒りをあらわにし握るつかに力が入る。
「勘違いするな、彼女からお願いされたんだ。私は手を貸しただけだ」
そんな言葉で納得するお父さんじゃなかった。ルヴィーさんに疑いの目をむけ、そそのかしたのだろうと考えていた。さらに追い討ちをかけるルヴィーさん。
「連れ戻すつもりなんだろ。だったらここを通す訳にはいかない。相変わらずガキのことになると目の色かえやがる」
そしてさらに声を張り上げ、めずらしくルヴィーさんが感情をお父さんにぶつけた。
「通りたかったら抜けよ‼ 謝罪はいらないだ。余裕振りやがって条件は昔と同じだ。15年前の決着ここでつけてやる」
お父さんも覚悟を決め剣を抜いた。二人でジリジリと間合いつめていく。先程の私怨の満ちたやり取りとは打ってかわって、二人とも慎重だ。さっきのルヴィーさんの発言は一種の挑発だったのかもしれない。だがそんな挑発にのるお父さんじゃない。
ルヴィーさんが自分の間合い入ったのか攻め入る事を告げる。
「こちらからいくぞ‼」
「こい」
二人の剣が何度もぶつかり合う、力を入れる所はいれ、時にいなす。まさに強豪同士読み合いの戦い。長期戦は必至と思われたが……
ルヴィーさんがらちがあかないと思ったのか構えをとき、お父さんの攻撃をかわすことに専念した。
そのしなやかな動きで次々お父さんの攻撃をかわしていく。スピードではルヴィーさんパワーでは紙一重でお父さんと言った所か。
一行に攻撃に転じないルヴィーさんに警戒をしながら隙を見計らうお父さん。ルヴィーさんも同じで大技がくるのを待っていた。
そしてその時はきた。お父さんが隙をみつけ大きく振りかぶった。ルヴィーさんも回避が間に合わいとみて攻撃に応じた。
二人の剣が大きく音をならしてぶつかる、お互い引けば相手に押し潰されてしまうだろう。二人の剣に力がこもる。
膠着続きる初めに動きをみせたのルヴィーさんだった。ルヴィーさんが一瞬押されたようにみえたがすぐに持ち返し勢いつけお父さん押す。その片腕はなんとお父さんの刃をつかんでいたのだ。
動きを封じられたお父さんも相手の刃封じるためにやいばを掴む。
お互いに手元から血がしたたる。
「お前は15年の決着と言ったな。15年言葉にするとその長さを痛感するよ。お前はちっともかわらんな」
「あんたは変わっちまったな、体こなしが思い通りについていかないか」
互角ではなかったのだ。ルヴィーさんが回避徹し大技を誘った理由、それはお父さんの力量を測るためであった。
「くっ」
お父さん図星をつかれ、剣をその場にのこし身を引いた。そしてもう1つの脇差し抜こうとするがルヴィーさんはその一瞬を逃さなかった。
ルヴィーさんの刃がお父さんの脇を貫く。
「残念だよ15年振りの決着がこんなに呆気ないものになるとはね」
「なぜ急所を外した」
倒れこんだお父さんが言った。
「殺すつもりははじめからない。今のあんたを殺した所でなんにもならないからね。私が越えたかった人はもう死んだ」
ルヴィーさんが倒れた兵隊の鞄から包帯をとりだし傷付けた三人に止血の大急処置を施した。
そしてお父さんを担ぎ、馬車屋へ訪れるとお父さんをエルモまで届けるように指示した。
「ルヴィーアサには手をだすな」
馬車にのせられ、痛む脇腹をおさえなんとかルヴィー訴えかけた。
「喋るな、傷にさわる」
「あの代金のほうは?」馬車の運転手が言った
ルヴィーさんが財布から札を三枚だした。
「釣りはいらん」
「よろしいんですか、ありがとうございます」
そのお金はお父さんのものだった。でもルヴィーさんはお金に執着があるわけじゃないのまどからお父さんにむけ配布を投げ入れた。
「アサ」
お父さんはもう意識がなくなりかけていた。
「アサは悪いようにはしない。家でじっと待っているんだな」
「あのもう出していいんでしょうか?」
運転手がどうしたらいいかルヴィーさんにきいた。
「いけ」
ルヴィーさんが車輪のフレームを足で押し出し馬車はそのまま走りだした。
ルヴィーさんが山道の方に戻るとお父さんが乗ってきた馬が行き場を見失って困っていた。
「どうどう。悪かった君のご主人を傷つけてしまって」
「主人じゃない?なるほどね、なら君は今日から私がご主人だ」
どうやらルヴィーさんは動物の気持ちが分かるらしい。ルヴィーさんは馬を手なずけるとそのまま又借った。
「さてと私は先にバルセルラに向かうか久々に王に挨拶もしなきゃならんしな、軍には未練もくそもなかったが、なかば諦めかけていた悲願が叶うかもしれん」
そういいのこしルヴィーさんはルドワン出て迂回路からバルセルラを目指すのであった。
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