第13話 なぜカルーモに?

 私達は今カルーモ村を目指している。休憩所では30分程休憩をとり、自己紹介を交えお互いの事を話し合った。


 リーダー格?いや仕切りたがり屋の目付きの鋭い女の子ジョセ。年は私と同じ17歳で髪はショートの黒、瞳が赤くて印象的で、肌色は健康的に焼けた褐色。

 上は黒のタンクトップに、下はデニム生地のショートパンツに黒タイツを履いている。ベルト部分には沢山のポーチが着いており、おそらくそこに沢山のナイフを忍ばさせているのだろう。

 ボーイッシュな感じで黙っていれば美人さんなんだけど、私には変に高圧的な態度が目立つ厄介者。タンパでの出来事がよっぽど気にくわなかったみたい。


 二人目はカトリーヌさん。年は19歳でいかにもお姉さんって感じ。黒みがかった青髪でサラサラなロングヘアーを三つ編みに束ねており、胸が大きくノースリーブの黒い服の胸元部分はメッシュ状になっており、セクシーさを強調している。

 対して下は藍色のロングスカートで上品に仕上げられている。

 こちらももれなく美人さんで、言葉にも気品があってお金持ちのお嬢様みたいな出で立ちだ。

 しっかり者で知識も豊富だが、どこがずれてるような気がするのは私だけだろうか?


 最後はポルンさん、年は二人も分からないみたい。ポルンさんに確認をとろうにも何をしゃべっているか全然わからないし。少なくとも私達よりは全然上だと思う。

 見た目はとにかくでかく2メートルはありそうな巨漢で、横にもでかい。お腹はぽっこりしてるが、だらしなく太ってる訳じゃなく、普段からトレーニングを積んでるだけあって、筋肉のつき方も並み大抵じゃない。

 上は裸に黄色いベストを着ており、お腹がでてるせいでボタンはしめられそうにない。下は黒い半ズボンをはいている。

 髪型は金髪で天辺以外は借り上げており、一見すると怖そうだが、顔つきが凄く優しく、人相が顔に現れている。ジョセ曰く怒った事を一度も見たことないそうだ。


 3人の紹介もここまで、彼らにリップを紹介出来ないのが残念だけれど、私達事に彼らを巻き込む訳にはいかない。

 特にジョセはお節介焼きだから、気を付けないと。


 「そういえば聞いてなかったがカルーモ村にはなんの用があるんだ?」

 隣を歩くジョセが私に聞いた。


 んー困ったなんて答えよう。そうだ。

 「それを聞くなら貴方の方からお先にどうぞ?」


 「あたしら?あたしらは勿論大金を稼ぎにカルーモに行くんだよ」


 「タンパでは不発だったものね」

カトリーヌさんがため息を吐くかのように言った。


 「姉貴あれはタイミングが悪かっただけだよ。それに午後は持ち返したじゃんよ」


 「タンパに向かって張り切ってたジョセちゃん思い出したら泣けてくるわ」


 「姉貴、もう切り替えていこうぜ。今度は絶対上手くいくよ」

 タンパで見たときとは真逆なシチュエーションでジョセがカトリーヌさんを励ましているのが私をくすりとさせた。


 「凄い自信ね。カルーモがどんな村か知ってる?」

 私は少しいじわるにジョセに言った。


 「当たり前だ。大道芸の本場といえばカルーモだからな。あたし達大道芸人からしたら夢の舞台だ。腕の試しどころよ」


 「私の得意分野はナイフ投げ、狙った的は絶対に外さない。アサも私の実力は確認済みだろ」


 「?」

 一瞬なんのことだと思ったけど、あーあの殺されかけたやつか、とすぐにわかった。


 「姉貴はトランプマジックやタロット占いが専門だ」


 「そしてあたし達の最終兵器。ポルンは口から大きな火をふけるんだ。出オチな芸ではあるが、一番インパクトがあって客引きには一役買ってる」


 「よし広いとこに出たし、1つ大技を披露してやろう。ポルン、カモーン」


 「ふんふん」

 ジョセに指で手招きされポルンさんが鼻息を荒げてこちらにやってきた。


 「一応確認するけどお金は取らないでしょうね?」


 「取らない取らないどんだけ信用ねーんだよ」


 「前科があるから心配なだけよ」


 「前科ってまるで犯罪者扱いだな」

 ジョセがぼそりといった。



 「まぁいい。よーし気を取り直していくぞ。ポルン撃ち方よーい」 


 「はーん」ポルンさんは雄叫びと共に手に持った酒の一生瓶をグビグビとたいらげていく。そしてジョセが一本のマッチに火をつけポルンさんの頭上へと放り投げた。


 「ぷはーーー」ポルンさんが勢いよく酒を吐き出した途端、瞬く間に頭上に火の柱が大きな音を立て燃え盛った。


 まるで火山が噴火したかのような凄い迫力に私は言葉を失った。

 ジョセが自信がるのもわかるような気がした。ジョセの余裕そうな顔をみるとなんだかこの人達は凄い人なんじゃないかって思えてきた。


 「どうだスゲーだろ?これならどんな通行人でも呆気をとられて立ち止まっちまうってあれ?」


 「おいアサなんだその生き物は?」

 ジョセが私に向けて指をさした。正確には私じゃなかったが。


 「え」

 私は驚き、あたりを見渡した。

「何もいないけど」


 「お前が背負ってる奴だよ」

 ギクッ凄く嫌な予感がした。首をくるりと回すとあろうことか、リップがひょっこり顔をだしているではないか。


 「なんだその生き物?」

 その問いに咄嗟に言い訳を考えた。

 

「私のペット、トカゲのリップ」


 「どでけートカゲだな、珍しいぜ。品種はなんていうんだ」


 「詳しい事は私も知らないの」

 しらを切り通すしかない。もうリップのばか後でしっかりお説教しなきゃ。


 「ふーんお仲間がいるなら紹介してくれよな」


 「短い間だけどよろしくな」ジョセがリップに向けて握手を求めた。リップも手を出そうとしたが。


 「ダメ。この子かみぐせがあるから」

危ない危ない、今は顔が出てるだけだからまだいいけど、翼を見られたらトカゲじゃ通らなくなる。


 「そうか、それは残念だ」


 「うふふ可愛い友達さんね」

 カトリーヌさんもトカゲとか全然平気みたいだ。カトリーヌさんあまり動じなそうだもんな。


 「あれれ?そろそろ村がみえて来たんじゃないかしら?ほらあの光?」

 カトリーヌさんが指をさす先には小さな光が見えた。きっとカルーモ村だ。ようやく着いたんだ。


 「やった」

 私は小走りに走った。


 「おいお前の目的はどうした?」

 先にいく私の背中にジョセが言った。


 「んーまた機会があったら話すわよ。ほら早く」

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