第14話 世界の見え方

 これでようやくカルーモ村に到着だ。本当に長かった、歩いてくるような場所じゃない。タンパの距離の倍とみてたが実際に歩くと3倍はあったように思う。


 「おーやってるやってる」

 ジョセが集団の大道芸人を見つけ駆け寄っていく。


 私はリップにリュックに戻るよう促し、絶対に勝手に出ないようにと念をうった。

 カルーモ村はこんな時間にもかかわらず、お店の電気はついており、やぶには少し眩しいくらいだ。


 村には人がぽつぽつと出歩いており、昼間かのように村人が会話を楽しむ姿があった。さすがに子供はいなかったがエルモ村では考えられない光景だ。それになんだがお酒臭い。よく村を歩く人達をみてみると皆揃って顔が赤い。

 ここでご飯を食べるつもりでいたけど、どうしようか。


 「みんな酔っぱらってるみたい、あんまり絡みたくないなぁ」

 私は誰かへ届くよう言う訳でもなく、自分の足元に息を吐くかように呟いた。


 誰にも聞かれていないだろうと思っていたが、私のすぐ後ろを歩く二人の内の一人、ポルンさんが私の背中にちらっと視線を向け、ごそごそとカトリーヌさんに耳打ちした。      

 するとカトリーヌさんは私の隣にきて、口に手をあて小声で言った。   



「アサちゃんあんまり気にする事ないわ。私は何度か来てるから分かるけど、カルーモ村の人は温厚な人ばかりよ。困った事があったら、きっと助けになってくれるはずよ」


 「え!?」


 まさか返答が返ってくるとは思ってもみなかったので驚いてしまった。


「あら驚かせちゃった。あー私じゃないのよ、ポルン。彼耳がいいからつい聞こえちゃったみたい。別に悪気はないのよ、ただ彼もあなたが心配みたい」


 「ポルンさんありがとうございます」

私がお礼をするとポルンさんは照れ臭そうに私から目線をずらした。 


 「ポンポン」


 ?


 「気にしないで特に意味はないのよ、アサちゃんも気をつけなよ。聞かれなくたくないことは出来るだけ口しないこと。ポルンが聞いてるかもしれないからね」


 「ぽぽー」

 ポルンさん顔を真っ赤にして弁明してるようだった。


 「ふふ」

 私の顔から笑みがこぼれた。


 「なんだか少し元気になりました。カトリーヌさんポルンさんありがとうございます」

 私は改めて二人にお礼をした。顔を上げ振り返ると、そこに映るカルーモ村は以前とは違ってみえた。まだ鼻の奥に残るお酒のツンとした臭いはとれないけれど、みんな穏やかで優しそうな顔をしている。みんな日々の仕事の疲れをここに癒しにきてるんだと素直にそう思えた。


 「どこかのお店に寄ってみるのもいいかもしれない」


 ジョセが振り返り私をみつけ太い声で叫ぶ「アサお前はこれからどうする?あたし達は芸人達の実力の下見にいくけど」


 「もうこんな夜にそんなに大きな声ださないでよ」


 「なにいってんだよ、ここじゃ昼も夜も変わらねぇーよ。むしろ夜のほうがうるさいくらいだ。静かな場所って言ったら住宅街くらいだぜ」


 「言われてみればそうね」確かに周りはお祭りような賑わいだ。


 「それで?」ジョセの声のボリュームは相変わらずだ。


 「私はカルーモ村の屋台を少しみてまわるわ、少しお腹空いちゃって」


 「そっかそっか、そうだよな。あれから30分歩きぱなしだったしな。分かった、あたし達も15分かそこらで戻ってくるから、屋台じゃなくて洒落た店探しておいてくれ。すぐ戻ってくるからよ」 


 「分かった。気を付けてね」

 私は手を振り3人を見送ったが、あの人達どこまでついてくるつもりなんだろう?


 このまま姿をくらませるのもなんだか悪いし、かといって正直に言える訳もなく。


 んー食事の時にはちゃんと納得してもらえるように説明しなきゃ。

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