〈堕落天使と死にぞこない〉3人

神「、い、おい、聞いているのかラダ、次の対象は、この少女だ」


ラダ「へーへー、わーりましたよっと」


 俺はラダ、こう見えても天使だ

服はよれよれの黒スーツ、髪は乱れてぐちゃぐちゃ、羽はぼさぼさ


自分で言うのもなんだが、堕天使になりかけ


 天使は、ある国では天からの使いと書くらしいが、

そんな大層なもんじゃねぇ、死にかけの生き物を、天界に連れていく


いわば、死神の奴らとやってる事は同じ事


ラダ「そんなでも崇めるんだから、人間様はすげーよ」


死神と違うのは、自分で魂を引きずり出さない事、死ぬまで待つ事と、

死んだ魂にカウンセリング(?)を行う事


なんでも、混乱した魂が、無暗に彷徨わない様にだそうだ


 天使の事が見えるのは、


少女「おじさん、誰?」


対象の人間、後、神と同僚のみ。つまり、この娘は対象の人間らしい


 見たところ、足が不自由で、車椅子が足替わり、

そしてこいつは、30分後に車椅子が暴走して交差点に突っ込んで死ぬらしい


 まだ14歳と言う若さ。


ラダ「可哀そうなこった」


少女「?」


ラダ(にしても、こいつ顔いいな、下手な天使よりも顔がいい)


 天使っていうもんは、大体顔がいい、全員、

もちろん俺含めてほぼ美形、へんな羽に包まれてたりする奴もいるが


でも、こいつはもっと顔がいい

こんな奴が、死んで顔もなくなるなんてもったいない


ラダ「なあ、お嬢ちゃん」


少女「なに?」


ラダ「お嬢ちゃんは、今から30分後に交通事故で死ぬ」


少女「はぁ、それで?宗教の方?」


ラダ「宗教、まあ、関係あるけどさ、、お嬢ちゃん、生きたくはないかい?」


少女「別に、足こんなだし、にわかには信じられないけど、死んでもいい」


ラダ「まあまあ、誰もお嬢ちゃんに月がきれいですねなんて言ってないぜ」


 そう言って俺は、その子の車椅子を押した


周りからは、勝手に動いてるように見えるだろう


 もし本当に、死にかけの奴にしか天使が見えていないなら、

なぜ天使信仰、天使伝承が人間界にある?


それはたぶん、俺みたいなやつがいたからだ


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声劇台本 稲見 琥珀 @ineri-hu

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