第21話 情報漏洩には気を付けよう
デバイスを取り出して、オークションサイトを確認する。
「…スズくん、が、私と一日、一緒になれるから…私、頑張っちゃった」
デバイスには久島五十五の一日権利が『4000万』の状態で置かれている。
これは宮古ハルメンが入札した額であり、久島五十五の一日をハルメンが購入しようとしていた。
「ごほっ…ふふ、このまま、何もしなかったら…私がスズくんの権利を、一日だけ…」
「(嬉しそうな表情をしてますわ…けど、一日だけで何が出来ると思いまして?)」
にこやかな表情の裏側では、その様に考えている宮古メメ。
「(ハルメンは知らないだろうが、既に私は、レインドールから聞いている。一日の権利以外にも、一週間の権利も存在するからな)」
他の宮古一族を出し抜いたかの様に思っている宮古エナは内心では笑みを浮かべていた。
「(あーあ…早く■■の権利をいれてくれないかなぁ…既成事実作りたいのに)」
更に、それ以外にも、宮古リティはより過激な権利も用意しようとしている事を知っている。
彼女たちの脳裏には様々な思想が色々混ざり合っていた。
「(…あ、そうだ。電話しておかないと)」
久島五十五はデバイスを起動してレインドールに連絡を入れることにする。
コール音が一回だけなったと同時に、すぐに通話が繋がった。
『何があったのかしらあ?今、どこにいるの久島』
慌ただしくレインドールが久島に対してそういった。
「え?あ、な、なにがですか?」
久島がそんな慌ただしい彼女をなだめるように聞き返す。
『あなたがこんなに早く連絡を入れる訳がないでしょお?この時間帯なら、ダンジョンに入ってすらないじゃない、それなのにこんな時間帯に連絡を入れるとしたら、それはもう緊急事態というほかないでしょお?』
「いや大丈夫でした…と言うか俺が到着した時にはすでに片付いていたと言うべきですね…」
『…それは一体どういうことかしらあ?』
デバイスを耳から離すとしてスピーカーへと変更する。
スピーカーからは姉妹たちの声が聞こえてきた。
そこからレレインドールは察して、ダンジョンに宮古姉妹たちが来ていることを知る。
『あなた達一体何をしているのおおお?!』
一人だけ省かれたレインドールは青筋を立てながらそう口にした。
『待ってなさいな今からあなたたちの元へ…』
と、レインドールは言い切ろうとした最中。
ふと言葉を閉ざした。
そういえばと思い振り返ってみて、ダンジョン近くにいる姉妹たちに聞いてみる。
『…そういえば、あなた達、一体どうやってダンジョンの話を聞いてきたのかしらあ?一応はダンジョンに荒らしが出たことは極秘にしていた事なのよお?』
はしゃいでいた姉妹たちは一気に白けて言葉を失う。
そしてみんなはレインドールの言葉から白を切ろうとしていた。
レインドールは驚き声を荒げる。
『情報漏洩よおお?!さっさと教えなさいい!』
そう叫ぶが、誰も彼女に対して答えようとはしなかった。
そして3日後。
宮古ハルメンは、はやる気持ちを抑えながら久島五十五の到着を自らの部屋で待っていた。
色々と他の姉妹が空気を読んでくれたのか、結果的に入札額は4000万で手を打たれたのであった。
これにより久島五十五は本日一日だけ、宮古ハルメンのために存在することになり、嬉しさと緊張で興奮している彼女は、たた、久島五十五を待つ。
彼はその十分後に、宮古ハルメンが待つ彼女の部屋へと入っていく。
宮古ハルメンは部屋の中でベッドに横たわりながら嬉しそうに鼻歌を歌っていた。
そして扉が開かれる音を聞くとともに彼女は重い体をゆっくりと上げて久島五十五の顔を見た。
「あ、スズくん、来てくれたんだ…嬉しい」
もともと病弱な彼女はほとんどをベッドの上で過ごしている。
熱っぽい表情を見た久島五十五は彼女の元へとよった。
「大丈夫ですか?ハル姉さん。そんなに無理しなくてもいいですよ、今日は俺が一日中つきっきりでいますんで」
久島五十五の言葉に宮古ハルメンは嬉しそうに表情をほころばせた。
久島五十五の言葉に宮古ハルメンは嬉しく思いながら、頷く。
例え今日一日限りだったとしても、久島五十五といる時間が、なによりも大切。
その時間は久島五十五と自分だけの特別な時間である。
「私は大丈夫だから…今日は、何をしよっか?」
彼女は体をゆっくりと起こして嬉しそうな表情を浮かべ続けている。
まだ発熱と咳き込んでいるだけだからそこまで重要ではないと久島五十五は判断するが、それでも心配なものは心配だ。
「なるべく体を動かさないやつにしましょう」
久島五十五はそう提案すると彼女は俯いて何をするか考える。
そして彼女は自らの机を指差した。
「けほっ…そこに置いてある、スケッチブックをとってくれる?」
「スケッチブックですか?わかりました」
宮古ハルメンの言われるがまま、久島五十五はスケッチブックを持ってくる。
そしてもう一度机の方を指さしてペンを持ってきてもらえるようにお願いした。
久島五十五はペンを渡すと彼女は震える指先でそれを受け取る。
「それなら今日はお絵かきでもしましょうか」
宮古ハルメンの提案に久島五十五はそれはいいと頷いた。
「それじゃあ何を写します?」
久島五十五はそう言うと彼女はベッドのそばに置いてある小さな箱を取り出す。
「少し、場所を変えましょうか」
そう言って彼女は小さな箱を開くと音が鳴り出すそれはオルゴールだっただがただのオルゴールではない。
歯車が回り音が成り立つ。
その音に世界は心酔して空間が歪みだす。
そして宮古ハルメンの部屋の中ははるか無窮に続く大草原へと変わっていた。
「これは…ダンジョンアイテムですか?」
「そう…私のお気に入り」
空間を歪まして別の空間へと繋げるダンジョンアイテム。
「私の、お姉さんがくれた、大切なもの」
それは、宮古ハルメンの思い出の品だった。
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