第20話 ダンジョン最速攻略


宮古レインドールは学生の身分でありながらもすでに仕事に就いていた。

宮古レインドールは個人的にダンジョンを所有している。

それはダンジョンから採取出来る物資に価値がある為だ。

例えば、既にこの世界では、宇宙旅行が格安で行う事が出来る。

ダンジョンから採取できる鉱石が宇宙ロケットに使用され、安い値段での量産が可能となった。

これに加えてダンジョンアイテムを利用すれば、比較的安全に宇宙旅行を楽しめるからだ。

それと、あるダンジョンでは、糸が採取出来る。ダンジョンモンスターが吐き出す鋼鉄程の耐久性と、糸の柔軟さを持ち合わせた糸は、現在では殆どの衣服に使用され、防護服としての特性を兼ね揃える。


これら、ダンジョンアイテムでなくとも、ダンジョンから採取出来るアイテムだけで、今後の生活を裕福に暮らす事も出来るし、運が良ければ、男性でも、ダンジョン運営をする事で大盛する事もあり得る。


宮古レインドールは先見の目があるのか、未開拓状態のダンジョンを格安で購入しては自身でダンジョン攻略を行い、ダンジョンで採取出来るアイテムを業者へと売っては金を稼いでいる。


年間、120億ほどの売り上げを叩き上げる彼女ではあるが、ダンジョンの維持費も金がかかる為に、手頃な時期になると手放している事が多い。


今回、久島五十五が向かうのは、未だ彼女がダンジョン未攻略である場所であり、本来ならば自分でのダンジョンの管理、運営をしながらダンジョン攻略をしなければならないが、周囲の民間に対して被害が出ないのならば、そのままダンジョンを未開拓状態のまま保護する事も出来る。


しかし、その様な未攻略ダンジョンは、荒らしが多い。

先述の通り、ダンジョンには有益になるアイテムが生成している。

それを回収して、アイテムを売る様な、密業者も存在した。


そして、久島五十五が向かう未攻略ダンジョンは、まだダンジョンアイテムすら回収しておらず、このまま荒らしたちにダンジョンを攻略されてしまえば、そのままダンジョンアイテムを奪われ、闇市で売買される可能性もある。


基本的に、ダンジョンには出口が存在する。

出口は複数あるが、どんなに多くても十数程だ。

出口を固めてしまえば、荒らしを捕える事も出来るだろうが。

相手がダンジョンアイテムを使ってくるならば、相応の戦力が必要になるし、ダンジョンアイテムを使用して瞬間移動なりされてしまえば、打つ手はなくなる。


だから、ダンジョンへと向かい、内部で捕える他選択肢が無かった。


ダンジョンは巨大な塔だ。

巨大な塔は、直径は一キロ程ある。

中級程の大きさだ。これで内部は十キロ程の異空間となっていて、大級、超弩級などが存在する。

大級ならば、第一フロアが約50キロから100キロメートル程、超弩級ならば、無窮に広がる、第二の世界としても通用する。

中級でも、階層は十階程ある。


上空に存在するダンジョンコアを破壊すれば、塔は崩壊してしまうが、ダンジョンモンスター、及び、ダンジョンアイテムが回収され尽くしてしまえば、それによって塔は死ぬだろう。

どちらにしても、荒らしによるダンジョン攻略は、管理者にとっては不利益になるものだった。

早急に、荒らしを止めなければならない。其処で、久島五十五が選ばれたのだが。


「ほら早くしろ、向かうぞ久島」


何故か、宮古エナも居て、久島五十五と動向していた。

黄金の髪、ツインテールにしている彼女は、傲慢さを表すかの様に腕を組んでいる。


「何故、一緒に行くんですか?俺一人でも、十分ですよ?」


と、宮古エナを見ながら言う久島五十五に、宮古エナは青い瞳を久島五十五に向けて、獣の如く睨みを効かせる。


「当然、私がやりたい事をしているだけだ。貴様が死んでしまえば、その時点で私が涙を流す。貴様は私を泣かせたいのか?」


と、なんとも理不尽な言い分であり、しかしながら、何処か甘えた様な台詞の様にも聞こえる。


「…まあ、エナさんが居るのなら、ほぼ間違いなく、荒らしを倒す事が出来ますけど…」


宮古エナが居るから勝てる…と言うよりかは、宮古一族は基本的に強いから、誰が傍に居ても十分、と言う意味だ。

ダンジョンの前へと向かう、そして、入り口前には、白い帽子を被り、ワンピースを身に着けてバスケットを持っている女性が立っていた。


「お待ちしておりました」


宮古メメだった。

どうにも、その服装からして、ピクニック気分、と言っても仕方が無い恰好である。


「…メメさんも来たんだ」


苦々しく笑う久島五十五。

背後からドタドタと、走って来る少女の姿が其処にある。


「ごめんなさい、先輩、遅れましたぁ!」


「別に待ち合わせもしてないけど」


宮古リティも登場している。

この様子からして…と、久島五十五が脳裏に過らせた最中。


「ごほっ…ごほッ…はあ、あ、…お疲れ様です」


ガスマスクを付ける事無く、ダンジョンの中から六名程の男性を捕まえながらやってくる、宮古ハルメンの姿があった。


「ああ…もう終わったんですね、ハル姉さん」


既に対峙は終了していた。荒らしは伸びていて、気絶しているだけだった。


「ごほっ…うん、終わった、けど…ちょっと、疲れちゃった」


目を細めて、赤い顔をしている宮古ハルメン。

ごろりと、宮古メメの敷いたシートに寝転ぶ。

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