第2話 宮古一族
宮古一族。
国家による依頼により、個人が持つ資産が億を超える機兵の一族。
学園三大一族の一角でもあった。
宮古一族はこの学園内にて六名、その名前を関する少女が存在した。
彼女たちの間で序列など存在しないが、慕っている人間には名称が変わる事はある。
宮古メメは、友人でもあり、同じ血筋を持つ宮古一族の娘と共にする。
「お待たせしました。エナ」
高身長。
金髪、ツインテール。
蒼い瞳と流し目が彼女を見つめる。
テーブルに用意された茶菓子を齧りながら、宮古エナは頷いた。
「おはよう、メメ」
宮古一族の二人。
近くにはエナが落札した男性機兵が警護する。
彼女たちはプライベートでよく会う程に仲が良かった。
他愛の無い談笑を愉しむ二人。
しかし、宮古メメは何処かうわついている。
三十秒に一回はデバイスを確認していた。
「(入札に変動は…ありませんわね)」
それを確認して安堵の息を漏らす。
「メメ、もしかして、私の話を聞いてない?」
唐突に。
宮古エナがそう言うと、宮古メメは驚き、首を横に振る。
「いえ、その様な筈はありませんよ」
「だったら、私が質問した内容、覚えてる?」
宮古エナは目を細めて、宮古メメに聞く。
彼女はデバイスをテーブルの上に置いて、声を詰まらせる。
何を答えようか考えて、近くに置かれた茶菓子に手を伸ばした。
「やっぱり聞いてない…返答に困ると口に何かを詰める癖、直した方が良いんじゃい?」
宮古エナが呆れた様に言うと、紅茶を飲む。
宮古メメはしょんぼりとした。折角の宮古エナとの談笑に、水を差してしまった。
「デバイス、気になっているって事は、オークションでも見ているの?」
宮古エナが聞いて来る。
この情報は、出来る事ならば宮古メメ一人で独占したかった。
だから口を閉ざして、紅茶を飲む。
「はぁ…メメ。私が貴方の狙う相手を奪う様な、陰湿な女に見える?ただ気になるから、私は知りたいだけなの。其処に邪な感情なんて無いわ」
宮古エナの言葉に、宮古メメはハッとした。
そうだ。他の宮古一族の人間ならばいざ知らず、宮古エナは信用に値する人物だ。
他の誰を不信に思うのは構わないが、友人にして親友である彼女を不信がるのは違うと、宮古メメは思った。
「申し訳ありません、実は…」
そして後悔した。
「久島様がオークションを開いたのです」
その言葉と共に、宮古エナは目を丸くした。
そして宮古エナは「そう」と興味の無い素振りをしながら紅茶を一口。
「ごめんなさいメメ。急に用事が出来たわ」
言いながら流し目で髪の毛を指で巻く宮古エナ。
「(ん?…エナ、その癖…)」
立ち上がると共に宮古エナがその場から離れだす。
「お待ちになって下さい」
宮古エナがその場から離れようとする際に、宮古メメは彼女の行動を制止する様に言う。
足を止めて、振り返る宮古エナ、その表情は何処か焦燥に満ちていた。
「エナ。先程の言葉は…」
「…私が、嘘を吐くとでも?そう思われる程、私は信用が無いのか…?」
儚げな表情を浮かべるエナだが、白々しいと言う目線を、メメは向けていた。
その場から離れる宮古エナ。歩きながら宮古エナはデバイスを起動する。
「(メメ。私は貴方が欲する相手を奪う様な、そんな女じゃない)」
久島五十五の『ステータス』を確認すると、確かに『オークションシステム』が動いていた。即座に競り落とす体制に移る宮古エナ。
「(けど先に欲していたのは私だ。つまり、私の欲するものを奪おうとしていたのはメメの方だ。なので私は奪い返すまでだから)」
『この金額で入札いたしますか?』という文字の下に『2000万円』を入力して入札する。
更新された情報は宮古メメのデバイスに反映される。
「…淫売」
そう呟いて宮古メメは更新してきたアカウントを確認した。
基本的に本名、匿名、偽名、アカウントの名前は人それぞれだ。
入札した人物は匿名であったが、少なからず、久島五十五を狙う宮古エナのものだと察した。
「…」
取り合えずは自らの入札金額を『2100万』として更新するのだった。
デバイスが振動する。
久島五十五はデバイスを開いて内容を確認する。
デバイスの中には久島五十五が設定した『オークションシステム』に対する金額更新の内容だったが久島五十五は困惑した。
「、なんだこれ」
その内容は、2000万から2100万、2200、2300、2600…と、段々と釣り上がってくる。
久島五十五は壊れたのかと思った。
それ程までにオークションシステムは無頓着であり、入札が上昇するのは初体験の事であった。
「(これが普通なのか?)」
と思った、そんな時だった。
椅子に座る久島五十五の後ろから飛びかかってくる人の姿があった。
後ろから抱き締められた事により、久島五十五は肝を冷やす。
即座に後ろを確認しようとして、鼻腔を擽る匂いに、誰であるか察した。
「リティか」
宮古リティ。
鮮やかな銀髪、首辺りで整っている。
体は小さく、翠色の瞳がひとつ、片方は眼帯をしていた。
抱きついてくる少女に対して久島五十五は名前を口にすると、後ろから前へと顔を突き出して至近距離で久島五十五の顔を拝む宮古リティ。
「あたりです、さすがですね。先輩」
と嬉しそうな表情を浮かべながら彼女はそういうのであった。
久島五十五は立ち上がると宮古リティの顔を見る。
「また何かして欲しいことでもあるのか?」
そういった。
彼女は久島五十五よりも年齢が下である。
いわゆる後輩という存在だ。
後輩ではあるが、しかし彼女は同学年とは一緒にならず、一学年上の久島五十五と共にすることが多かった。
それは単純に彼女が久島五十五を好意的に思っているからだが、久島五十五は体の良い存在としか扱われていないと思っている。
「先輩、また今度、買い物しに行きましょうよ、私が奢りますから…、荷物持ち話は先輩ですけど」
よく買い物の相手として誘っており、その度に荷物持ちとして彼を雇っていた。
「あ、そうだ。リティ」
久島五十五は彼女に話を聞くことにした。
彼女はいろんなアイテムをオークションで購入している。
久島五十五は、宮古リティにデバイスを見せる。
「ちょうど良かった。リティならこの状態分かるだろ?」
オークションのことはオークションを利用している人間に聞くのが一番良いと判断した。
「しょうがないですねぇ…何を知りたいんです先輩?」
やれやれといった具合に彼女は彼ののデバイスを確認して、表情を強張らせた。
「…え?先輩これ、オークション、じ、自分をっ?!」
どんどん入札額がせり上がってくる。
既に3500万を通過していた。
「せ、先輩、これ他の誰かに話しましたか?」
「メメさんには話したけど…」
「お姉ちゃんにっ?!は、早くオークション中止、」
中止、そこまで言ったところで宮古リティが喉を詰まらせる。
すでにオークションは始まっていて、入札者が存在する以上は取りやめることはできない。
これがまだ0であればオークションを中止することはできただろう。
だが入札が入った以上はもう中止することはできない。
「(せめて、先輩が私に相談してくれればっ)」
そう後悔しても、今ではもう遅い。
「先輩、私、用事が出来たのでこれで失礼しますっ」
頭を軽く下げて、彼女はその場から立ち去る。
リティは焦っていた。
デバイスを打ちながら廊下を小走りで進む。
「 (本当についてないっ、 私には先輩を競り落とす程の資金がないっ)」
オークション常連者であるリティは、つい先日開催されていたオークションにて資産を使い切っていたのだ。
彼女は電話をしてデバイスを耳に寄せる。
『こちら、ダンジョン管理協会です、ご用件は?』
「私、宮古リティです。億越えの未攻略ダンジョン、用意してください!」
彼女は電話越しでそう叫んだ。
ダンジョン管理協会、 世界中に出現したダンジョンを管理し攻略することで無力化を図る組織だ。
基本的にダンジョン攻略者は、 ダンジョン管理協会から依頼を受けるのだ。
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