第43話 侵略者クラブ帝国を喜ばしたはにわ市長の発言

輪の国の選挙がはじまり、様々な動きがありました。

売国を生業にする芸人のラッキー・ホット・コモリとその一党は一部の吟遊詩人たちと結託して、世論を形成していました。


彼らの一党の中から政治家を選ぶように日夜コメントを発していました。

流石、芸能に長けた人物だけあって、中身がない話でも面白かったり納得させるのは上手でした。


ライバルに実直な政治家がいても、コモリたちの弁舌の鮮やかさの前では敵ではありません。

1年、3年、4年、6年、政治家の役割によって期間は異なりましたが、その仕事の内容よりも選挙戦での弁舌の良さによって政治家の評価は決まる!


実に愚かな事ですが、それが輪の国の選挙の実情でした。

長年の仕事よりも弁舌で負けた多くの政治家を横目に、学生の文化祭のノリで有権者を惑わす芸人集団!


かれらのその才能は多くの無能、あるい有害な政治家を生み出すことに大きな貢献をしました。

なにしろ彼らの中身はクラブ帝国などからお金をもらい、彼らのオーダーを忠実にこなす者たちだったからです。


彼らの本拠地とも言って良い場所にはにわ市というのがありました。

全国でも有数の人口を誇る港湾都市です。

もちろん、沢山の船が生活必需品を運ぶため、あるいは交易品を運ぶために日夜入稿と出港を繰り返していました。


このはにわ市の市長はコモリの無二の友人でした。

当然のことですが、スパイと売国を息をするようにしつつ、はにわ市民に耳障りのよい話をして莫大な人気を保っていました。


もはや、誰も咎める者がいないはにわ市長、彼はスポンサーであるクラブ帝国の機嫌を取るためにとんでもない発言をしました。

それはこうです。


「これからは交易で儲ける時代でっせ、とりわけクラブ帝国にはエネルギーとなる魔石がぎょーさんあるからこれからどんどんはにわ市にもってきてほしいですわ!」


これを聞いて司馬家の面々を初め、まともな感性を持つ人々は耳を疑いました。

クラブ帝国は今、侵略戦争をしています。

周りの国々の多くはその戦争行為を邪悪なものと判断して交易を止めていました。


そんな時に、輪の国でも一二を争う港であるはにわ市が無抵抗に船を入れるという宣言をしたのは明らかに国際秩序に反する行いでした。


ちなみにこの時、司馬家は美麗七州国から、事の真意を問う使者が速攻で送られてきました。

およそ、空気の読めていない発言で驚く国々も多く衝撃を与えていました。


この発言の恐ろしさは、例え一市長の発言でも、それを真に受けた振りをすれば、なんとでも解釈できるということです。

例えば、この発言を根拠にクラブ帝国の軍艦がはにわ市の港に入港しても、過失は輪の国にあるという事にもなりかねません。


つまり、戦争に巻き込まれる可能性を各段に高めた一言でした。

さて、コモリ一党はこの発言をどう考えていたのでしょうか?

彼らは単にクラブ帝国の機嫌を取るというノリでコメントしただけで、軍艦が来るなどとは思いもよりませんでした。


ただ、ノリで良いことをいって褒められたい子供と同じメンタルであり、発言の責任等取る気はありませんでした。

この発言はその後の輪の国に大きな影響を及ぼすことになります。

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