第42話 輪の国の選挙と諸外国の暗躍その3

司馬家の中で女性の擬態による攻撃が最も効きそうなのが三男の信景です。

彼の転生前は見事に女性にうつつを抜かし、それによって国政がないがしろにされたと後世に伝わっています。


しかし、彼は生まれ変わることでそれを克服した!

訳ではありませんでした。

彼は二人の兄と一人の弟と違い、結婚をしていません。


しかも愛人を囲う生活をしていました。

それでも他の三人の兄弟たちがあれこれ言わないのには理由があります。

まず、彼は公務員でも政治界でもなく、民間の人間でした。


これは、すなわち国家機密などが流れることがないことを意味していました。

他にも、都合の良い点があります。

それは、彼がハニートラップの被害担当艦(オトリ)となることで他の三人の防壁になるという役割もあります。


さらに信景自体、女性に免疫があるので彼女たちをあしらう術をもっていました。

「だらしなく見せておけば相手もやりやすかろう!」

これは信景の言葉で彼なりに余裕があることを表していました。


まあ、ぶっちゃけた話をすると、ダーク・ムーンつまり彼の義理の姉がきちんと監視しているというのが一番の安心材料なのですが。

ダーク・ムーンから見ると、信景をオトリにするのはとてもやりやすい面がありました。


なまじ、女性に清廉潔白だと相手は寄ってきませんし、かと言って信景がだらしないと情報が駄々洩れになります。

彼のだらしなさは丁度良いものであり、彼自身かつての人生の失敗からある程度悟っているようでもあります。


こうして、司馬家は擬態による情報戦の経験値をどんどん積み上げてきました。


そうそう、あと一人信頼がいましたね。

彼の奥さんは義の国の人間です。

義の国は家族や一族をとても大事にします。


擬態などを行う人間は、生まれが下賤であるという考えがにじみこんでいました。

信頼は次男の趙謖と同じように妻をとても大事にしました。

彼の妻、美麗華はとても気高く美しい女性であり孫女装子らの女性が取って代わろうとしてもとても難しい存在でした。


ちなみに彼女は武術のたしなみもあり、その点でも信頼の妻としてふさわしい存在でした。

彼女の愛用の武器はなぎなたです。


かつて、司馬家の信頼の屋敷に賊が侵入した際に彼女が一人で賊を殲滅したことがあります。

流石に信頼には武術で叶いませんが、もし相手が信景なら問題なく彼を成敗できるほどの腕を彼女は持ち合わせていました。


結論から言うと、輪の国では諸外国が好き勝手して、国政の中枢や聖皇や皇族の近くにまでスパイを忍び込ませているというのが現実です。


一方、司馬家はその影響力をよく理解しており内部に入れないように様々な対策を施していました。

しかし、それはあくまで司馬家の中限定であり、輪の国を守護するには心もとないというのが現実でした。


このような状態が今後どのような運命を輪の国にもたらすのか?今の時点では神のみぞしるとうところでした。







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