第41話 輪の国の選挙と諸外国の暗躍その2

諸外国の工作は何も野党ばかりでも与党ばかりでもありません。

お金や組織力が弱い野党であれば、外国のスパイか羅の勧誘はとても魅力的でしょう。


与党だから安全とは限りません。

スケベ親父であれば、ダークエルフお得意の「擬態」を用いれば色仕掛けで簡単に転ぶことは用意です。


事実、与党の田舎の議員の中には、事の重要性が分からず、擬態した女性とにやけた親父という構図の写真を取られて、なお反省しないアホが存在しました。

確かに男はだらしないので、女性の議員なら大丈夫と考える人もいるでしょうが、それは甘い!


女性議員でもダークエルフの「擬態」にハマる人間は確かに存在します。

こうした困った現象は輪の国全体の議員に広がっていて、司馬家の面々も分かってはいても手を出すことはできませんでした。


流石に司馬家の中には、かつて地獄を味わった猛者だけあって擬態にハマる者はいませんでしたが(三男の信景はいつも他の兄弟に監視されてました)その分、自分たちのいる分野では孤立しやすい環境にありました。


要するに仲間内から、融通が利かないと言われてしまう始末です。

「司馬家は堅物」これは輪の国での暗黙の評判となっていました。


司馬家長男馬括は良い所のお嬢様のソフィアと結婚したせいか、浮ついた話はありませんでした。

奥さんとの関係も良好で、あくまで家庭内での幸せを探求するタイプだったため問題も起きませんでした。


政治家の妻というのは温和で、おしとやかで、それでいて悪い話には強い免疫を持っていて流されない資質が大事です。

目立たず、和やかな雰囲気が大事で、その点彼女は申し分のない女性でした。


次男趙謖の妻は癖の強いダーク・エルフでしたが趙謖との相性が抜群だったことがとても幸いしました。

趙謖には大望があり、そのために女性に関しても外見の美しさではなく、内面の賢さを強く望んでいました。


その点、ダーク・ムーンという名前と共に時に人々から蔑まされることがあっても、夫の絶大な愛情と信頼が彼女を奮い立たせました。

彼女は馬括の妻と異なり、情報戦が得意でした。

騙し、騙されるということに彼女自身が慣れているために趙謖の家の周りは万全でした。


何しろ、擬態は彼女の出身地であるダーク・ムーン由来国の特技です。

司馬家に潜入しようとしたメイドや事務職をことごとくシバキ倒していきました。

それだけではなく、与党や宮内庁に連なる者たちの中から、擬態する者のリストを作り上げるほどに有能でした。


しかし、いかに彼女が有能で敵の姿を知ることができるとしても、司馬家にはそれ以上の何かをする権限はなく、この有能な夫婦は苛立ちをつのらせていきました。

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