第38話 皇族か?それとも皇室か?
諸外国が聖皇や皇室に対して邪悪なアプローチを進める一方、四英雄たちは彼らに出来る備えについて話し合いました。
とりあえず、対策を立てたわけですが実は大事な問題がありました。
それは、とりあえず皇族を全滅させないように、多くの皇族を各地に分散させて安全性を高めたわけですが、もし皇族が複数残り、しかもそれぞれが跡目争いをしたらどうするか?
という問題が残っていました。
いわゆるお家騒動というやつです。
これは四英雄それぞれで揉めました。
まず、戦国時代の中国にいた長男の馬括は「とりあえず残った中で優秀な人物を聖皇にするのがよい!」と言います。
三国時代に生きた趙謖は「血筋の近い方の中で穏かな人物を選ぶべき!」と主張します。
この考えは馬括と微妙に異なり、優秀過ぎる人間はかえって危ないという意味も含まれていました。
この問題で最大の知見と発言権を持っていた三男の信景は、自分のいた日本の戦国時代を思い出し「お飾りのような存在の方が司馬家にとってはやりやすい」と意見を述べます。
四男の信頼はこの四人の中ではあまり朝廷だの王だの皇帝だのと言った存在から遠い関係にあったため、意見を保留しました。
さしあたり、今の聖皇は健在であり、国政に特に問題があったわけではないですが、一方で毒牙をかける連中も多く存在したため、悩ましい問題でした。
ここで聖皇についてあらためて説明しておきます。
聖皇とは輪の国建国時の王であり、神の末裔とされていました。
初期の頃は王または皇として輪の国の政治の中心にいて、全ての民を総べる存在でした。
中期になり、輪の国のドワーフが力を持ち、政治はドワーフが握る時期がありました。
そんな時でも、ヒューマンの代表として聖皇を名乗り、一定の力を保持していました。
そうするうちにドワーフとヒューマンとの関係が好転していき、政治の実務の部分はドワーフが受け持ち、祭祀や儀典、式典と言ったことは聖皇が受け持つことになりました。
ちなみに聖皇という名称が正式に決まったのはこのころのようです。
近代にはいるとクラブ帝国や義の国や美麗七州国等周辺の諸国が輪の国に軍事的脅しを含む干渉をしたため、国を一つにする必要性が出てきました。
今まで軍事はドワーフに任されていましたが、この時期にヒューマンの手も借りたいというパワーワードが出るほど軍事力が足りていませんでした。
そこでヒューマンには後方支援や開発といった分野でさらに協力してもらう必要が出たので聖皇をもう一度国民を総べる存在にしました。
それから約100年、諸外国との戦いの末ついに輪の国は敗北し、その責任を取る形で聖皇は政治的地位において総べる権限をはく奪されました。
しかし、過去の歴史と、今でのヒューマンの精神的支柱ということでその存在は重いものとなっていました。
現在の聖皇は象徴的な存在で権限はほとんど与えられていません。
しかし、聖皇の発言は今でも輪の国で多大な影響があります。
それを意識していた先代の聖皇はとても聡明な人物で、吟遊詩人や瓦版などに言質を取られないように最善の注意を払っていました。
しかし、時代が下り平和な時代が続くと、聖皇の世代も変わり緊張感がなくなっていました。
そのようなときに協陽党やラッキー・ホット・コモリと言った連中が皇室の名声を汚すべく動き、聖皇もなすすべがないという状況になりました。
四英雄たちはそのような状況を鑑みて、皇族一人一人を守るということが難しいことを理解していました。
彼らはその場で口にはしませんでしたが、皇族を守るのではなく、伝統としての聖皇と皇室を守ることを決意していました。
そして、聖皇が人質になっても場合によっては他の聖皇を立てることまで覚悟していました。
四英雄は武将だと再確認する物の考え方でした。
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