第16話 四英雄の三国志プレイ北伐編

すでに数多のシミュレーションゲームプレイですっかり慣れた四英雄たち。

現実と違い、数字が正確で、部下の管理もスムーズ、裏切りも事前にある程度予想でき、しかも自分からも武将を寝返らせることが出来る。


四英雄たちにとってこの三国志プレイはとても楽しいものでした。

もちろん異世界の女神やモブ神には様々な思惑があります。

昔々の英雄たちに現代レベルの教育やものの考え方を知ってもらう事。


それに慣れてもらい、異世界に行く頃には出来るだけ違和感がないようにすること。

これは神々たちの決まりでしたが、あくまで私たちの世界のレベルの知識や教育を与えることが大事でした。


この点ではハンデなしというのがこの神々のゲームの決まりだったのです。

そのような複雑な事情は知らず、四英雄たちはゲームを楽しんでいます。

とりわけ同じ時代に生きた趙謖はノリノリでした。


多少地形が違っていますが、自分がいた頃と同じ場所で兵を指揮し内政を行い、朝廷と交渉するのは快楽のようなもので彼の生涯で最も幸せな瞬間かもしれませんでした。


さすがコー〇ー〇クモです!!!

さて、四英雄がそろそろ飽きてきたころ、モブ神はまた一つの提案をします。

それは、

「北伐モードの挑戦です」


モブ神も興奮気味に説明をします。


「あなた方は西の小国の君主として、北東の大国を倒すシナリオに挑戦してもらいます」

「せっかくなので超謖に詳しい説明をしてもらいましょう!」


モブ神があえてこのような話をしたのには大きな理由があります。

このゲームの世界と趙謖が実際にいた世界との違いを彼に説明させることで、四英雄に共通の認識をしてもらうことでした。


そして、今までのプレイと違い、四英雄が相談しながらプレイする形式を提案しました。

これはアクの強い四英雄に共通の敵に立ち向かうための経験値を積んでもらうという意味がありました。


こうして、北伐専門家?の趙謖を案内役に、四英雄全てが参加する北伐が開始されました。


一回目 兵士も兵糧も足りなくて惨敗。

二回目 敵が砦や防御拠点を沢山建築したため、攻撃しても突破できず。

三回目 左から大きく回って攻撃するが、異民族の妨害にあって軍が壊滅。

四回目 外交に金と時間をかけすぎて、国家破綻。


それ以降も四英雄は何度もチャレンジしますがどうしても敵の都「長安」を突破できません。


実はこのプレイ中で善戦した時もいくつかありました。

それは趙謖の持つ丞相の勤勉と四郎信頼が持つ虎の兵法です。

丞相の勤勉を使うことで、四英雄英雄のプレイする国は攻守のバランスが取れて、ある程度の攻勢に出ることが出来ました。


しかし、史実と同じであと一歩足りません。

何度もプレイしましたが、ほとんど同じ結果に終わりました。

虎の兵法は、四郎信頼の父で甲斐の虎と呼ばれた名将が、西進を全力で行った戦略を元にしたスキルです。


実は丞相の北伐と甲斐の虎の西進はとてもよく似ていたのです。

ただ、西進の方がより攻撃的でした。

ゆえに、先ほど紹介した丞相の勤勉の時より、わずかですが領土を北に広げることが出来ました。


しかし、軍勢の維持の問題と、敵の最後の拠点を落とすにはどうしても戦力が足りず、北伐達成はかないませんでした。

既に先ほどうつけの国の攻略が無理だと悟っていた信景は真っ先に諦めました。


ついで馬括、四郎信頼の順でギブアップです。

趙謖は最後まで頑張りましたが、他の三英雄が止めにかかったので彼もついに諦めました。


モブ神が言葉を告げます。

「皆さん、お疲れさまでした!恐らくこのステージも人間の力ではクリアーは出来ないでしょう」


こう言われて、馬括は少し怒りながら問いかけます。

「ならば何故無理な勝負を何度もさせたのですか、時間と労力の無駄とはまさにこの事ではないですか!!」


モブ神は涼しげな顔で答えます。

「あなた方四人に決して武力では勝てない場面がある事、そしてその時すべきことをあなた方に気づいて欲しかったのです」


「あなた方はこれから多くの敵と戦いますが、文武両道、そして一見勝てないと思える時でも、勝を見出していただきます」

「それがあの異世界の女神のオーダー(注文)です」


さりげない言葉ですが、実はモブ神はこの時、最重要とも言うべきアドバイスを与えました。

彼らがこのアドバイスを思い出すのは遠い先の話です。


こうして、彼らの北伐は終わりました。

意味深な言葉と大事な経験値を加えて、四英雄たちは次のステージに移ります。






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