第4話 一乗谷の英雄!再び立つ
ある大名は自らの人生を回顧していました。
彼の頭の中には美しい故郷の都の風景、その風景が炎によって破壊され消えてゆく様が見えていました。
「これは夢なのか?」
「室町時代、北の京とも言われどこよりも繁栄した一乗谷がチリとなり消え去るとは!
あれだけ沢山の公家、文化人を集め、毎日が文化と繁栄に彩られたこの地の事は夢まぼろしだったのだろうか?」
「なぜだ、すべてうまくいっていたではないか」
「戦に出れば、成果を上げずに帰ってくることはなく、武勇を示すことも怠らなかったし、己の力を過信することなく、遠くの大名、領主たちと交友を結び、交易を行ってきた」
「鉄砲という最新の武器を手に入れるため、日ノ本の端っこの島津と交友を結びその武器を北の領主に送ることもした」
「わしは弓も得意で、鉄砲と共に遠距離での戦闘について新しい方法を理解し、決して戦を侮ってはいなかった」
「広い視野と内政、外交において決して他の武将、大名に引けを取らなかったわしが、何故ぽっと出のたわけ大名に惨敗したのか!」
「全てオカシイではないか!」
「神よ!仏よ!!わしは何を間違ったというのだ?わしは何をしたらよかったのか!教えよ!」
「呼んだ?」
自らの不運を嘆くこの大名の前に、美しい女性が突如現れました。
大名は驚きとまどいます。
「そなたは何者じゃ?」
「あら、あなたがついさっき読んだから来たのですよ、私は異世界の女神、仏のように優しい存在でもあるのですよ、エッヘン!!!」
大名は驚きつつ、疑いの質問をします。
「何を戯言を、そなたが神仏であるという証拠はあるのか?」
女神「それなら簡単です!あなたは先ほど自らの愛する一乗谷が滅びる様を見たはずです、でもあなたはその時ある寺に逃れていたはず!あのような風景を見る機会はなかったはずですよ」
「あのまぼろしはあなたに自らの人生を自省してもらうために見せたものです。しかしあなたは自らの欠点に目を向けず、神仏に八つ当たりするばかり!とても残念です」
大名「わしには運がなかったのだ、人生も半ばを過ぎてからやることなすこと裏目に出るばかり、もはや何もしない方が良いのではないかと思うようになったのじゃ、それの何が悪い!!!」
大名の怒りと投げやりな態度を見て、女神は哀れに思いました。
そしてこう言葉を告げます。
「あなたも実は気づいているのでしょう!あなたに足りないのは運ではありません、どんな状況でもあきらめず、全力を尽くすことです、あなたがうつけ大名に負けたのはあなたの能力がうつけに大きく劣っていたからではありません、決断力がなかった、ただそれだけなのです」
「どうですか、もし、前世において運がなかったというのであれば、悪運がつかないことを私、女神が保証しましょう、その代わり、あなたは前世のように諦めずに己の務めを全うする!いかがですか?」
大名は考えました。
「この胡散臭い女神とやらの提案を受けるか否か?でも最初は軽いおなごと思うたが、わしの能力は理解しているようじゃし、まんざらでもないかもしれん」
「異世界の女神とやら、悪運を払うような提案をしておったが具体的に何をしてくれるのだ、わしの人生後半の運の無さは並大抵のお守りや祈祷ではどうにもならんぞ?」
女神はそれに対して答えます。
「正確に言えばあなたの悪運を払うというのではなく、どのような状況であれ、自信をもって提案し、実行する能力をあなたに授けます」
「まずはその説明をする前にあなたが私の世界で人生をやり直す気があるか否か?そちらをうかがいましょう」
大名は答えます。
「わかった!わしも大将だ、もう一度戦ってみようではないか!!!美しき都を作り、巨大な交易圏を構築して豊かで強い国を作って見せよう!!!」
そこで女神が少し気の毒そうな顔で言葉を告げます。
「あの~あなたは次回大将にはなれないかもしれません」
大名曰く「え、そうなの?」
彼はぽか~んとしていました。
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