91.【sideソフィア】プレゼント探し

 感謝祭も今日で三日目。


「ソフィー良いの見つけた?」


 今日一日フリーである私は、同じくフリーだったキャロルと一緒に街中を散策しながら、オルンさんに贈るプレゼントを考えている。

 ログは今日の午前中もお手伝いがあるから、まずは私たちで候補をいくつか出して、お昼に合流してから三人で決めることになっている。


 とある国では誕生日を迎えたときに、プレゼントを贈る習慣があるらしい。

 ここではそのような習慣は無いけど、お世話になっているオルンさんに感謝の気持ちを伝えるためにも、オルンさんの誕生月にはプレゼントを贈ろうと三人で話していた。


 だけど、オルンさんの誕生月を聞く機会が無くて、一昨日ようやく聞けたと思ったら六月だって言われてすごく焦った。


 無理にでももっと早く聞いておくんだったと後悔している……。

 でも、誕生月を迎えていなかっただけ、まだマシだよね!


 それに、この時期は普段お店に並ばない物も売られているから珍しいものも多いはず、なんだけど……。


「ううん、キャロルは?」


「あたしもまだー。もぉ、ししょーが喜ぶものってなんだろう。――ん?」


 キャロルが話している途中で何かに気が付いたようで、スタスタとどこかへ向かって歩いていった。

 私は慌ててキャロルの後をついて行く。どうしたんだろう?


「お姉さん、体調悪いの? 大丈夫?」


 キャロルが向かった先には、藍色の髪をしたお姉さんがうつむきながらベンチに座っていた。


「……? 私のこと、ですか?」


 キャロルの声に反応して女性が顔を上げる。

 ……すごい美人さんだ。

 お姉ちゃんがカッコいい感じの美人だとすると、このお姉さんは可愛い美人さんって感じ。

 歳はお姉ちゃんより下だと思う。

 恰好的に探索者かな?


「うんうん。なんか辛そうにしてたから、人ごみに酔っちゃったの?」


「ちょっと考え事をしていただけですよ。心配してくれてありがとうございます」


 お姉さんが微笑みながら答える。

 でもその表情は寂し気で、明らかに無理をして笑っていることがわかるものだった。


「悩み事か~。実はあたしたちも絶賛お悩み中なんだよねー。実はししょーが誕生月を迎えるから、その時に贈るプレゼントを考えているんだけど、なかなか良いものが思い浮かばなくてさー」


「誕生月に師匠へプレゼント、ですか? ……貴女たちは――、なるほど・・・・、そういえばもう六月ですね」


 お姉さんが何やら小さく呟いて、納得したような表情をしている。


「そうなんだよ~。ししょーの誕生月が六月だって知ったのが一昨日でさ、今急いでプレゼントを考えているの。もぉ、ししょーもなんでもっと早く言ってくれなかったかなー。そうすれば、もっとゆっくり考えられたのに」


「ふふっ、オ――師匠さん想いなのですね。こんな可愛らしいお弟子さんがいるなんて、羨ましいです」


「えへへ~、あたしたち、ししょ―のこと大好きだからね! だからししょーが喜ぶプレゼントを贈りたいんだ~」


「喜ぶものですか。そうですね……、お師匠さんは新しい情報というのに目が無いはずです。この時期は他国からも商人がやってきていますので、他国で出版されている本をプレゼントすれば、喜ばれると思いますよ」


(あ、そうだった! オルンさんは空き時間はいつも読書をしていた!)


 なんで、本をプレゼントするってことに思い至らなかったんだろう。

 確かに本が一番喜んでもらえそうな気がする!


 オルンさんは感謝祭でも忙しそうにしてる。

 フリーだったはずの初日も何かあったみたいで、あまり街を回れていなかったらしいとお姉ちゃんが言ってた。


 だったら、オルンさんが他国の商人から本を買っている可能性は、すごく低いと思う!


「本……? 確かにししょーは読書していることが多いかも! お姉さん、ありがとう!」


 キャロルも同じ考えのようだし、オルンさんへのプレゼントは他国の本で決定かな。

 本は値が張るけど、一人一冊くらいは買えるはず!


「どういたしまして」


「でもどうして、ししょーが本をよく読んでいることを知っていたの?」


「ふふっ、精霊が教えてくれたんですよ」


 セイレイ? 人の名前じゃないよね? どういう意味だろう。


「んー?」


 キャロルもわかっていないようで、首をかしげている。


「もし気にしなるようでしたら、お師匠さんに聞いてみてください。私よりもわかりやすく教えてもらえると思いますよ」


「うん、わかった! ししょ―に聞いてみる。お姉さんホントにありがとね!」


「こちらこそ元気な貴女とお話ができて、少し元気がもらえた気がします。ありがとうございます」


「お姉さんが元気になったなら良かった! それじゃあバイバイ!」


「はい。さようなら」


 キャロルが笑顔でお姉さんに大きく手を振りながらその場を離れる。

 お姉さんもキャロルと話す前より多少顔色が良くなっているように見える。


「セイレイっていうのが何なのかはわからないけど、とりあえずお姉さんが少しは元気になったみたいで、よかったよかった! それにししょーのプレゼントも決まったしね!」


「キャロルは優しいね」


「んー? そんなことないよ。あたしがしたくてやってるんだから。別に人のためにやってないもーん!」


 本当にそう思っているのか、照れ隠しで言っているのか判断付かないけど、やっぱりキャロルのこの気配りは美徳だね。

 多分私一人だったら、お姉さんに声を掛けるなんてこと無かったと思う。

 こういうところは見習っていきたいな。


「それじゃあ、本を探しに行こ。時間が経つと他の人に買われるかもしれないから」


「それは大変だ! ソフィー、急いで行こ!」


 それからログとも合流し、他国で出版されている本を吟味してから一人一冊ずつ本を購入した。

 オルンさんに喜んでもらえるといいな。

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