27.オルン VS. 黒竜③ 空中戦
黒竜に近づくと、最大数の十個に増えたモヤが、様々な形で攻撃を仕掛けてくる。
どうにかモヤの攻撃を掻い潜りながら、近づけば剣で、距離を取られれば先ほど設置した術式の一部に魔力を流し魔術を発動させて、攻撃の手を緩めない。
戦場が空中となったことで、【
【
また、発動タイミングもあらかじめ決まっているため、空中にいる黒竜の機動力が相手では当てることがかなり難しい。
だったら――。
「【
二段階増幅した魔術は簡単に躱されたが、【
【
だが、【
その後【魔力収束】による足場を消しさると、体が重力に従って落下する。
ある程度黒竜と距離ができたところで、再び足場を作ってそこに着地する。
それから左手を黒竜のいる場所に伸ばす。
「【
天井一面を埋め尽くすように、大量の【
頭に痛みが走る。
魔術の使いすぎだ。
だが、今はそんなものは気にしてられない!
ここが閉じられた空間である以上、黒竜に逃げ場は無い。
【
ただし初級魔術のためダメージは無い。――【
【
動きが鈍くなったところで、魔術を発動した直後から刀身に収束させている漆黒のオーラを纏わせながら黒竜に肉薄する。
(今の俺なら、耐えられる!)
可能な限り近づいてから、黒竜の腹部に漆黒の斬撃を放つ。
今度は防がれることなく、【
黒竜に近づきすぎていた俺にも天閃の余波が襲いかかり吹き飛ばされる。
空中でバランスを取りながら、どうにか【魔力収束】の足場に無事着地できた。
すぐに視線を黒竜に向けると、腹が
流石に翼や尻尾のように簡単に消し飛んではくれないようだが、今の一撃は大きい。
◇ ◇ ◇
「これが、オルンの本当の実力なのか? ……では、これまで私たちに見せていたものは、その一端にすぎないというのか?」
私の視界には、《夜天の銀兎》の第一部隊が全員がかりでも倒せなかった黒竜を相手に、互角以上の戦いを繰り広げているオルンの姿が映っている。
その光景は畏怖を覚えるものだ。
あの身体能力、並列構築で発動している魔術の数、漆黒の斬撃、今起こっていること全てが私の常識では考えられないものだらけなのだから。
私ですらそうなのだ。他の引率者は勿論、新人たちは今の光景を見て何を思うのだろうか。
私がオルンをこの教導探索に誘ったのは英断だった。
オルンがいなければ、私たちは既に全員死んでいただろう。
だが、それと同時に、この光景を新人たちに見せてはいけないとも思う。
この光景は私たちとオルンとの格の違いを、まざまざと見せつけてくるのだ。
ここにいる新人たちの何人が探索者を辞めることになるのだろうか。
そんな私たち《夜天の銀兎》の探索者たちの努力をあざ笑うかのように、オルンが黒竜を圧倒している。
「私の支援魔術は要らない、か」
わかっていた。
オルンは私と見ている世界が違うと。
それでも先月見た彼の姿を目標にこの一カ月鍛錬してきた。
それなのに、今、更なる差を見せつけられた。
私の支援魔術なんか要らないほどに。
私はいずれ彼と肩を並べられる探索者になりたいと思っていた。
でも、そんな日は来るのだろうか?
実家を家出同然で出てきた私には、探索者として大成するしか道が無いというのに。
私の目標は遠すぎる。
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