第7話:初馬車
「さて、どうするか」
そう独りごちてこれからの自分の身の振り方を思案した。とりあえずさっさと村人には退場して貰うか。
「とりあえず人攫いから女達を取り返したけど、人攫い達には逃げられたって事で村に帰れ」
村人グループ全員にそう伝える。当然女達にも。
「お前等の村はここから歩いて一日も掛からないんだろう?悪いけど馬車は俺が乗ってみたいから歩いて帰ってくれ」
これだけの人数が居るんだ。帰りに襲われる事もないだろう。人間にも魔物にも。
あ、魔物はいるみたいだぜ!
異世界やん!
村人達は女達を荷台から降ろし無言でその場を去って行く。
「あ、そうだ、俺の顔は皆忘れてね」
村人達にニッと笑い設定を追加する。
後々、彼奴らの村に立寄るかも知れないし、何処かで偶然村人の誰かに鉢合わせするかも知れない。その時に要らぬトラブルは避けたいしね。
村人達の背が遠くに見える程度までの距離が開いたのを確認しナッズ達に再び向き直り命令を告げる。
「俺を姫様の所へ連れて行け」
そう命令し俺は幌の中に入る。
ナッズ達は帰り支度を始め、15分程経った頃だろうかリーダーが声を掛けて来た。
「
とりあえずナッズ含め全ての
ナッズを護衛としていたが、今は全員で俺の親父(どこぞの街の有力者)の依頼遂行中って設定だ。
なので俺が依頼主みたいなものだ。でもさん付けとかすんなやーとフレンドリーな依頼人って事にしている。
「普通に行けば二日程で着くし、水の蓄えはあるから途中、調達等で時間を取られる事は無いと思う」
水は馬車の外側に取り付けられた樽の中にでも入っているのだろうか。
幌の中には食料が積まれている訳では無いのでこちらも樽の中に入っていたりするんだろうか。
ちなみに俺の名前は全員にデータ開示している。
ただ俺の能力に関してやその他諸々の個人情報等は一切開示していない。
開示したのは名前と年齢だけだ。
「アイテムボックスとか無いのかこの世界?」
「アイテムボックス??備蓄とかを入れておく箱の事か?」
「いや、いい…サッサと行こうか」
「…分かった」
えー、アイテムボックスとか収納系のアイテム無いのかよ
怠いなぁ
リーダーはそう言うと御者台に居るのであろう仲間に声を掛け、更に周りの者にも声を掛けて出発を促した。
ガタッと荷台が強めに鳴ると馬車が動き出し姫様傭兵団達もゾロゾロと歩き始めた。
まあ此奴らはもう俺様傭兵団みたいなものなんだけどね!
「………」
改めて幌の中を観察してみる。
人を運ぶ為の馬車ではないのだろう。人が座れる椅子の様な物は無く食料等も積んでいない為殺風景で特記すべき点は特に見当たらない。
ただ馬一頭で牽くにはちょっと荷台が大き過ぎる様な気がする。でも黒●号だから大丈夫か。
ちなみに●王号は村人達の村で飼われている馬だった。村の共有財産と言うかなんと言うか村の仕事を手伝わされる為に購入されたみたいで畑仕事から荷物や人運びに色々一人(匹)何役だってくらい働かされてる様だ。正しく馬車馬の如く…
ただどうもこの世界でのと言うかこの地域、国?での馬と言うのは黒●号みたいのがゴロゴロ居るらしい。
品種改良が盛んなのかね?
そんなわけで幌の中は大人の男が立ち上がっても問題ないくらい天井が高く、横幅も成人男性三人が並べるくらいには広いだろうか。
「………」
ガタガタガタッ
ガタッガタッガタッ
ガタッ…ガンッッ…ガタガタ
近代の自動車の様なサスペンションやスタビライザーなんて物は当然ながら付いていない馬車は、小さな小石を車輪が踏み付けただけでガタガタとけっこうな音を立てて揺れる。
小石よりも少しばかり大きい石に乗り上げようものなら壊れるんじゃないかと思う程の衝撃と音が襲って来た。
「こんなの、のんびりと昼寝しながらなんて絶対に無理だ…」
クッション何て物も置かれていない幌の中で、荷台の床に直接座っていたがそれだけでも結構キツい。
「何か布みたいな物を敷き詰めて
如何に馬車旅を快適にするか。この課題はかなり優先度高いのではなかろうか。
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