第三章 愛憎 7

 水尾は一時間ほども写真とにらめっこをしていた。色々考えを巡らせてみたが、何一つ思い浮かばなかった。諦めて写真を机に掘り投げた時、部屋の扉が開いた。


「水尾さん、京都府警の多田さんに例のデーター送っておきましたよ。どうしたんですか、難しい顔して。あれ、その写真少し見せてもらっていいですか」


 水尾に報告にきた鑑識の田中は、水尾が机に掘り投げた写真を手に取った。


「水尾さん、多分これCASナンバーですよ。恐らく、劇物じゃなかったかな?確かこれなんか「アセチレンジカルボン酸アミド」ですよ」


「アセチレン……何だって?」


「アセチレンジカルボン酸アミドです」


「ほんまか……。でかしたぞ」


 他の数字も調べようとスマホを取り出したその時、そのスマホが着信を知らせた。 

  

 その表示を見て水尾はぎょっとした。


「田中?なんや?」


 そう言って慌てて通話ボタンを押した。


「おう、水尾か?久しぶり。突然で悪いんだがそちらの事件の被害者の里田ひとみについて聞きたいんだが」


「何でこっちの事件の被害者のことなんて聞きたいんや?なにたくらんどる」


「俺だって、好きでお前に掛けてんじゃねーよ。どうせお前が仕切ってるだろうから、大阪府警そっちに聞くより早いだろう?」


「で、何でや。要件を手短に話せ」


「こっちで二件の不審死があってな。そのうちの一人の交際相手と思われるのがそっちの被害者の里田ひとみだってわけだ。里田に話しを聞こうとしたら死んでるって報告受けてな。その捜査を大阪府警そっちがやってるんだろう?」


「不審死?もしかして死因不明とか言うんじゃないやろな」


「何でそんなこと知ってんだ?」


「今からそっちにデータ送るから急いで調べろ。至急やぞ」そう言って電話を切った。


「やばそうやぞこれは……」

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